十八幕・●▽月の●◇日
初代切り裂きジャックが二代目を見出したのは十九の時だったという。
暗殺者一家に生まれた彼は、一族を出奔し英国中を震撼させる犯罪者となった。
そんな彼が年端もいかぬ二代目を、何故見出し、なぜ自分の後継として育てたのか。
真実は本人以外には分からないことだ。
彼は二代目が九つになるころに、二五歳の若さでひっそりとこの世を去った。
さて、その二代目切り裂きジャックは二人の子供を弟子としている。
彼が後継を育て始めたのは壮年期に入ってからだという。
当時六歳ほどであった三代目の育成を始めた一年後、三歳ほどの子供を拾って三代目と共に育てはじめた。
その三年後に世を去った二代目の代わりに、その子供を育て続けたのは三代目。
お互い支え合うようにして生き、二人で切り裂きジャックとして活動した。
だからこそ、
その子供…四代目切り裂きジャックの手で殺された時の三代目の衝撃はいかほどだっただろうか。
四代目がどのような思いを持って、兄弟子である三代目を殺したのかはわからない。
ただ分かっていることは、二人支え合い殺しをしていた三代目と、その後も一人活動し続けた四代目とでは明らかな実力の差があったという事。
より幼いころに拾われ、殺しの技術を教えられた四代目の方が三代目より圧倒的に優秀だったのだ。
そのことに不満を持った為か、それとも自分はもう助けなしで生きていけるという意思表示だったのか、はたまた別の理由があったのか。
四代目は生涯、実子である五代目にも、それを語ることは無かったという。
そう、四代目は家庭を持った。
子供は五代目一人。
気立ての良い妻と、緑あふれる庭のある家。
傍から見ればいたって普通の家庭だった。
父親と子供が定期的に人を殺す以外は。
四代目は五代目が十三になる前にこの世を去り、五代目は母親のもとで十八になるまで普通に暮らした。
そして、家を出てから三十代も半ばに差し掛かろうというころ見出した六代目は、五歳になろうかというほどの女児だった。
六代目、初の女性切り裂きジャックとなった彼女。
それ以外に特筆することが無かった彼女が、七代目として育てたのは、彼女よりもずっと平凡な少年。
若くして英国を震撼させた初代より表に出ず。
二人の弟子をとった二代目のような包容力もなく。
二人で一人の切り裂きジャックとなった三代目のように、兄弟弟子が居るわけでもなく。
先代を殺して名を奪い、さらに家庭まで持った四代目のような大胆さもなく。
0から殺人の教育を受けた五代目のような生粋の純粋培養でもなく。
六代目のように女性であったわけでもなく。
ただ彼は、弟子や師とは違う、『仲間』を持ったのだ。
表ではないが裏の世界を震撼させる組織に、ナイフを向けてきた相手をも受け入れる包容力でもって、家族のように想われ、放っておくと何をしでかすか分からない仲間に囲まれ、純粋に人を殺さなければ生きてはいけない少女と、今日も暮らしているのだ。
それは。
それは…。
「面倒くさいよ。」
そう言って、七代目切り裂きジャックは笑うのだ。




