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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
閑話・十月の虚飾の章
120/330

一幕・とある虚飾の独白 そのに



アイツが死んだ。



最近手を出し始めた薬の運び中に殺された。



アイツはとても直視できないような殺し方をされていたらしく、犯人は完全に裏の人間だと囁かれていた。



そのことにうちの内部は騒然としたし、ビビる奴も続出した。



俺もその一人で。




まさか殺されるなんて。


下っ端だったから、まだどこか遊びのつもりがあった俺は、こんなことになるなんて考えもしていなかった。



けど、今さら後戻りも出来なくて。


さらには、今まで一番下だったアイツがいなくなったせいで、上手くいかない仕事と見つからない犯人への苛立ちが、俺への暴力になって襲い掛かってきた。



組織内に回り始めた薬の影響もあり、前よりずっと酷く、ずっと頻繁に。




思い切り蹴られた腹が痛い。



ゲーム感覚で、ナイフで切られた腕が痛い。



口答えなんて生意気だと、煙草を押し付けられた火傷が痛い。



お前も共犯だと、無理やり薬に付き合わされて頭が…注射の痕が…痛い。




俺を傷つけ続けるアイツら。


暴力と罵声。




どうして俺がこんな目に。




アイツを殺した奴が許せない。


アイツがいれば俺はまだマシでいられたのに…なんて。


そんな最低な自分。



抵抗できない自分。



…嘘つきな自分。




何もかも、大嫌いだ。








どうせなら俺を殺してくれればよかったのに。











そんな中漏れ聞いた犯人の情報。




『切り裂きジャック』



それを聞いた途端、脳裏にジャックの顔が浮かんだ。



勿論、有り得ないと思った。


ジャックなんてよくある名前だし、あんな馬鹿正直なジャックが殺し屋なんて思えなかった。


なのに、どうしても気になって…こっそりと聞き耳を立ててしまったんだ。




聞かなければよかったのに。




今代の切り裂きジャックは俺達とそう歳も変わらない少年らしい、なんて。



金髪碧眼だって情報が一番多い、だなんて。



元々英国人だけど、今は日本にいるんじゃないかと目されている、なんて。



聞けば聞くほどにジャックの姿がはっきり頭に出てきて。



あぁ…そういえばジャックの姓を聞いたことが無い、とか。



家族の話さえ聞いたことが無い…とか。



初めて会った時、追われていたのに余裕そうだった……とか。



小さなことがどんどん積み重なって。






否定材料が欲しかった。





それと同時に思いもした。





もし、ジャックが本当に切り裂きジャックなら…。





この状況を作り出した犯人なら。











俺は、ジャックを許せない。












それなら…。













……友達と思われてる俺なら、ジャックを簡単に殺せるんじゃないか?









そうすれば…。










俺が裏でも有名な切り裂きジャックを殺せれば。








アイツを殺した切り裂きジャックを殺せれば。








きっと、今のこの状況も……。










そんな自分勝手で卑怯な考えで俺は…お前に会いに来たんだよ。








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