練習生オーディション2
着替えを終えて道場に戻る。
道場に常設されたリング周りを走って軽くアップしていると、
奥からスーツ姿の30代くらいの男性と、ジャージ姿の長身な男性、
そして、もう1人の女性に釘付けになった。
長い黒髪ロングに、シックなスーツ。
身体はプロレスラーなんて言われないとわからないくらいに華奢に見えるけど、
その目の奥には強い意志の光が見える。
虹野楓さん。
忘れもしない。
10年前、私が病弱で学校にもまともに通えなかった頃、
偶然スマホに流れてきた動画を見て釘付けにされた。
何度も何度も倒されながらも立ち上がり、
最後には相手の選手を倒してベルトを手にして輝いていたこの人の姿に私は魅せられて私はこの道は進む事を夢見てきた。
そんな人が、今、私の目の前にいることに胸が高鳴る。
「今年の練習生候補はこれで全員ですか?」
スーツの男性が問いかけると、ジャージの男性が数を数え始める。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、…そうですね、予定人数と合ってます。これで全員です」
「そうですか、では、始めるとしましょう。皆さん、こちらへ整列してください」
「全員整列ーー!!」
私たちはリング正面の前に集まり、横一列に並ぶ。
「ようこそ皆さん、本日は遠いところからお越しの方もいらっしゃる中、ありがとうございます。私はここ、エターナル女子プロレスの社長、降田と申します。よろしくお願いしますねぇ」
社長の降田さんは柔らかな笑みを浮かべて私たちに自己紹介した。
「オレはエターナル女子のトレーナー兼レフェリー、斉藤正明だ」
斉藤さんがニカっと口を開けて笑った。
「虹野楓。今日は皆さんがこのリングで戦う資格があるかしっかり見せてもらうからよろしく」
楓さんの言葉に身が引き締まる。
それは私だけじゃなく並んでいる他の子たちも同じようだった。
「さて、それじゃあ早速始めるぞ。まずは全員リングの周囲を走ってもらう。ペースは乱すな。オレがいいと言うまで走り続けてもらう、わかったな!!」
「はい!!」
「ようし、それじゃあはじめっ!!」
いよいよはじまる。
夢を掴めるのか、それとも夢で終わってしまうのか、
運命が決まる。
私はその一歩目を踏み出した。




