一幕・九月の十四日 そのよん
「……なに?」
目の前の光景に思わず問う。
「あ、これ?ちょっと遊んでたんだ。」
「何が遊びだっ!半分以上本気でやってただろうがお前っ!!」
「~~いっ…たぁっ!痛い痛いっ!!いい加減折れる!折れるからやめてっ!!」
帰ってみると、レオンハルトがかばねに関節技を極めていた。
…かばねがレオに余計なことでもしたか。
かばねは本気で抵抗していない。
……一体何馬鹿なことをやっているんだ。
「…………。」
「あ、今ちょっと嗤ったでしょジャック。」
「………別に…。」
「いや、嗤ったよ!絶対嗤ったもんっ!!」
…何で分かる?
なぜか、かばねはこういうことに鋭い。
普段は鈍いのに。
「れおれおー…いい加減離してよぅ…。流石に痛いよ?」
「ジャックと喋る余裕あるくせに、よく言うな。」
「ちょっと腕かじるふりしただけじゃん。そんな半分も本気じゃないよ。」
「………折るか?」
「ごめんなさい。」
かばねが謝るとレオは技を解く。
「……茶番は終わりか?通り道、邪魔。」
ここは廊下だ。
俺の部屋が奥にある。
「あ、ごめんねジャック。そういやどこ行ってたの?」
「………。」
『どこ行ってたの?』
俺が解っていないと思ったのか、かばねは英語で言い直してきた。
『別に言われたことくらい理解してる。わざわざ言い直さなくていい。うざったい。ただの暇つぶし。』
「そっかぁ。もう聞き取りは結構できるんだね。喋る方も、もっと文章喋れるようになるといいね。」
なんて言ってかばねは笑っている。
…本当に呑気だな。
……あと、かなりズレてる。
このぽわぽわとしたのが年上なんて信じられない。
見た目はせいぜい小学生か、いっても中学生くらいにしか見えないのに…。
今、かばねは十七だ。
……五年前、出会った時から、容姿がほとんど変わっていない。
…本当にありえない。
かばねの周りだけ時間が止まっているんじゃないかと思う。
誰より食べているはずなのにどうしてこうも成長しない?
「………謎、だ。」
俺は自分の部屋へ向かいながらつぶやいた。




