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現在進行 鳥の国 2  作者: 蓮尾純子
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春3月   2003年4月

鳥の国から    すずがも通信139号   2003年4月

   春3月


 帰宅しようとらせん階段に出たら、ふっとパンの香りが漂ってきました。1キロ東の塩浜のフジパン工場からです。ふーん、今夜の風は東寄りなんだ、やっぱりお天気が崩れるのかなあ。半月がかすんでいるけれど、おぼろ月夜というには寒い。湾岸道路の音が大きく、昨夜は聞こえたカワウのヒナの声を聞き取ることはできませんでした。

 春3月・年度末。数年来、春がきたのもよくわからない、といった感じでじたばたしている時期。私は日夜パソコンとにらめっこ・三番瀬円卓会議関係の会合・報告のメール書き。ホント、何やっているんだろう。

 でも実際は、お天気がよければカワウの繁殖調査(1から2時間コロニーを望遠鏡で見続ける)とか、タヌキをなでまくるとか、餌場のコブハクチョウに怒られるとか、いかにも春らしくかつ観察舎らしい生活を送ってもいるのです。ま、来週は常勤スタッフ恒例の現場打合せでひさびさに保護区の中に入らせてもらう予定だし……

 タヌキは春を迎えていたって態度がよろしくない、との悪評。週1回勤務のスタッフには、男女を問わず噛みつきます。おなじみのはずのスタッフには、男性中心に噛みつきます(正確には噛みつきかねない勢いで威嚇します)。夜は傷病鳥舎廊下のケージで食事と睡眠をとるのですが、朝出してやると、大喜びで鶏頭やイカ、魚といったごちそうの盗み食いに走ります。「タヌキを出しますよーっ」と大声でふれてからケージを開けて、丸々・嬉々とした後ろ姿を見るのが私の大事な楽しみですが、この声を聞くとスタッフはみんな廊下から近くの部屋へと避難します。おいしいものをくわえたところで、じたばたするのを捕まえて外のラインにつなぐまでが、愛の交歓時間。他のスタッフに噛みつこうとしたところをおさえたら、私の手を噛みました。こういう時、「こらっ」と叱ると、タヌキは逆切れして怒ります。「ごめんなさい、悪かった」と平謝りする犬とはぜんぜん違います。ところが、「痛い!」と言ったら噛むのを止めて、なめてくれました。私には「いい奴」なんだよなあ。みんなに優しい態度をとれば、みんながかわいがってくれるのにね。



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