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食屍鬼と愉快な殺人日記  作者: 莉子
二話・十月のジャックの章
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二十幕・十月の二十日




夜の町はなんとなくワクワクする。


表に少し裏が入り混じるような感じ。


最近ここの夜はずいぶん明るくなったけど、だからこそ余計に。








家出生活は結構楽しい。


アジトに居るとプラたんがガミガミ五月蠅いから。



「そこの君。」



でも、別にプラたんが嫌いってわけじゃない。


頑張り屋さんだし、いつもしっかりお仕事してくれてるもん。



「ちょっと待って、君!」



プラたん意地っ張りだからなぁ。



これはしばらくかかりそう…。




「君!待ちなさい!!」




ん?


もしかして僕が呼ばれてるの?



足を止めて振り返る。



…と、あ…やば、お巡りさんだ。



慌てて携帯を出して時間を見る。


夜の十一時十分。



「あちゃー…。」



結構時間経ってたみたい。


十分に補導されちゃう時間だ。


面倒なこと言われる前に先に謝っちゃおう。



「ごめんなさい、お巡りさん。もうこんな時間だったなんて気付かなかったんだ。」



殊勝げにそう言うと、お巡りさんは一瞬拍子抜けしたみたいにキョトンとして、やれやれと苦笑いする。



そして、



「気をつけるようにね。えーっと…お家はこの近くかな?」



と聞かれる。



あーっと…どうしようっかなぁ…。



泊まってるホテルは近いけど、近いって言ったら送るって言われそうだし…。


ああいう裏のホテルに泊まってるのとか怪しまれそうだし、ホテルに送ってもらうことはできない。




んーと…ここは…。



「すぐ近く、ってわけじゃないなぁ。」



って曖昧に答えておくとしよ。



僕の答えに、お巡りさんは少し眉を顰めた。


疑わせちゃったかなぁ。


どうやってこの場を逃げ切ろうと考えていると、お巡りさんが続けて



「…じゃあ、もう遅いから、保護者の人に連絡して、迎えに来てもらって、ね?」



と、言い聞かせるように言われる。



うーん…でたぁ…このパターン…。


困ったなぁ…こういう時いつもならプラたんに迎えに来てもらうんだけど…。


ぐーたん…は、無理。


まず絶対動いてくれない。


ラグ…はうさん臭くて怪しまれそう。


れおれおは…駄目だー…。


嘘下手だし、どう頑張ってもチンピラ感がー…。


ジャックはむしろ補導される側。



どうしよう?



僕がしばらくうーんと悩んでいると、お巡りさんが怪訝な顔で



「どうかしたのかな?」



と聞いてくる。



これは結構不良少女と疑われてるなぁ…。






ええい!


ここは正直に言うべきだ!






「んーとね…迎えに来てくれそうな人とは…今ちょっと喧嘩中で……。電話しても、迎えに来てくれないかもしれなくて…。だから、ぼくちゃんと一人で帰れるから、大丈夫だよ?ちゃんと帰る。ホントに気が付かなかっただけなんだ。」



僕がそう言うと、お巡りさんは少し困ったような顔になって…。



そして、僕を諭すように言う。



「…気まずいのは分かるけど、こんな遅くまで出歩いて、お家の人も心配するよ?きっとその人も心配してる。きっと大丈夫だから…電話してみよう?ちゃんとごめんなさいして、迎えに来てもらおう?」






んー…。





これ、僕何歳くらいに思われてるのかなぁ?




ごめんなさいしてって……。







まぁ、いっか。





そうだよね。


きっと大丈夫。


プラたん真面目だし。


電話したら出てくれると思う。


緊急の用事かもしれないもんね。


意を決してプラたんの番号に電話をかける。



1コール…2コール…3コール……。



お巡りさんが少し離れたところで僕の様子を見ている。



…4コール…5コール……。











……出ない?



え?



ちょっと…。






嘘だよね?











…ホントに?













プツッ…


不意にコール音が途切れる。


僕は慌てて何か言おうとして、




『ただ今留守にしております…。』




機械的な声。



プラたんはいつも端末をきちんと持ってる。




留守番電話なんて…。





……無視されたの?







そんなの…。











ピーッという電子音が聞こえる。



僕はすうっと息を思いっきり吸って…






「バカバカバーーーカ!あんなくらいでこんなに怒ることないじゃんバー―カ!!無視とかひどいぞ!冷血漢!!陰湿やろー!純情イケメン!!」




「…それ最後褒めてない?」



…叫んだ。




……って、あれ?


今の声…。


振り返る。


視界に映ったのは白金(プラチナ)とアメジスト。



『「…え?」』



僕の口と、プラたんの持つ携帯から、僕の声がほぼ同時に聞こえる。



しかめっ面のプラたんが、電話を切ってから、僕に言う。



「全く反省してないな、このばーか。帰ったら説教ね。」




「…何で…ここ…。」


「GPS。付いてるの忘れた?」



「…そうでした。」



きっと補導時間に僕が外をうろついてるの見つけて、迎えに来てくれたんだ。



にへっと頬が緩む。



やっぱりプラたんはイケメンだ。



「早く帰るよ。」


「はぁい。」



僕の答えを聞いて、プラたんは少し呆れたように笑う。


そして、お巡りさんに



「すみませんでした。うちのがお手数おかけして。お勤め、ご苦労様です。」



そう挨拶して、僕に行くよ、と声をかけて歩き出す。


いきなりのプラたんの登場にちょっとびっくりしていたお巡りさんは、プラたんの言葉でハッと我に返って、軽く礼を返した。


僕は慌ててプラたんのに続きながら、お巡りさんに小さく手を振った。


お巡りさんも、苦笑しながら手を振り返してくれた。







家出生活はとりあえずこれで終了かなぁ。




ホテルの荷物取りに行かなきゃ。












結局、何歳だって思われてたんだろーなぁ……。







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