一幕・九月の十四日
……苦しい…。
…なんだか体が重い…。
…………一体何が?
……と、寝苦しさに目を開けると、目の前に濃赤。
……濃赤…?
「……ぅわっ!?」
驚いて体を起こすと、僕の上に乗っかって、今にもくっつかんばかりに僕の顔をのぞき込んでいたかばねは、持ち前の反射神経で僕の頭を軽く避ける。
そして、
「プラたん起きたぁ?」
なんて言ってにしっと笑って見せる。
…そう言えば昨日は、結局僕まで飲まされて…。
僕は頭を抱えてため息をつきながら上に乗るかばねをどけて立ち上がる。
周りを見回しても他のメンバーの姿は無い。
「…かばね、他のメンバーは?」
二日酔いで痛む頭を押さえながらかばねに聞くと、
「んー…ぐーたんは部屋で寝なおすって。れおれおは上で運動してくるって言ってたし、ラグはプラたんがお願いするなら二日酔いの薬渡すって。伝えとくように言われたよ。ジャックは早くに起きてどっか行っちゃった。」
……あのザル共…。
どうやら、潰れて寝込んでいたのは僕だけらしい。
「…で、かばねは僕の上で何してたわけ…?」
若干怒気を込めてそう聞くと、かばねはきょとんとした顔で、
「だって、プラたんが寝てたから?」
そう答える。
「……ごめん、わからない。もう少しちゃんと説明して。」
「えーっと…プラたんが寝てたから、何かかける物を持ってこようか迷ってたんだけど、一応起きた時に誰もいないのはプラたんが寂しいかなっと思って、それにそろそろ十時だし、起こした方が良いのかなとも思ったけど、二日酔いで体調が悪いなら無理に起こすのもかわいそうかなって。」
…すごいな。
ここまで聞いても全然わけが分からない。
なので、僕はさらに促す。
「……で?」
「だから、僕が一緒に寝てあげれば寒くないし、起きた時も大丈夫だし、僕が乗って起きたならそれで良いし、起きなかったならそれだけ疲れてるんだろうし寝かせといてあげようかなって。」
「筋が通ってるようで、実は全くめちゃくちゃだ!!」
僕は叫ぶ。
頭の痛みなど忘れて。
そう、かばねはこういう奴だ。
分かってるけれど…。
「流石に恥じらいを持ちなさいっ!女子としてっ!!」
僕にビシッと指を突き付けられて、目の前の全く少女らしくない少女…かばねが不機嫌そうな顔をする。
紅一点で周りに見本もいないからこんな風になるのは仕方ないのかもしれないけど、この天然は度が過ぎる‼
「もう…プラたんってばホントお母さんみたいだよねー…。いーじゃん別に…。」
そう言って頬を膨らませて拗ねる様子は(見た目だけなら)不覚にも可愛い。
しかし、中身は残念というのが彼女である。
動きやすいからとズボンを好み、鬱陶しいからと髪も伸ばさない。
唯一、僕が教えた三つ編みだけは気に入ったのか、いつも左の前の方だけ一房編んでいる。
けど、一人称も何度言っても直らないし、言葉遣いも…!!
「いつもいっつも……ちゃんとしろって言ってるだろーーーっ!!」
こんなんだから僕の苦労はいつも絶えない……。




