第四話 魔法グリッチ
妾はあの後、床についたのじゃ。最後まで父殿は妾に恐怖しっぱなしじゃった。情けないのう。
さて、それより検証じゃ。ベッドに横たわり、目を閉じ、息を整える。
まずは、説明をしよう。
この世界に魔法がないと言ったが、実際は違う。魔法はある、神が人間に魔法を気づかせていないだけなのじゃ。
これから先で魔法を使うために、世界に対するグリッチ(世界のバグを使う不正行為)を行う。
魔法の素(魔素)というのは重力波や電波と同じであらゆる場所に漂って居る。しかし、次元軸が違う。そこでとある方法を使うことで、生物の精神体はその次元へ行くことができる。そこで魔素を捕まえるのじゃ。
じゃが、もしもその次元へ行くことができても、普通の人間では魔素を捕まえるなど絶対に無理じゃ。なにせ、魔素とはどういうものか知らんからのう。目に見えず、まったく形の知らないものを感じて掴むのはとても困難な事じゃ。
ちなみに、施設でこれをやらなかったのは、少しでもおかしい様子を見られると入院期間が延びるからじゃ。おお、こわいこわいのじゃー
それでは実行に移そう。
まずは次元を超す...妾は神であるからそこは余裕じゃ。精神の疑似的な死を行うのじゃ。この時、うっかりすると本当に死んでしまうので気をつけねばならん。
妾は神なので、世界を作ることができるのじゃ。その時にこっぴどく人間に討伐されたことがあるのじゃ...その時の記憶で脳の疑似的死を再現する。
うーむ...妾が生まれて始めて、0から作った世界が人間に乗っ取られた時(世界NTR)の記憶を...
んあー...いい感じに脳破壊されるのぅ...あー... …… ……
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……よし!次元の飛び越しに成功じゃ!
次は魔素を掴む。イメージで言うなら、ラジオの波長の...波長の津波をイメージしてくれ。押し寄せてくる波長の津波が、どんどん飲み込んでくるようなそんな感覚じゃ。
その津波の流れに乗る...またさらに大きな津波が前からくるので、こんどはそちらに乗り換える...これを繰り返していく...
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感覚が研ぎ澄まされ、最初の頃より精神が波の速度と同調していく...
・・・・・・その時、ピタッと、一瞬。完全に波と精神の速度が一致する。
「破ッッ!!!」
その波を精神で吸い込む。バキュームのように妾の身体へ魔素が吸い込まれていく。じゃが、それは無限そのものじゃ。どれだけ吸い込んでもなくなることはない。じゃから、魔素に自分の根を張る感覚じゃ。縦に、無限に続く長い根を張る。その津波を自分のものとして切り取る。
ズォォオオオオオ…………
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「ぷはっ! げほっげほっ!!」
危ない、息が完全に止まっていた。
「すっはぁ...すっはぁ...ふー...はふぅう」
成功していれば...魔法が使えるはずじゃ。
「ウィンド」
サァァァ...
髪の毛を風が凪ぐ。部屋の中に、風を吹かすものはない。
「うむ、間違いなく魔法が使えるのじゃ」
次に、ステータスを見ようとする...が、これはできなかった。おそらくこの世界にはステータスの概念がないのじゃな。
外はもう夜明けであった。さあ、次にやることは、この体の持ち主に何があったか...じゃな...