撥水力 2003年10月
鳥の国から すずがも通信142号 2003年10月
撥水力
入所して10日とか1ヶ月たって死んでしまう鳥。どうしてなのか、いちばん悔いが残る状況です。色々なケースが考えられます。自力採餌をはじめた後での偏食、栄養の偏り、病変。今年のように気候がおかしかったり、変に蒸し暑い時には、鳥の死亡率もなぜか高くなるようだ、とお話ししました。
わが野鳥病院では、スタッフが忙しくて目が届かなかったり、交代が多くて伝達が悪い時に、てきめんに死亡率が上がります。種類も数も多い「大部屋」では、時々「鳥事故」が起きます。カラスが網のすきまからハトをひきずりこんで殺した、サギが突いたらしい傷がある、カルガモのヒナたちが寄ってたかってむしった、等々。これも混みあってくるとてきめんに増える事故。気をひきしめてかからなくてはね、と言い合っています。
あぶなくその例になりそうだったのはコアジサシ。1996年に蘇我のコロニーで捕獲されたリング付きの個体。もう7歳にもなる鳥です。何らかの病変で、最初は足が動かず、立ち上がることもできませんでした。思いがけず回復してきて、達夫さんが餌やりのたびに水道の蛇口で水をかけていたところ、撥水もしっかりしてきました。ところが、達夫さんの休日に引き継いだ私が、ぬれて体力が落ちるのがこわくて、2日間水かけを怠ったところ、撥水力がてきめんに落ちてびしょぬれ。
「この鳥にとっては、撥水は何よりも大切なんですよ。水に飛び込んでぬれたら、もう舞い上がれない。たとえ水かけのせいで弱っても、死んでも、撥水ができなくては同じことじゃないですか」
以後の4日間、一日7回、必死の思いで水をかけました。完全とは言えないながら、ばしゃっとかけた水はほとんどはじく状態になったところで、11日の夕刻遅く、幕張メッセの駐車場にできているねぐらに達夫さんが戻しに行きました。飛び方が頼りなくてはらはらしたけれど、翌朝は群れとともに姿をけしたとのこと。餌場の印旛沼や、越冬地のニューギニアまで飛んで行けるのだろうか、と、不安いっぱいの放鳥です。




