一幕・とある虚飾の独白 そのに
アイツが死んだ。
最近手を出し始めた薬の運び中に殺された。
アイツはとても直視できないような殺し方をされていたらしく、犯人は完全に裏の人間だと囁かれていた。
そのことにうちの内部は騒然としたし、ビビる奴も続出した。
俺もその一人で。
まさか殺されるなんて。
下っ端だったから、まだどこか遊びのつもりがあった俺は、こんなことになるなんて考えもしていなかった。
けど、今さら後戻りも出来なくて。
さらには、今まで一番下だったアイツがいなくなったせいで、上手くいかない仕事と見つからない犯人への苛立ちが、俺への暴力になって襲い掛かってきた。
組織内に回り始めた薬の影響もあり、前よりずっと酷く、ずっと頻繁に。
思い切り蹴られた腹が痛い。
ゲーム感覚で、ナイフで切られた腕が痛い。
口答えなんて生意気だと、煙草を押し付けられた火傷が痛い。
お前も共犯だと、無理やり薬に付き合わされて頭が…注射の痕が…痛い。
俺を傷つけ続けるアイツら。
暴力と罵声。
どうして俺がこんな目に。
アイツを殺した奴が許せない。
アイツがいれば俺はまだマシでいられたのに…なんて。
そんな最低な自分。
抵抗できない自分。
…嘘つきな自分。
何もかも、大嫌いだ。
どうせなら俺を殺してくれればよかったのに。
そんな中漏れ聞いた犯人の情報。
『切り裂きジャック』
それを聞いた途端、脳裏にジャックの顔が浮かんだ。
勿論、有り得ないと思った。
ジャックなんてよくある名前だし、あんな馬鹿正直なジャックが殺し屋なんて思えなかった。
なのに、どうしても気になって…こっそりと聞き耳を立ててしまったんだ。
聞かなければよかったのに。
今代の切り裂きジャックは俺達とそう歳も変わらない少年らしい、なんて。
金髪碧眼だって情報が一番多い、だなんて。
元々英国人だけど、今は日本にいるんじゃないかと目されている、なんて。
聞けば聞くほどにジャックの姿がはっきり頭に出てきて。
あぁ…そういえばジャックの姓を聞いたことが無い、とか。
家族の話さえ聞いたことが無い…とか。
初めて会った時、追われていたのに余裕そうだった……とか。
小さなことがどんどん積み重なって。
否定材料が欲しかった。
それと同時に思いもした。
もし、ジャックが本当に切り裂きジャックなら…。
この状況を作り出した犯人なら。
俺は、ジャックを許せない。
それなら…。
……友達と思われてる俺なら、ジャックを簡単に殺せるんじゃないか?
そうすれば…。
俺が裏でも有名な切り裂きジャックを殺せれば。
アイツを殺した切り裂きジャックを殺せれば。
きっと、今のこの状況も……。
そんな自分勝手で卑怯な考えで俺は…お前に会いに来たんだよ。




