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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第70話:選んだ方々を守るために

 赤い影が、シルヴェリアへ一直線に突っ込んできた。


 俺も同時に踏み込む。


 愛斗「行くぞ!」


 シルヴェリア「はい」


 俺は【光断一閃】を放つ。


 狙いはカルミリア本体ではない。


 その進行方向。


 空間の継ぎ目。


 炎の刃が通る軌道。


 そこを斬って、勢いをずらす。


 カルミリアの身体がわずかに横へ流れた。


 その隙に、シルヴェリアの銃口が火を噴く。


 銀色の弾丸が、カルミリアの脚部関節を撃ち抜いた。


 カルミリア「ぐっ……!」


 彼女の姿勢が崩れる。


 だが、倒れない。


 その背後で、キュプリアが指を床に這わせていた。


 銅色の光が、床を蜘蛛の巣のように広がっていく。


 瑠香が【光衝弾】を放つ。


 狙いはキュプリアではない。


 彼女の罠を照らすため。


 光が床を走り、銅色の紋様を浮かび上がらせる。


 アズが動いた。


 小さな身体が、光の線の隙間を抜ける。


 キュプリアが笑った。


 キュプリア「その進路、読めてるわよ」


 床が変形する。


 金属板がせり上がり、アズの行く手を塞ごうとした。


 だが、アズは止まらなかった。


 アズ「……わたしも、見えてる」


 細い指が、床の継ぎ目をなぞる。


 小剣が、何もないように見える場所へ突き立てられた。


 次の瞬間、床の変形が止まる。


 銅色の光が弾け、キュプリアの罠の一部が崩れた。


 キュプリアの目が、わずかに細くなる。


 キュプリア「へえ。そこ、見つけるんだ」


 アズは答えない。


 少し震えている。


 でも、引かない。


 ブランシェリアの白い弾丸が、アズへ向かって飛ぶ。


 狙撃と罠の連携。


 完璧なタイミングだった。


 だが、瑠香の光弾が、その射線に割り込んだ。


 眩い光が空間を白く染める。


 ブランシェリアの弾道が、ほんのわずかに逸れる。


 アズの横の床が撃ち抜かれ、火花が散った。


 瑠香「アズちゃん、今!」


 アズ「……うん」


 アズの小剣が、もう一つの罠の核を断つ。


 ドームの床を走っていた銅色の網が、部分的に途切れた。


 そこへ、ヴィオレリアの紫の光が重なる。


 空間が歪む。


 床が傾き、天井が近づき、左右の距離が狂う。


 俺は【暁光翔歩】で瑠香の側へ移ろうとした。


 だが、踏み込むべき隙間が二つに見える。


 いや、三つ。


 どれが本物なのか分からない。


 俺の身体だけが動き、残像のような俺が別方向へ飛んだように見えた。


 幻覚。


 認識干渉。


 ヴィオレリアが、俺の空間認識を直接狂わせている。


 その瞬間、オーレリアの槍が迫った。


 金色の槍。


 真正面。


 俺は剣を合わせる。


 だが、手応えがない。


 幻の槍。


 本物は、背後。


 愛斗「しまっ――」


 ネリュアの声が飛ぶ。


 ネリュア「左に一歩、右に三歩じゃ!」


 俺は考えるより先に動いた。


 左へ一歩。


 右へ三歩。


 意味の分からない動きだった。


 だが、その瞬間、背後から迫っていた本物の槍が、俺の肩のすぐ横を通り抜けた。


 紙一重だった。


 ネリュアは杖にもたれ、苦しそうに息を吐く。


 ネリュア「……この干渉、読み切れぬ。じゃが、隙間はある」


 ヴィオレリアの紫の光の中で、ネリュアの緑の光がかすかに揺れる。


 万物の流れ。


 完全には読めない。


 それでも、ねじれの中に残る一瞬の隙を見つけてくれている。


 俺は剣を握り直した。


 勝つための道は細い。


 でも、まだある。


 オーレリアが静かにこちらを見る。


 オーレリア「あなた方は、予測よりも粘りますね」


 愛斗「悪いな。しつこいのが取り柄なんだ」


 オーレリア「取り柄ではなく、欠陥です」


 愛斗「欠陥で結構」


 俺は再び走る。


 今度は逃げるためではない。


 止めるためだ。


 R.I.A.シリーズは強い。


 しかも自己修復機能がある。


 軽く壊しただけでは止まらない。


 中途半端に機能を残せば、何度でも立ち上がる。


 なら、狙うべきは破壊ではなく停止。


 動力系。


 制御核。


 旧命令系統の流れ。


 そこを断つ。


 壊すことと、殺すことは違う。


 そう思いたかった。


 そう思わなければ、シルヴェリアの家族に剣を振るうことなんてできなかった。


 カルミリアが再び立ち上がる。


 脚部を撃たれてなお、炎をまとった刃を構えている。


 カルミリア「お前のせいで、こんなことに……!」


 シルヴェリアの銃口が揺れる。


 まだ迷いがある。


 家族を傷つけるのか。


 仲間を守るのか。


 どちらも選びたい。


 どちらも捨てたくない。


 その迷いが、彼女の照準を鈍らせている。


 そして、その迷いは彼女を殺す。


 俺は叫んだ。


 愛斗「シルヴェリア!」


 彼女が俺を見る。


 愛斗「お前が決めたことをやれ!」


 シルヴェリア「わたくしが……」


 愛斗「命令じゃない。俺のためでもない。お前が、何を守りたいのかだ!」


 シルヴェリアの瞳が揺れる。


 淡い銀色の中で、小さな光が震えた。


 シルヴェリア「わたくしは」


 カルミリアが迫る。


 オニキリアの影が、シルヴェリアの背後へ滑る。


 ブランシェリアが射線を合わせる。


 ヴィオレリアの干渉が強まる。


 オーレリアの槍が静かに上がる。


 それでも、シルヴェリアは答えた。


 シルヴェリア「わたくしは、守ります。選んだ方々を。そして、家族を……これ以上、壊させないために」


 銃口が、まっすぐ上がる。


 迷いが完全に消えたわけではない。


 たぶん、消えることはない。


 けれど、迷いを抱えたまま撃つ覚悟ができた。


 その瞬間、俺たちの連携が変わった。

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