五幕・九月の十九日 そのに
結局先の仕事以後、かばねはアジトから出ることが無いし、キングは言わずもがな。
ラグは最近診療所の方に居るし、レオは仕事をしてるけどジャックはしばらく姿が見えない。
多分個人の仕事でも受けて、どこかの国に飛んだんだろう。
ジャックは無口で、そういう話をしてくれないから困る。
後でジャックの足跡とか情報を消去するのも楽じゃないんだから。
「……でさ。結局何しに来たのかばね。」
僕は、僕がパソコンを操作する横でいまだに居座っているかばねに尋ねる。
気まぐれで行動の読めないかばねだけど、ここまでしつこく居座るのは大体何か言いたいことがあるときだ。
いつも無駄に空気を呼んで、僕がこうして尋ねるまで要件を言わないから困る。
自分のタイミングで聞かせてくれるのはありがたいが、大事な用事とかも黙っているからいろいろ大変だ。
僕が促すと、かばねは待ってましたとばかりに言う。
「うん、あのね?
侵入者捕まえたよ。」
「……はぁっ!?」
「でさ、どーしよーかなーって聞きに来たの。」
「ちょっと待って!今それどうしてるの!?」
僕は慌てて問いただす。
~~~全くかばねはっ!
侵入者なんて大事だろ!!
しかしかばねはぽやんとしたまま答える。
「んー?普通に部屋の椅子に縛っといたよ?ラグがさっき帰って来たから、遊んでるころじゃない?」
「……あ~~……。」
…一転、侵入者への憐憫が沸き上がる。
ラグ……帰ってきてたのか……。
それはもう喜々として向かったんだろう。
拷問部屋に。
貴重な、薬の人体実験材料がやってきたというんだから。
「見に行っとく?」
「……ごめん、勘弁して。」
ラグの実験風景は精神が削られる…。
っていうか、わざわざ拷問風景を見たいとは思わないだろ普通…。
あぁ…かばねに『普通』は通じないんだった……。
とか半ば呆れながら考えていると、
「おや、その心配はありませんよ。」
…そう、部屋の扉の方から声がした。
「ちょ…何で居るわけ!?ラグ!…って言うか心の声読んだ!?」
「貴方の考えていることは分かりやすいですからねぇ。」
ラグはそう言ってくすくす笑い、続ける。
「いえ、少々遊んだのですがね。思ったより強情な方でして。私では情報を聞き出す前に壊してしまいそうでしたから、かばねにお任せしようかと。」
「あぁ~~………もう…色々突っ込みたいところはあるんだけど…。」
…僕はもう諦めることにした。
かばねは
「りょーかーい!」
なんて軽く答えてソファーから飛び降り、僕の前を窮屈そうに通り抜けていく。
そしてラグに付いて扉を出ていく前に、ふとこちらを振り返ると言う。
「……プラたん、見に来る?」
「…絶対行かない。」




