就寝
「コン、ゆっくり寝るのじゃぞ」
「...」
コンは、ギルドの宿舎で静かに寝たのじゃ。
「マスター殿、話さんか?」
「そうね...」
妾たちは部屋を出て下の階の応接間に座ったのじゃ。
「...コンの召喚魔法を見て、何か思うところは?」
「魔法陣は出ていたし...発動していたはずヨ...魔法陣が出ていれば魔法は成功のはず」
「とすれば...どういうことなんじゃ...?」
「...分からない...こんなことは初めてのことだワ。いろんな冒険者を見て来たけど、特殊なことが起きているのは確かネ...」
「コンが召喚魔法を使えるようになると思うかのう?」
「...少なくともあなたは召喚できているし...」
「...!? マスター殿、妾が召喚された身だと分かるのか!?」
「魔眼持ちだから召喚されたというのは分かるワでも詳しい内容は霧がかって見えないわね、まあ内緒にしておくわヨ、言ったっていいことはないし、コンちゃんの大事なお友達だもの」
「ありがとうなのじゃ、でも妾が召喚できているって、妾は上位召喚魔法で召喚されたらしいが...通常召喚魔法とは全く違うのではないのか?」
「上位召喚と通常召喚で違うところはあまりないワ...そうね、違うところがあるとすれば、上位で召喚した相手は召喚士から独立してるってことかしら」
「独立している...?」
「そう、普通の召喚では召喚士の魔力で魔物を維持するのだけど、上位存在は異空間からの魔力で存在を維持するの。だから召喚したら危ないってことがあるの」
「なるほど、召喚士が死んでも上位召喚で出た者は消えぬために危ないということじゃな」
「ええ、でもね、あなたみたいな理性があるのなら問題ないはずで、一概に禁止にするのはどういうわけかって話なのよ」
「そこは妾も不思議じゃった、このように上位召喚魔法ならできるという者に対する差別だと思うのじゃ」
「そうねぇ...上位召喚は通常召喚より難しいから本来なら高得点でも上げるべきヨ、ほとんど失敗するはずだし、なんでかしらねぇ」
「分らんのぉ...」
「そういえば、コンちゃんはどうやってあなたを召喚したのかしら?」
「ん?」
「上位召喚は召喚する相手の種族名を知らないといけないのよ」
「ほう?」
「じゃないと声に出して呼び出せないでしょ?」
「そういえば、コンは妾のことをイプシロン光線が出せると言っていたのう」
「あ...貴方! サキュバスキングだったの!?」
「え、知っておるのか?」
「終末に現れる存在...召喚難易度が最高位に高い存在じゃない...コンちゃん召喚成功したのね...」
「なんじゃ、そんな風に伝わっておるのか、妾?」
「...この世界は...終末だということなの...?」
「どういうことなのじゃ?」
「...この世界には予言書があるの、有名な一節に『この世界にサキュバスキングが現れし時、世界は終末へと向かう』っていうのがあって。世界各国、様々な偉人が考古学と共にサキュバスキングについて研究しているわ。もちろん、姿形を見た者はいないから理論研究だけよ。中にはおどろおどろしい存在だとか、数十メートル級の巨人だとか、特に有力な説が『イプシロン光線を放つ』なのよ」
「なんじゃぁ...!? なんでじゃぁ...!?」
「終末って言うからやっぱりそういう危ない存在って印象が強いのよ、実際私もそうだと思ってたし、まさかこんなに可愛い子とは...」
「まあ実際そういう姿形になることもあるにはあるが...」
「あるの...?」
「しかし、基本はこの姿じゃな」
「本当に終末を呼ぶ存在なのかしら...?」
「呼ぶわけないじゃろう。あくまで召喚者を幸福に導くのが妾の使命じゃ。世界滅亡も願えばできないことはないが」
「できるの...?」
「あくまで、できるというだけじゃ。相応の準備も必要じゃし、何より利がないから、そういう時はまず召喚者をケアするのが第一じゃな」
「うーん、詳しく聞けば、聞くほどに終末予言が真っ向から否定されていくわねぇ」
「しかし、妾って召喚難易度が高いのか?」
「ええ、それはもう。1日周期で古今東西いろんな召喚士が試してるけど、ことごとくが失敗してるのよ」
「うむぅ...なぜじゃ?」
妾に召喚要請がそんな頻度で届いたためしはない、とすればこちらでの世界の問題じゃな...
「召喚者の魔力不足と言われているわ」
「なるほど、コンが妾を召喚できたのは魔力が十分にあったから...ということじゃな?」
「ええ、余計になんで通常召喚ができないのか...謎だわ。通常召喚なんて魔力が足りていれば誰でも成功できるから...」
「それにしても...コンが妾を召喚したのは...相当病んでいたという証左なのかもしれんのう...コンは妾が召喚された時、世界を恐怖に陥れろと言っておった...平気な顔をしているが、内実は相当なのかもしれん...」
「...そう...なの...ねえリリーちゃん」
「なんじゃ?」
「魔法学校に入れたのは...アタシなの ...アタシが...アタシがそこまで追い込んじゃったのかしら...」
「...」
マスター殿はひどく落ち込んだ顔をしていた。
「アタシが入れさせないで...ダンジョンに集中させていれば...こんな...ことには...」
「マスター殿、自分を責めないことじゃ。他でもなく、悪いのは魔法学校の欠陥制度じゃ」
「...」
「コンは魔法が得意なのだから、魔法学校に入れたのは正解じゃ。才がある子こそ、適切な学びの場を与えることが良い事なのは間違いない。だから、マスター殿は悪くなどないのじゃ」
「ありがとう...うぅ...ありがとう」
そうして、妾たちは別れた。
...考えなければならん、なぜ召喚魔法が使えぬのか、なぜ妾がそのような伝わり方をしているのか。
そして、魔法学校がなぜ上位存在の召喚を禁じているのか。
寝室に入る。
コンが寝ておる。
妾は今日の疲れを癒すために、コンの尻尾に顔をくっつけてみた。
「すぅ~...はぁぁぁぁ」
…くちゃいのじゃ。でも安心する...モフモフで顔が蕩けてしまう。
「んぁっ♡ はぅぅっ♡」
コンは体をのけぞらせて、ビクビクと震わせた。
「すんすん...くんくん...すぅー...」
「んひゃうっ♡ ひぁっ♡」
「すぅ~...ぷはぁ~」
「ッッッ♡♡♡」
妾はお日様の匂いに包まれ、静かに眠りについたのじゃ。




