二幕・九月の十日 そのじゅうに
そして……ヒュンッと風を切るような音と……。
キィン…!!
という金属音がした。
「………えっ…!?」
思いがけない音と、来ると思っていたような痛みが来ないことに驚いて目を開けた僕が見たのは…。
「……っ…!!」
いつの間にか僕のすぐ後ろにいた日野さんが腕を押さえながら後ずさる姿…。
「……。」
その日野さんを見据えるかばね。
…そして、地面に転がる鋭いナイフ。
「………あーあ…防がれちゃった。残念ね。」
日野さんの口からそんな言葉が飛び出して…。
「こんな見え見えの誘いで来てくれるとは思ってなかったけど…。あなた、小さいのにそれなりなのね。本当に何者なのかしら?」
そう言って日野さんは笑う。
さっきまでとは全然違う、人を馬鹿にするような笑顔で。
かばねは答えない。
僕は呆然と二人から離れるように一歩下がろうとして…足に力が入らずペタンと尻もちをつく。
口は金魚のようにぱくぱくと動くのに、言葉は相変わらず出てこない。
やがて二人はどちらともなく口を開いて…
「やっぱりお姉さんが切り裂き魔だったんだね。」
「やっぱりあなたが昨日私を付けてた人ね。」
二人同時にそう言い放った。
「………っ!?」
切り裂き魔…?
日野さんが……?
……かばねじゃなく…?
付けてた…?
昨日?
一体どういう…。
混乱する僕の方には向かず、かばねが言う。
「お兄さん逃げてよ。このお姉さんは僕がなんとかするからさ。」
逃げる…。
日野さんから…?
切り裂きジャックから…?
僕が動けずにいると、日野さんが…否、切り裂きジャックが楽しそうに喋りだす。
「あら、ここまで来たのに何も教えずに厄介払い?折角なんだから全部教えてあげればいいのに。」
「…そういうのって『まけふらぐ』だよ、お姉さん。」
「んー…?あぁ、負けフラグって言いたいのかしら?だーいじょうぶよ、そんなの‼」
切り裂きジャックはそういってカラカラと笑う。
そして…
「どうして私がこんなところにあなた達を誘いだしたと思うの?
ここならどれだけ声を上げても無駄。
それからあなたが立ち塞がっても、あなたを殺してから逃げる彼に追いついて殺すことくらい出来るって自信があるからよ?
ここは私が綿密に調べた狩場だもの。
貴方が何者なのかはこの際、何でも…どうだっていいわ。」
そう続けて言いきると、とても…ひどく歪んだ笑顔を見せた。
ぞくり、と僕の肌が粟立った。
怖い…。
立ち上がれない。
足が言うことを聞かない。
目の前にいる、コノ人は何だ…?
僕は……。




