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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第69話:守りたい方々がいます

 肩が、焼けるように痛かった。


 刃が裂いた場所から、血が流れている。


 冷たい床に落ちたそれは、赤かった。


 シルヴェリアの腹部から滴る銀色の液体とは、まるで違う色だった。


 俺は膝をつき、息を吸う。


 肺の奥が熱い。


 視界が揺れる。


 それでも、意識ははっきりしていた。


 痛みがある。


 なら、まだ動ける。


 まだ終わっていない。


 俺のすぐそばで、シルヴェリアが倒れかけていた。


 黒いゴシック調の服の腹部が裂け、内部の銀色の骨格と細い配線が覗いている。そこから、透明に近い銀色の液体がゆっくり滲んでいた。


 彼女の淡い銀色の瞳は、大きく揺れている。


 俺を見ていた。


 俺が、彼女を庇ったことを理解したのだろう。


 でも、それをどう受け止めればいいのか分からない。


 そんな顔だった。


 シルヴェリア「……愛斗」


 その声は、かすかに震えていた。


 機械の音声ではない。


 少なくとも、俺にはそう聞こえた。


 俺は歯を食いしばって身体を起こす。


 瑠香が叫ぶ。


 瑠香「愛斗、動かないで!」


 愛斗「悪い。今は無理だ」


 瑠香「そういうの、本当に嫌い!」


 怒っている。


 でも、その声は泣きそうだった。


 俺は返事の代わりに、剣を握り直す。


 六体のR.I.A.シリーズが、再び動き出そうとしていた。


 オーレリアは金色の槍を構えたまま、俺たちを見ている。


 キュプリアの足元では、銅色の罠が床へ染み込むように広がっている。


 ブランシェリアの白い瞳は、すでに次の射線を探していた。


 オニキリアの姿は見えない。


 カルミリアは、弾き飛ばされた炎の刃を再構成している。


 ヴィオレリアの紫の干渉が、ドーム内の光を歪ませていた。


 完全に囲まれている。


 正面からやれば、まず勝てない。


 それでも、退くことはできなかった。


 シルヴェリアは、俺の横で立ち上がろうとしている。


 腹部から銀色の液体を滴らせながら。


 膝が震えている。


 腕の装甲も、ところどころ開いたまま閉じきっていない。


 それでも、彼女は立とうとしていた。


 俺はその手を取る。


 冷たい手だった。


 けれど、弱くはなかった。


 愛斗「立てるか?」


 シルヴェリア「歩行機能に異常。腹部損傷、深度中。戦闘継続は非推奨です」


 愛斗「そういう時は、立てないって言うんだよ」


 シルヴェリア「表現を修正します。立てます」


 愛斗「修正がおかしい」


 シルヴェリア「ですが、立てます」


 その声に、迷いはあった。


 でも、折れてはいなかった。


 俺は彼女の肩を支える。


 肩の傷が痛んだ。


 血がさらに流れる。


 それでも、俺は手を離さなかった。


 オーレリアが静かに告げる。


 オーレリア「無駄です、R-02。あなたはもう、ここから出られない」


 その声に、シルヴェリアの身体がわずかに強張る。


 オーレリアは続ける。


 オーレリア「旧命令系統は復旧しています。私達は、あなたを処分対象として認識しました」


 キュプリアが笑う。


 キュプリア「正確には、あんたと、その外部個体たち全員ね。面倒だけど、まとめて片付けるしかないわ」


 カルミリア「いいじゃないか。やっと終わらせられる」


 ブランシェリア「射線、確保」


 オニキリア「背後、取得」


 声が、影の奥から聞こえた。


 ヴィオレリアは微笑む。


 ヴィオレリア「逃走経路も、空間干渉の波形も、全部見えていますよ」


 普通なら、ここで詰んでいる。


 それくらい、彼女たちの包囲は正確だった。


 けれど、俺たちは普通じゃない。


 少なくとも、普通の範囲ではもう生き残れない場所まで来てしまっている。


 俺は息を吐く。


 剣を構える。


 瑠香も右手を上げた。


 アズは小剣を握り、床の光をじっと見ている。


 ネリュアは杖を支えにしながら、苦しそうに目を細めた。


 シルヴェリアの両腕が、ゆっくり戦闘形態へ変わっていく。


 銀色の装甲。


 細い銃口。


 折り畳まれた刃。


 壊れかけの身体が、もう一度戦う形を取る。


 オーレリア「R-02。最後に確認します」


 シルヴェリアは、オーレリアを見る。


 オーレリア「あなたは、私達ではなく、その者達を選ぶのですね」


 シルヴェリアの瞳が揺れた。


 家族。


 眠っていた姉妹たち。


 捨てられた者たち。


 そして、今ここで彼女を責め、彼女を壊そうとしている者たち。


 彼女にとって、それは全部同じ相手だった。


 失いたくなかったもの。


 助けたかったもの。


 なのに、戦わなければならないもの。


 シルヴェリアは、胸に手を当てる。


 そこには人間の心臓はない。


 けれど、光はある。


 弱く、規則的に瞬く光。


 シルヴェリア「わたくしは……あなたたちを、助けたかった」


 その声は小さかった。


 でも、確かだった。


 シルヴェリア「ですが、今は。守りたい方々が、います」


 オーレリアの金色の瞳が細くなる。


 カルミリアが歯を食いしばる。


 カルミリア「それが裏切りだって言ってるんだよ!」


 炎が走った。


 カルミリアが最初に動く。

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