練習生オーディション5
トレーニングを終えた私たちは再び整列させられた。
さすがに全員表情に余裕はない。
「よし、次が最終項目だ。と言ってもこれまでのようにトレーニングをこなすなどではない。お前達に1人3分の自由をやる。その時間を使ってアピールしてみろ。自信のある動きでも、思いを言うでもなんでもいい。10分の休憩の後、もう一度整列しろ」
斉藤コーチはそう言ってリングを降りた。
降田社長と楓さんと何か話し合っている。
どうしよう。
私には自己アピールできるようなことが何もない。
自信がある動きなんてないし、
自分の人生にこれまで何かあったこともない。
一つあるとすればそれはプロレスラーになりたいということ。
でも、それをどう言えば伝えられるんだろう。
ここまで来た以上、私は受かりたい。
夢を掴みたい。
そのためにどう言えばいいのか、その答えが私にはわからない。
そうこう考えている間に10分が過ぎた。
だめだ、考えがまとまらない。
他の人のを参考にしてみようか。
「それじゃあお前から、3分だ」
そう言ってコーチは私を指差した。
そんな、私が最初だなんて、
まだなにもまとまってないのに。
どうしよう、どうしたら?
「どうした?3分しかないんだぞ?何も言わず何もやらずに終わるつもりか?」
終わる、私の夢がここで終わる?
いやだ、そんなの絶対、それだけはいや!!
「私は、プロレスラーになりたいです!!」
咄嗟に口から出たのはいつも心の中にあった言葉だった。
両親にも一度しか言えてない言葉。
ここで終わりたくない一心から出たのはありふれてるけど、嘘偽りのない本心だった。
「幼い頃、私は学校にもほとんど通えないほど病弱で、身体を動かすのも苦手で、自分の人生に意味なんてないと思ってました!
でもある日、楓さんの試合を見て、私は、どんなに倒されても倒されても立ち上がる楓さんの姿に憧れました!
それからいつか、私もプロレスラーになってみたい!なりたいと思うようになりました!
私の夢はプロレスラーになること、いつか楓さんと試合をすること、いつか楓さんに勝つこと!だから、私をプロレスラーにしてください!お願いします!!」
そう言って私は深く頭を下げた。
自分でも何を言ったのかわからない。
まとまりなんてない。
でも、嘘偽りない100%本心を出すことができたと思う。
「OK、わかった。次はお前だ」
私は頭を上げられずにそのまま他の人たちの自己アピールの時間を過ごした。
これがいいのかわからない。
でも、出来ることはやれたと思う。
あとは、結果が欲しい!




