二一幕・十月の二一日
かばねが帰ってきた。
それはいい。
いい加減プラチナがうざったかった。
が、これは何だ?
いつものように仕事をするプラチナ。
その横に座って不機嫌顔でパソコンを弄るかばね。
「……かばねは何やってる?」
思わず疑問を口に出すと、打って変わって上機嫌になっているプラチナが答える。
「僕の仕事の手伝いだよ。勝手に僕のパスワードロック解除したんだからこれくらい頑張ってもらわないと、ねぇ?かばね?」
「うにゃぁぁ……。」
かばねが今にも死にそうになっている。
昨日の夜は、プラチナが寝かせなかったんだろう。
帰ってきてから、夜通し説教の声が聞こえてきていた。
気にするだけ無駄だし、無視して寝たけど。
それに加えてプラチナの手伝いをしているんだから、こうなるのも必然だろう。
それに比べプラチナは溜め込んでいた苛立ちを吐き出せた上に、いつもより仕事量が減っているからか調子がよさそうだ。
かばねはうー…だか、あー…だか奇声を上げながらキーボードをカタカタと叩いている。
調子乗りでトラブルメーカーなこいつにはいい薬なのかもしれない。
いつものかばねのような破天荒さが、疲労と慣れない作業への集中で随分和らいでいる。
ずっとこうしていれば面倒を起こさないんじゃないか?
そう思ったところで、かばねがふといつもよりテンションの低い声で呟くように言う。
「…プラたんの指はキレーだよねー…。ちょっと齧っていい?」
「良いわけないでしょ!!?」
…訂正。
こいつをこのままにしておくと、ストレスで理性の緩くなったかばねに食われそうだ。
やはりある程度自由にさせておくべきなんだろう。
いつだったか、かばねに綺麗だと言われたこの目を、生きたままくり抜かれるのはごめんだし。




