第五話 怨恨
さあ、魔法が使えるようになった。ここからは魔法を使って色々なことをしていこう。
この体に入って2か月ほど経つが、実はこの体からなにやら心の底から抑えきれぬ怨恨を感じておったのじゃ。
この体...一二三 優という人間にある怨恨について...調べねばなるまい。
魔法を使い、脳を解析して少しずつ見ていこう。
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『一番最期の記憶からじゃ...』
ぱくぱく
僕はくすりをのんでいる、1粒100円の薬をもう20粒は飲んじゃった。僕、役立たずなのに。無駄遣いしちゃってる。
思えばいいことなんてなかったな、ずっとボーっとしてたし、みんなにはバカにされたし、ブサイクだし。
ぱくぱく
あーあ くるしくなってきた、目の前もぼやけてきた。このまま死んじゃうのかあーあ あれ。涙が出てきた...こんなに辛い人生、終わっても悲しくなんてないのに
うれしいはずなのに
ま、いっか。
ばいばいおかあさん、おとうさん。
ばいばい。みんな
ばい...ばい。
ば...い...ば...い。
ば...
『...どうやら、服薬自殺した様じゃな。...いったいなぜ...?』
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『最新の怨恨は...どうやら、教員免許で臨時の小学校教員になったようじゃ。特別支援学級という所のようじゃの』
「一二三先生!! 子供の情報を○○先生へ伝達してないじゃないですか!!」
「え...いや...その子供の情報が僕に伝達されてない...」
「聞きに来てくださいよ!! 自分から聞きに来るのは社会常識です!!」
「は、はい、すみません...」
『これは...理不尽な説教ではないか? いや、こちらは聞きに来られてないのに、こっちは聞きに来いというのはおかしくないかのう...?』
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『子供とこの体が何やら言い争っておる。』
「せんせい!!! ぼくなんてしねばいいんでしょ!?!? しんでやる!!!」
「あぁ、だめだよ...縄跳びで首絞めちゃ...」
「うるさい!! くるな!!! こうしてやる!!」
「痛い痛い!! 爪が手に食い込んでる!!! 誰か!! だれかぁ!!」
『な、なんじゃこの狂った子供は、注意を引こうと傷害するなど...なんて狂った子供じゃ...子供だから許されるというのか...? ううむ... 今度はこの体と同僚が話しておる』
「血が出てるじゃないですか、暴力があったら、さすがに振り払ってくださいよ」
「...はい...」
『...助けていないのに...そんなことを言うのかこの同僚は...?ひどいのぅ...』
――――
『ま、また子供とのトラブルみたいじゃ...』
「おらぁ!! 蹴りをくらえ!!」
「ぐあ!?!? 腰があああ!!」
「ちゃんと暴力受けないようにしてください!!」
「はい...」
「あと、休みは取らないでくださいね!? ただでさえ人がいないんですから!!」
「でも...体調がきつくて...」
「じゃあ土日で病院行ってください!」
「・・・・・・」
『子供に蹴られたのに...蹴られたのは先生のせいじゃと...!? しかも、きゅ、休日すら仕事に割かねばならんのか...?』
――――
『なにやら、一番年長らしい女...おそらく先生の取りまとめ役が、大勢の大人の前で話しておる」
「本日は保護者会にお越しいただきありがとうございます、学年主任です、いやぁ~……一二三先生の担当する授業が実験ばかりで申し訳ありません」
「ぇ・・・・・・」
「一方で、私の担当する科目では体験することを大事に授業づくりをしております」
『ひ、ひどい貶し方に...矛盾した主張...なんて長じゃ...なるほど、仕事で極度のモラハラにあったのじゃな...これが最終的に自殺につながったと...』
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『次の怨恨は...さらに少し遡るようじゃ。学生時代のようじゃな。ふむ…タテノ毎日豆腐という会社の面接を受けたようじゃ』
「キミさぁ、そんな企業研究でウチを受けて、なにしにきたのwww」
「えっ」
「俺と企業の貴重な時間うばってさあwww何なのwww」
「で、でも」
「なに?口答えすんの???はぁ...受け答えもヘッタクソでさあwww喋り方もなってないwwwマジ君社会人向いてないよwww」
「そ、そんな...」
「そういうわけだからもういいよ帰りな。あと、このことを他の企業さんにも言っとくねwwwブラックリスト載せとくよw他の企業の為にもさw」
『あ、圧迫面接というやつか? ...な、なんというやつじゃ...』
――――
『そ、その後の就活は...?』
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「そんな...」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「...ブラックリストに載ったから...?」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「この履歴書で...どうかな...」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「うぷ...オエー...おろろろろ...」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「もう12月か...このままじゃダメだ...まず精神科に行ってみよう...」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「ユウさん...あなたはADHDとASD、そしてうつ病ですね。お薬をお出しますね。」
「そ、そうですか...薬を飲めば...きっと...」
「これで...」
【今後のご活躍を心よりお祈りいたしております】
「ああ...」
『ADHDとASD、うつ病があるにもかかわらず...病気の者に容赦がないとは...な、なんという非情な社会じゃ...』
――――
「就職先決まらなくても、いいからね。...最近辛いでしょ...休んでも...いいからね...」
「おう、ちゃんと就活しないとダメじゃないか、母さんはああいってるが、俺はしっかりけじめをつけないとだめだと思うぞ」
「・・・・・・ぅん。」
「出かけてくるね。今日はさ、休んでいいからね」ギィー...バタン
「父さんもお母さんの買い物を手伝ってくるからな、...分かるよな?ちゃんとやれよ」ギィー…バタン
「はぁ...薬...飲まないと...」
『うわぁ、ひどい...ひどすぎるのじゃ...これでは板挟みではないか...夫婦間でもっと連携をとるべきじゃろ...こりゃ病むのじゃぁ...』
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『高校の記憶にも怨恨があるのぅ...』
「はい、ここの計算式は前回やったのと数字の順序が違ったら×です!」
「答えも式もあってます...」
「ダメです! この順番じゃないと、授業を聞いてないということです! ×です!」
『えぇ...この教師、自分の授業にどれだけ心酔しておるんじゃ...洗脳か?』
――――
『ネットで、えびふりゃーという名前で活動していたようじゃな...【コールオブビューティー】という8対8の対戦ゲームのようじゃ』
≪えびふりゃー、よええwww≫
≪まじでクソほどエイム悪いじゃんwww≫
≪雑魚wwマジ雑魚www≫
「あの、辞めてください...」
≪反応したwwwうぇーいwww効いてる効いてるぅううwwww≫
≪もっとチャット荒そうぜwwwゴースティングの人数めっちゃいるなwww≫
≪うっはww15人でゴースティングwww味方も敵になって死体撃ちしてるwww≫
『ネットでのいじめなんてあるんじゃな...これは...なんとひどい...』
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『初等中等学校でも怨恨が...? まずは中学生の時の記憶じゃな...』
「ゆうくん! ノモンハンどこまで進んだ?」
「あ、えっと...あの中国の張作霖ってボスを倒して...」
「あれ? お前ゆうと話してんじゃん」
「え? ダメかな?」
「そいつきもいし、付き合わないほうがいいよ」
「ええ、でも...」
「あ、僕は構わないから...いいよ...」
「ゆうくん...」
『学年で嫌われている存在だったんじゃな...』
――――
『今度は小学生同士のようじゃな...」
「お前!!! しっかり掃除しろよ!!!」
「えぇ...? してるよ?」
「おら!!! もっとトイレの床膝ついて磨けや!!!」
「うぅぅ...」
『小学生が小学生に怒鳴っておる...強者はここまでいじめができる世界なのか...』
――――
「やーいwwwチン毛ーwww」
「俺wwトイレで生えてるの見たwww」
「やめてよぉ...」
「ギャランドゥwww ジャングルwww」
『男子共が貶し、女子達がひそひそと話をしておるのぅ...デリケートな時期じゃろうに...人間の子供は残酷じゃ...』
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『次の記憶が一番怨恨が強いのぅ...』
「おい!! お前!!! 教科書また忘れたのか!!!! おい!!! 確認したのかよ!!!!!」
「は、はい...うああ」
「ちゃんと確認してねえんだろ!!!!!! コラアアアア!!!!」
『うへぇ.........別室でバレないように8才の子供に怒鳴り散らしながら襟を何度も引っ張って首をガクガク揺らしておる...完璧に体罰ではないか...」
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まだまだ怨恨の記憶は山ほどある...これ以上は...妾が吐いてしまいそうじゃ...うっぷ...
なんという人生じゃ...こんなひどい人生で...こんなに非情な世界で...こんなに儚い結末...あんまりじゃ...あんまりではないか...
この無念...晴らさねば...なるまい...
それが...この世界に召喚された理由なのじゃな...きっと。
嗚呼...一二三 優...この体の元の主よ...せめて...妾が...その無念を晴らすのじゃ...
どうか...安らかに眠るのじゃ...
...
妾は黙とうを捧げた...
彼を思うと...自然と涙が出た。涙があふれて止まらぬ...それは...妾ではない、体に残った怨恨が...疑似的な悲哀を生み出したようじゃった...
しかし、こうなると疑問に思うのは神の存在じゃ。
ここまで生き地獄を味わった不幸な人間を作るなど、よほどの不手際じゃぞ。人間だけの世界を作ったということは人間によほど与しておる神であろう?
というか、人間だけの世界ならば、人間を不幸にしてはいかんじゃろ。妾は自分の作った世界でサキュバスのほとんどすべてを、満足できるように取り計らってきたのじゃ。それが神の使命...じゃと妾は思っておる。
...一体なぜこんな世界にしたのじゃ...? ...今度は神について調べねばなるまい。
あやつと...コンタクトをとるとしよう。




