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最終 ステージ ぼくから俺に

朝。


モニターの光が、まだ眠い部屋を淡く照らしぼくは、いつもと違う顔をそこに映す。


動画の偽ハイタでもMMOのハイタでもない、ただの中三。。




天気予報は今日も無機質だ。


晴れ。


(ログイン成功)


灰実はゆっくりと制服に袖を通す。


プラスチックの詰襟の匂い、昨日の晩に母GMがつけた防御魔法。


アイロンで伸ばされた布は、懐かしい香り、それはただの布ではない。


この世界に接続するための装備。


【装備確認】


・最強鎧:制服

・長年の相棒:かばん

・魔法スキルツリー:教科書

・詠唱補助:歌詞カード

・大魔法:ギター

・補助デバイス:アイポッド


(よし)


脳内MMOの準備は完了している。



廊下に出ると女性用の装備(中学制服)をした、妹が笑顔で待っていた


「行こう」


手を引かれ初心者チュートリアルの冒険者のような。


懐かしい手の感触


玄関。


妹は、無表情。


だが、ほんの少しだけ急かすように言う。


「わたしが最初のリスナーなんだからね。早く」


そう言い妹は、光に消え、パタンと閉まるドア。


「リスナー? ただのモブだろうが……あいつ」


苦笑しドアに触れる。


近所の主婦の笑い声がする、朝の自転車の音が混ざり。


HPをガシガシ削り、注射器に吸われるみたいに減っていく。


(先行くから)

その言葉は命令ではなく、確認だった。


カチャン

扉が開く。


まぶしい、 時計を見ながら歩くサラリーマン、走る小学生。


その先の曲がり角で。隣人に挨拶をする妹。


外の空気が流れ込む。




世界が一段だけ広くなる。


歩き出す。


クエスト確認、第一段階。


イヤホンを耳に付けた。


流れる歌のリズムを足で追い進んだ。




公園の前で、足が少しだけ止まる。


(昨日までの続きが……あの辺に残ってる気がする)


ギターの感触。


猫の視線。


誰かの退院。


少しだけ遅れる。


けれど、それでも進む。



やがて学校の前に立つ。


徐々に増え続けるヒソヒソ声も。


構内では遮断できない、ポケットにイヤホンを直した。


「遅いよ」

険しい視線で、周りを子猫のように威圧する妹の横を過ぎる。



同じ制服の群れ。


同じようで、少しずつ違うログインユーザーたち。


教室のドア。


手をかける。


一瞬だけ呼吸が止まる。


(接続、開始)


ドアを開ける







19時30分


闇の奥へと電車の遠ざかる音、が響き 消える。



公園のベンチで。

シュランと弦を弾きながら灰実は、コードを鳴らしている。


あっけない1日。 


学校は、誰もが最初だけ驚き声をかけるけれど、2時間目には消えていた。


「石橋先生」


静寂。


灰実は少しだけ間を置く。


「俺……」


言葉が途中で止まる。


夜の公園は静かだった。


誰もいないわけじゃない。


ただ、誰も“会話していないだけ”の場所。


「明日も行きます」


それだけ言って、灰実は視線を落とす。


石橋はすぐには答えなかった。


やがて、小さく息を吐く。


「ええ」


それだけ。


風が一度だけ通り抜ける。


接続は切れていない。


ただ、更新が止まっているだけだった。


灰実は立ち上がる。


ギターケースを肩にかける。


(ログアウトじゃない)


(終了でもない)


ただ今日はここまで。


END

「……あーあ、お兄ちゃんの黒歴史(中三編)に付き合ってくれてありがと。もしこのクズの異能が1ミリでも気になったなら、下の【ブックマーク】を押して、1週間後にあいつが高校のプールでサメにミンチにされる(高校編)の、特等席で待っててよね」

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