次なる世界
む...ああ、異世界のサキュバスから呼び出しのようじゃ...
前の世界からおおよそ170年は経ったかのぉ...
なんじゃ?
ふぁ~...召喚に応じてみようかの...どうせ暇じゃし...
―――――――――――――――
シュゥゥゥ...キラッ!!
「む...ここは...」
「...やった!やったぁ!召喚に成功したわ!」
「お主が召喚主かの?」
「ええ! そうよ! 私は偉大な魔法使いなんだから!」
ふむ、見た目は紅い袴と、白衣をつけた、和風な雰囲気の銀髪で、キツネ耳、キツネ尻尾、キツネ顔の美少女じゃった。...胸と態度がでかい。
「態度がデカいのう...」
「それはそうよ! 私はサキュバス族の英知! この世界一の魔術師なんだから! さあ、サキュバスキング! わたしに力を貸して世界を恐怖に陥れなさい!」
「待て待て...妾の能力を知らんのか?」
「え? 口から『いぷしろんねつかくこうせん』っていう魔法を吐き出して世界を炎に包み込む伝説の存在じゃないの?」
ああ、頭が痛いのじゃ...どうしてそんな伝わり方をしておるんじゃ...
「えっとじゃな...まあ、まずは鏡を持ってくるのじゃ」
「なんでアンタが私に命令するのよ!!! 私が飼い主! 貴方はペットなんだから!」
「...ペットのぉ...なあ、いままで召喚に成功した召喚獣はおらんのか?普通召喚獣とはファーストインプレッションが大切なのじゃぞ...?なんだかイマイチへたくそじゃが...」
「...うぐっ!...ぐすっ...ふぇぇぇ...!」
おっと、泣き出したぞ。いかんいかん、泣かせてもうたのじゃ...
「す、すまんすまん! 妾はお主のペットでよいから! 泣き止むのじゃ!」
「くすん...うん...」
「えっと、どうしたのじゃ...?」
「あのね、長くなるんだけど、愚痴にもなっちゃうんだけど...聞いてくれる?」
「ああ、聞いてあげるのじゃ!聞いてあげるから!」
目の前のキツネ少女の背をさすってあげると、ぽつりぽつりと語りだした。
「私は、サキュバス族のキツネ獣人ハーフ、コン...っていうの」
「コンじゃな」
「地元では、魔法を使うといつもみんなにすごいすごいって褒められて...」
「どんな魔法じゃ?」
「...見せるわね」
コンは、妾の前に立ち、ゆったりとした動作で舞をし始めた。つま先一つ、手指一つ、その総てにサキュバス族の淫靡さ妖艶さと、キツネ獣人の神秘的な雰囲気が醸し出されておるな。感心する美しさじゃ。
そして、パッと手を広げると...
ボワァン!!!
なんと、紫色のキツネ火が9つ背後に出てきた。
「お、おぉー! なんと見事な舞とキツネ火じゃ!」
拍手をしながらほめたたえた。
「ふふん! これが私の実力なの!」
「妾が見てきた中で一番魔法が上手いかもしれんな」
魔法力ならセージを超えるやもしれんぞこれは...
えぇと、これはあらゆる世界の共通事項なんじゃが、詳しく説明するとじゃな...魔法とは、精密に制御するように調整すればするほど、操作の難しさや食う魔力が増えるのじゃ。キツネ火を九つに分けるということの難しさ...普通の火とキツネ火は違う。
キツネ火は、火と違い一つ一つに自我がある。そのため扱うための必要技量が高いのじゃ。失敗すると霧散してしまったり、最悪暴走したりして、自傷...例えば火傷をしてしまうのじゃ。それを九つも操るその技量...尊敬に値するレベルじゃ。
完璧な舞を踊ることで、一つ一つのきつね火に細かな指示を出し、完璧に制御しておる。
「ほんと!? サキュバスキングより!?」
「ああ、間違いなく...そうじゃな」
「やった! えへへ!」
あ、でもこいつの中で妾はイプシロン光線を放つらしいからそれよりは下か...?
「しかし、どうして...泣いてしまったのじゃ?」
「...はぁ...わたしね、魔法学校に入ったの...」
「おお、なるほど」
周囲を見渡すと、たしかにややぼろっちいが、木造の宿舎のような簡素な部屋じゃ。インテリアも必要最低限しかない。女子の部屋というには、飾り気がないのじゃ。寮だと言われれば納得がいく。
「で、どうしたというんじゃ?」
「...落第しそうなの...」
「ら、落第ぃ!? ここまで魔法力に長けているというのに、なぜじゃ!?」
「魔法学校の評価制度にあるの...」
「評価制度...」
「あのね、魔法学校は魔法が全般的にできなきゃダメなの...」
「ほう、全般的に...ということは、召喚魔法も...」
「できなきゃダメなのよ...」
「なるほどのう...?なかなかな欠陥システムじゃな...でも、簡単な魔物も召喚できないのかのぅ?」
「...そう、全くできないの...そのせいで人間族の子たちが私のことを馬鹿にしてくるの...召喚魔法もロクにできない落ちこぼれって...」
「うぅ~む...」
やはり人間族とはどうしようもないのぅ...
「しかし、その召喚魔法が使えない原因はわかるかのぉ?」
「...全然...」
「...でもそれなら、なぜ妾を召喚できたのじゃ...?」
「...はぁ...実は不正なの...これ...」
「ふ...不正...!?」
え、割とやばいことしとるんではないか、こやつ?
「不正...とは...?」
「本当は部屋で召喚魔法を使っちゃいけないのよ、制御できないモンスターが出たら危ないでしょ...?」
「な、なるほど」
「それに召喚方法...具体的には魔法陣を使った特定の魔物の召喚は校則違反なのよ...」
「それはまた...なぜじゃ?」
「魔法陣を使った召喚は有名な英霊や伝説の魔物を召喚するんだけど、それはその相手に対する不敬であるっていうことらしいわ、それで怒る神も居るって」
なるほどこの世界では魔法陣召喚はそういうことになっているんじゃな、しかし...
「なんじゃそれは、召喚された相手はそんなこと考えんぞ」
「でも、そういうことになってるって教科書に書いてあったわ、校則である以上従うしかないし...」
「うぅ~む...」
禁止とするには、納得いかんがのぅ...
「で、それを・・・・・・使ったんじゃな?」
「そう…なの...」
「うーむ...」
これはやっちまったのぉ...
「まあ、やっちまったもんは仕方ねぇのじゃ」
「うん...」
「それに、召喚魔法が使えないというのも不思議な話じゃ。なぜじゃ?」
「まったく分かんない...でもこの世界ではこういう、特定の魔法が使えない人がいるっていうのはあるのよ」
「ほう...」
「人間族に比べると、他の種族は能力に凹凸が大きく出ることが多いらしいわ」
「ふむ...つまり、それが原因かもしれない...と?」
「うん、とくにサキュバス族は弱いし」
なるほど、この世界でもサキュバスは肩身が狭いようじゃ...まあ妾はあらゆる世界の困ったサキュバスを哀れに思ってサキュバスキングをやってるわけじゃからな。まさに適任じゃ。
「まあ、ひとまずは優先事項として退学や落第は避けられぬか?」
「そうね...まあ無理だと思うけど」
「ん? 今なんと?」
「だって多分異常な魔力を検知した学園側がすでに来てるはず...」
「寮生コン! 何をしているのですか!」
入ってきたのは眼鏡をかけた、いかにも人をいじめていそうな白髪のババアじゃった。
「...」
「...なんですか! その人は! ...っ!? 魔法陣!? あなた...!!!」
「すいません、寮長。 私は特殊召喚魔法を使い、この人を召喚しました。」
「重大な違反行為です!!! 明日には追って処分を言い渡します! 覚悟していてください!」
「あの、妾は...」
「あなたも! なんで召喚されたんですか! 今夜は大人しくしていてくださいね!!!」
「あ、えぇ...?」
厳しい目つきで踵を返し、ピシャっと扉を閉じた。
「...ぐすっ...」
「ああ、その、ドンマイなのじゃ...その、何があっても妾が守って見せるから...その、涙を拭いて元気出すのじゃ」
「うん...」
ぐしぐしと顔をぬぐったコンは腫れぼったい顔でベッドに飛び込むと、静かに寝落ちした。
妾も召喚疲れがあるのでコンの隣で横になって寝た。
ム......コンのふさふさ尻尾...なかなかフモッフモじゃな...堪能しながら眠りについた
「んっ♡ あぁんっ♡」
「性感帯なのかのぉ...?」




