二幕・九月の十日 そのろく
少したってから僕はかばねを連れて、昨日の路地裏に来ていた。
真は用事がある、なんて言ってさっさと帰ってしまった。
…薄情者め…っ!
道中、僕はずっとかばねに昨日のことを事細かに説明させられていた。
現場に着いたかばねは壁を触ったり地面にしゃがんでみたりと、なにやら動き回っている。
この子はいったい何者なんだろう?
あの捜査資料…こんな中学生くらいのただの子供に作れるものじゃないはずだ。
探偵?
警察関係者?
…秘密組織…?
それとも…もしかしたら…。
なんて思考に耽っていると、ふ…とかばねが立ち上がり…こちらを見た。
「…え?かばね…くん?どうかしたの?」
「……お兄さん…。その『くん』とかやめてくれないかな?かばねで良いよ。」
「あ…ごめん……えー…かばね…?」
僕がもう一度呼び方を訂正して声をかけると、かばねは数歩僕の方に歩み寄り
「お兄さんさぁ…ホントにその時相手の顔、見えなかった?ていうか、それほんとに殺人だった?」
そう聞いてくる。
…うっ…痛いところを…。
そうなんだ、僕があの時切り裂き魔の顔さえ見えてれば、まだあの日のことに現実味が持てた気がする。
それに、あれが劇の練習とか演技で、僕の早とちりとかいう可能性だってある。
でも…こんなことを言うってことは…。
「…やっぱりここで事件があった証拠は何もなかったってことなのかぁ……。」
僕はそう呟いて落胆する。
そんな僕にかばねは少しむぅっとして
「質問の答えになってないよ、お兄さん。」
と言うので、僕は慌てて顔は全然見えなかったのと、殺人かどうかも分からない、ときちんと答える。
かばねはふぅん…と軽く言うと、次は
「じゃあ、お兄さんを助けたって言う女の人に心当たり、ある?」
と、訊ねてきた。
僕は首を横に振る。
あの女の人に心当たりがあったら、今すぐ昨日のことが夢じゃないか確かめに行く。
かばねはさらに続ける。
「その女の人、いつの間にか居なかったんだよね?いつから居なかった?警察の人に事情を話してた時は?」
僕は慌てて記憶を掘り返す。
「…えーっと…?あ……居な…かった…?」
確か、居なかった。
警察に行った時、僕は一人で支離滅裂に話してた気がする。
すると、かばねはまた少し考え込んで、
「そっか…じゃあ、やっぱりその女の人はちょっとおかしいね。」
そう言った。




