二三幕・十月の二三日
「あ?」
「…ちっ…。」
「……ちょっと二人とも…僕の部屋で睨み合わないでよ。」
プラチナんとこに仕事貰いに来て鉢合わせ、思わず喧嘩腰になった俺達に、プラチナが呆れたように声をかけてきた。
俺のこの目つきと声は癖みたいなもんで、ジャックも基本態度悪ぃから俺らが不意に鉢合わせるとよくこうなる。
ここでどちらかの機嫌が悪いと突発的にバトルが起こることもある。
いや、どうにかしねぇと、と思わないこともねぇんだが…。
こういう態度はお互い反射的にやってっから無理なんだよなぁ。
…っと、そうだ。
仕事受けに来たんだったな。
俺は特に急ぐわけでもねぇし、ジャックに先を譲ることにする。
壁に寄りかかり視線で促すと、プラチナは心得たとばかりにジャックに話しかける。
「仕事だよね?ジャック。」
ジャックは軽く頷いて肯定する。
プラチナはカタカタとキーボードを操作しながら、続けてジャックに尋ねる。
「…条件は前ので良いの?」
…ん?
前の…って言ったってことは、以前の仕事にジャックが条件付けたのか?
珍しいな、コイツが。
らしくない。
ジャックはプラチナの言葉にもう一度頷き、不意にあ、と声を上げ言った。
「前のみたいな仕事はもうごめんだから。こそこそするの性に合わない。お前も付いてきたし。」
「ちょっと!やっぱ僕嫌われてんの!?ねぇ!?」
あ、この傍若無人な感じはコイツらしいわ。
一瞬でもなんかあったのか、と心配した俺が馬鹿だったな。
プラチナはため息をついて何とか自分を鎮め、気を取り直すように咳払いを一つすると、パソコンに表示した依頼をジャックに説明する。
「…ターゲットは運び屋の一人。不良の発展形みたいな大体学生で構成されてる集団が、最近ちょっとやんちゃして裏に片足突っ込んでてね。麻薬の運びに手を出してるからって牽制…見せしめ、かな。なるべく派手に殺せって事らしいから、ジャックの……切り裂きジャックの技術、フルに活用していいよ。」
そのプラチナの最後の言葉を聞いたジャックの目が、一瞬確かに楽しそうに歪んだ。
あー…こりゃ決めたな。
プラチナは基本、証拠を残すなってスタンスだ。
俺らは殺し方に結構特徴があるし、あんま派手にやるなと釘を刺される。
それを、好きにしていいなんて言われたら尻尾振って喜ぶだろう。
特に、コイツは殺しを楽しむタイプだから余計に。
プラチナも大概アメと鞭の扱いが上手い。
ジャックは喜んでんの隠して、ポーカーフェイス装ってるつもりらしいが流石にバレバレだからな?
「…それでいい。じゃあ行くから。」
なんて言ってる声のトーンが若干高い。
依頼を受けたジャックは上機嫌にプラチナの部屋を出ていく。
…やっぱアイツもガキだなー…。
しかしさっきの依頼…。
「…そういや最近ヤク関係の仕事多くねぇか?」
確か最近俺が受けた仕事の大体がヤク関係。
ジャックとプラチナが出た仕事もそれ関係だったと聞いた。
俺がそう聞くと、プラチナはあぁ、と思い出したように言って答える。
「ちょっと大きなとこがここで本格的に動き始めててね。依頼が増えて感謝ってとこかなぁ。まぁ、あんまり薬関係が鬱陶しくなったら、ラグがちょっかいかけに行くかもね。」
…いや、待て。
若干物騒なことが聞こえた。
アイツが動くとか、ちょっとした惨事になるんじゃ…。
俺は、今動いてる大きなとことやらに、頼むからあんまりアイツを刺激すんなよと言いたくなった。




