二七幕・十月の二十八日
アジトの三階部分。
広く寂しいスペースに、かばねとジャックは向かい合っていた。
重苦しい沈黙を破ったのはかばね。
ゆったりと、そして冷たく。
向かい合う相手を…ジャックを見据え、嘲るような笑みを浮かべ言い放つ。
「君は一体、何のために僕と戦う?使命?正義?」
対するジャックはぎりっと歯を食いしばり、かばねを睨みつけると
「…五月蠅い。」
そう、呟きのような声で答える。
それが聞こえていたのか聞こえなかったのか、かばねはジャックを煽るように続けた。
「……それとも、あの可愛らしいオトモダチのために?」
「~五月蠅いっ!!」
ジャックが叫び黙れとばかりに勢いよく腕を振ると、ピシッと音がしてかばねが何故か着けていた眼鏡にひびが入る。
かばねはそれに動揺することなく、ふっと笑うとひび割れた眼鏡をゆっくりと外す。
ジャックは続けて咆哮する。
「俺は…っ!俺は…誰かのためになんて戦わない…!!…俺はっ…悪だ…アイツらに…世界に…復讐を…!!」
かばねはジャックの言葉を聞き、ふわりと先ほどとは打って変わって柔らかな笑みを浮かべると、すうっとジャックに向けて手を差し出し呼びかける。
「なら、僕達の道は同じだろう?手を取り合おう。一緒に世界を壊してしまおう?…さぁ。」
しかし、ジャックは一瞬の沈黙の後……笑う。
相手を馬鹿にするように、自信に満ちた傲慢な笑みを浮かべる。
そして言う。
「ふざけるな。俺は誰かと共に戦うこともしない。この力があれば…お前の力なんていらない…っ!」
そうして再び振るった腕。
かばねはその場から飛び退く。
瞬間、かばねのいた場所に無数の刃物が降り注ぐ。
「証明してやるよ。俺がお前を倒して。」
闘志に満ちた瞳で言い放つジャックを見て、かばねは耐え切れなくなったかのように吹き出し大声で笑う。
「はっ…はっはははははっ!!面白い…面白いよ!!さぁ…かかってこい。俺を倒せたら、お前は、お前が大っ嫌いな『ヒーロー』だっ!!」
そう叫ぶかばねに、ジャックは跳びかかり、合わせた武器がたてる金属音と共に吐き出すように叫び返す。
「俺は…『ヒーロー』じゃないっ!!」
「………で、あれ何なんだよ。」
目の前で戦いはじめるかばねとジャックを指さして、俺は隣に居るプラチナに問いかけた。
ジャックが手に隠した小さな小石で、かばねがかけていた眼鏡にひびを入れたり、事前にかばねの真上に仕掛けてあった刃物のトラップを、仕掛けの糸を切って落したり……。
プラチナは、そんな二人を呆れたように見ながら答える。
「昨日見た映画の、ヒーローとボスの最終決戦。」
「……ガキかよ。」
どうやらその映画のシーンを、あの二人はかなり本気で再現しているらしい。
……馬鹿だ…。
「……で、どんな筋なんだよ、その映画。」
「えーっと…虐げられて育った不遇な少年が、超能力を手に入れて世界に復讐しようとするんだ。ヒロインの影響と、悪役…今かばねが演じてる奴ね…の登場で、思い悩んで揺れながら、結局悪役を倒して世界を救う、偽悪的なヒーローの話。」
「…ヒーロー物かよ…。ガキか。」
「……うん、ティーンに人気あるらしい。」
「まあ、主人公が世界を呪う序盤とか、悪行を犯す主人公を追う闘うヒロインとか結構…。」
「……いや、詳しい見どころ説明とか要らねぇから。」




