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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
閑話・十月の虚飾の章
122/330

二幕・十月の三十日




嫌な仕事。


ここまでチョロいと本当につまらない。




「所詮は学生(こども)の集まり…か。」




その場にあった書類やデータ。


仲間の情報や、顧客のリスト。


そして、扱っていた薬を盗っていく。





「…ま、このくらいで十分か。」



そう呟く。



…うちに喧嘩売ろうなんて、生意気な奴らに、打撃は与えられただろう。




「…これでもまだ向かってくるなら、あとは知ったこっちゃないし…。」




そろそろ帰ろう。


見つかると面倒だし…。




なんて思った瞬間。










私の忍び込んでいた部屋の扉が開く。




「…なっ…!?」



ヤバ…っ!


見つかった!!



扉を開けたのは一人の少年。


こちらを見て少し驚いたような顔をしている




まずい……けど、一人ならいけるか…!?




懐からナイフを取り出して少年に向かって振りぬく。



…が、ナイフで防がれた。




なかなかいい反応。





けど…



脇が甘い!








私はそのままナイフを手放した。



合わせたナイフの手ごたえが抜け、体勢を崩した少年の横をするりと抜け、扉の外に出る。






残念。



私の専門は戦闘じゃない。



まともにやり合ったりなんかしない。



私の目的は…。











ヒュッと風切り音。



急いで飛び退くと首筋にかすかな痛みと眼前に迫るナイフ。




…嘘っ!?


追い打ち!?



しかも躊躇いなく首の後ろ…避けなければ急所になる場所を狙ってナイフは突き出されていた。



咄嗟に体制を変え、もう一本ナイフを取り出し構えて、少年と向かい合う。



目を離すと危ないと感じたから。



少年は此方が戦闘態勢をとった事に多少警戒したのか、油断なくこちらを見ながら一旦、動きを止めた。




そこで私は少年の姿を観察して…。







「……あ…れ…?」





金の髪に青い瞳。


隙のないナイフ使い。



そして……少年は、その身に大量の返り血を浴びていた。










「…ま…さか…。」




少年から目を離さない程度に辺りに視線を巡らせると、赤。


この組織に属していたのであろう男たちの死体、死体、死体。



それを成したのであろう、おそらくこの組織に属していない目の前の少年は…。





「…切り裂きジャックジャック・ザ・リッパー……っ!?」



思わず漏れた私の声に、少年は目を眇める。






…不味い…不味い不味い……っ!



目の前の少年が本当に切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーなら完璧に分が悪い。



私の得意分野は盗みと逃走であって、戦闘や暗殺じゃない。


そりゃ多少の心得はあるが、熟練者にはとても敵わない。



まして、おそらく相手は、この組織にいる人間の殲滅を目的としているのであろう生粋の殺人鬼。




あぁ…なんて間の悪い時に侵入したんだ私は…っ!!



切り裂きジャックジャック・ザ・リッパーがこの組織に何かしらの確執があるなんて聞いたことはなかったし、こんな下の下もいいとこの組織をわざわざ壊滅させる理由なんて無いはずなのに…っ!!








………よし、逃げるしかない。


逃げ足になら自信がある。



この少年から目を離すのは怖いけど……。




私は、五月蠅く跳ねる心臓を少しでも抑えるように深呼吸をして…。







踵を返して一気に走った。





刹那、放たれた殺気に回避行動をとった私の頬をナイフが掠めて飛んでいく。



「…ひぃっ!?」



思わず声を上げた。



本気で怖い。



それでも、足を止めるわけにはいかない。


止まったら多分死ぬ。



後ろから少年の舌打ちが聞こえ、走る靴音が追ってくる。



いやぁぁっ!


ホントやめてっ!?


こっち来ないでぇっ!?



チラリと様子を窺えば、追う少年の顔は深い苛立ちと殺気を滲ませ、鬼面のよう。



怖ぁぁぁぁっ!?



私は涙目になって、



「あぁぁぁぁっ!!ごめんなさいごめんなさいっ!何か分からないけどごめんなさいっ!!仕事の邪魔をするつもりは無かったんです獲物の横取りをするつもりもないんですデータと新薬を盗みに侵入しただけなんですぅぅぅっ!!」




なんて叫びながら、途中見かけた組織の生き残り連中も無視して走り続けた。














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