二八幕・十月の二十九日
「…ほらよ。ご注文のナイフだ。デザインは前のに劣るが、また嬢ちゃんに無茶に扱われてもいいように前より丈夫さを重視して作ったぞ。」
半分冗談のように言って、注文していたナイフが差し出される。
「次はない。」
「…おぉ……。…まぁ……一応仲良くな?」
「……次があれば本当に殺す。」
そう答えて、受け取ったナイフを見る。
吸い付くようにぴったり合う握り、折り畳み式のそれを開くと洗練された刃。
やっぱり特注は良い。
今まで主に使っていたナイフを、入れていたポケットから出して、受け取ったナイフをそこに収める。
今までのナイフより刃渡りの長いそれは少し収まりが悪いが、まぁすぐに慣れるだろう。
出したナイフは予備として別のポケットに。
「持ち歩きには気をつけろよ、坊。」
「…分かってる。」
答えて頷く。
今注意されたのは、怪我に、ではなく警察に、という事なのは重々承知。
捕まるようなヘマはしないけど。
そのまま、工房を後にする。
朝にアジトを出たけど、今はもう日が昇って青空が見えている。
気分もいい。
帰りにあの店に寄ってミルクレープでも買おうか。
ウルスブランにマスター特製のデザートを食べに行ってもいい。
考えながら歩いて、だんだん戻ってきた街中の喧騒の中。
「……ジャック…っ!」
やけにはっきりと聞こえたその聞き覚えのある声に、俺は足を止め声の方へ振り向いた。
自分の顔に浮かんでいるであろう笑顔は、もう抑えられそうになかった。




