第三話 家族との和解(ゴリ押し)
妾は2か月で帰された。もう入院は必要ないと判断された。...というよりは治らないので家に帰らせて、記憶を戻させようという方針にしたそうじゃ。...もう記憶も精神も、元に戻ることは絶対にないがの。
「ゆう~...大丈夫?」
「大丈夫じゃ」
「その口調、どうしてそうなっちゃったの?」
「きもいぞ、お前」
「しかたないじゃろ、妾はこの口調でしか喋れんのじゃ」
運転している男が、妾の身体の父、そして女の方が母だそうじゃ。父殿はずいぶんと心無いことを言うのう、
「もうお父さん!!! ゆうはストレスでこうなっちゃったのかもしれないじゃない!!! これ以上ストレスかけないで上げてよ!!!」
「うるせえ!! 男はこういうストレスに耐えなきゃいけないんだよ!!! 女のお前が口出しすんな!!!」
「あーうるさいのう...」
夫婦喧嘩なんぞやりよったら余計ストレスかかるじゃろうに、この母親は...
それにしてもこのクズ父親、男はこうであれ、みたいな偏見論者か...救いようがないのう...
「もう、うるさいから夫婦喧嘩はやめい……」
「俺はお前のために言ってやってんだ!なんだその態度は!!」
はぁ...仕方あるまい...
『うるさいといっておるのが...分からんのか...?』
「「ひっ」」
これはできれば使いたくなかったが、使うしかあるまい、威圧じゃ。妾は神じゃ。人間程度、オーラを出せばすぐに黙らせることができる。
ただこれをやってしまうと...隔たりが拡がって、この体の元持ち主について聞き出しにくくなってしまうのぉ...
「そ、その...ゆう、こ、こわくなったね...」
「...」ガクガク...
「あーすまん、緊張させてしまったのう。妾はゆうではない...と言って信じてくれるかの?」
「う、うん...信じる...」
「あ、あぁ...」ガクブル...
まずは妾がその、ゆうとやらではないと分かったじゃろ。こんな威圧ができる人間はおらんからな。明らかに妾が人ならざるものになったと伝わったに違いないのじゃ。
「妾はサキュバスキングなのじゃ」
「さ...サキュバスキング...?」
「そうじゃ。異世界の神なのじゃ」
「そ...そう...なの...」
「お、おぅ...わ、わかった...」
あー...担当看護師のような目で見てきておる。完全に憐れむ目じゃ。まあ、そうじゃろうなぁ...魔法のない世界でそんなことを言われてもそらぁ、そうなるか...
「あ、じゃ、じゃあゆう、何て呼べばいい?」
「そ、そうだ...何て呼べばいいんだ?」
「いや妾はもう、ゆうと呼べばよい。妾がそちらに合わせる」
こういうふうに譲歩して信頼関係を築くしかないのう。
「そ、そっか」
「わかった、ゆう」
「よろしく頼むぞ、父殿母殿」
恐怖で支配してしまった...最悪の滑り出しじゃが...まあ、あのままでは埒が明かなかったじゃろうて。
「ね、ねえゆう、焼肉行く?」
「そ、そうだな...焼肉に行こうか」
「おぉ、いいのぉ」
この世界の食事事情は、テレビの番組でやっておった。色々食べ漁りたいと思っていたのじゃ。
――――――――――――
「ん~♪ 美味しいのじゃ~♪」
焼肉は美味いのう! このタレ、まさに妙薬と言える。誰ぞ、シェフをよべ~と言いたいほどじゃ。
「ふ、ふぅ...」
父殿は完全にこちらを畏怖の目で見ておるわい。こりゃあ完全にさっきの威圧で恐怖に飲まれてしまったのぅ。
「あ、ゆうが笑ったのなんて久々ね」
母殿は話せそうじゃ。母は強し、というやつか? いや、父殿が虚勢の木偶なだけじゃな。
「ん?そうなのか?」
「えぇ、前はほとんど笑わなかったわ...」
ふむ…よほど重症だったようじゃな。
「...母殿は、何があったかわかるのか?」
「...分からないわ、いきなりで...」
「……」
親にも分からんのか...うーむ...一体この体の持ち主に何があったというのじゃ。
うむ……? 待てよ……
焼肉を食べていたら力がついて頭が冴えてきたのう。この、にんにくというやつが、すごい力の源になるのじゃ。
今後のため、"あの技"……試して見ねばなるまい。...使えるかのう?
今夜、試してみるか...




