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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
一話・九月の序章
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二幕・九月の十日 そのなな

 「…え?」


 「ほんとにお兄さんの言うように事件があったとするなら、だけどね。」



 目を丸くする僕に、かばねはそう付け加えて悪戯っぽく笑った。


 僕がどういうことなのか、と訊ねる前に、かばねは顔の前にピッと人差し指を立てて言った。



 「一つは、さっきの、警察に行くまでにどこかにいなくなったこと。」



 そしてもう一本、中指も立てて二の指にしてから続ける。



 「それから二つ目。お兄さんが見たって人影を、この辺りで騒がれてる切り裂き魔だって、断定してたってこと。…おかしいよね?暗がりの中、ちょっと見ただけで、勘違いとも、ただの傷害とも考えられるのに切り裂き魔だって断言したんだよね?」



 そう言われて僕はあの時の彼女の言葉を思い出す。



 《アイツの…切り裂きジャックの姿を、唯一見た目撃者なんだから!!》



 「……あっ!!」



 確かに、そうだ。


 でも……。



 「僕はあの人と一緒に切り裂きジャックを見て…。」



 そう僕が言うと、かばねは



 「そこの矛盾だよね。お兄さんの話の辻褄が合わないところはさ。妄想とかなんとか、言われても仕方ないよ?」




 と言ってなぜかちょっと楽しそうに笑う。

 


 「じゃあ…昨日のことがその…もし、僕の見た夢とか幻覚とかなら……。」


 「そうだったら、お兄さんが直前にした話に影響されて妄想を現実に夢見るイタイ人ってだけの話だね。」

 



 うわぁ……。


 結構キツいこと言われた…。

 しかも年下に……。



 「まあともかく、その人を探して話を聞けば昨日お兄さんが見たことが本当かも確かめられるし、お兄さんの見たって言うそのお姉さんを見つけよう。いなければそれまでだけど。」



 かばねはそう言って僕の横を通りぬけ、さっさと歩いていく。


 少し落ち込んでいた僕も慌てて後を追う。


 けれどこんな街中で、あのほんの少しの間だけの記憶を頼りに一人の人を見つけるなんて…。




 無理じゃないか…?




 ……っていうか、実在するのかどうかも……。



 そう考えるよりも早く、路地裏から出た繁華街の人波の中に




 「あ~~~っ!?」




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