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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第68話:守られた涙

 カルミリアの姿勢が崩れる。


 カルミリア「この……!」


 オーレリアの眉が、初めてわずかに動いた。


 オーレリア「R-02。あなたは、私達に銃を向けるのですね」


 シルヴェリア「……わたくしは、愛斗たちを守ります」


 オーレリア「その者たちは、あなたの何ですか」


 シルヴェリアは答えに詰まった。


 仲間。


 そう言えばいい。


 けれど、その言葉はまだ彼女の中で新しい。


 命令でも所有でも任務でもない関係。


 選ぶもの。


 その意味を、まだ完全には掴めていない。


 それでも、彼女は言った。


 シルヴェリア「仲間、です」


 ドームの空気が、わずかに変わった。


 オーレリアの瞳が細くなる。


 カルミリアが怒りで顔を歪める。


 キュプリアが薄く笑う。


 ヴィオレリアの紫の光が揺れる。


 ブランシェリアは黙ったまま、照準を移す。


 オニキリアの影が深くなる。


 オーレリア「そう。では、あなたは二度目の裏切りを選ぶのですね」


 シルヴェリアの表情が凍る。


 愛斗「違うだろ」


 俺は、オーレリアを見る。


 愛斗「シルヴェリアは何をした。答えろ。お前たちは、シルヴェリアを責めるだけで、何も言ってない」


 オーレリアは答えない。


 答えの代わりに、槍を構えた。


 愛斗「答えろよ。シルヴェリアは何をした!」


 オーレリア「あなたに答える義理はありません」


 その瞬間、攻撃が一斉に来た。


 オーレリアの槍が空間を裂く。


 天井から光の針が降り注ぐ。


 ブランシェリアの弾が、俺の首筋を掠める。


 カルミリアの炎が、瑠香の近くで爆ぜる。


 キュプリアの罠が床を走る。


 オニキリアの刃が影から突き出る。


 ヴィオレリアの笑みが、空間をぐにゃりと歪める。


 俺は動いた。


【光断一閃】を連続で放つ。


 空間の継ぎ目を斬り、針の軌道を逸らし、罠の線を断ち、炎の刃を受け流す。


 肩が痛い。


 息が苦しい。


 でも止まれない。


 シルヴェリアも撃った。


 彼女は、家族を撃っている。


 最も恐れていたことを。


 でも、それが唯一、今を守る方法だった。


 カルミリアが、壊れた脚でなお迫る。


 カルミリア「お前は、もうR.I.A.じゃない!」


 シルヴェリアの銃弾が、カルミリアの肩を撃つ。


 それでもカルミリアは止まらない。


 炎の刃が唸る。


 シルヴェリアが、わずかに後退する。


 その時、アズが床の光に気づいた。


 アズ「……そこ、あやしい」


 カプセルの台座。


 その下に、制御装置らしき光がある。


 キュプリアの罠とも、再起動シーケンスとも違う。


 何かが、そこからR.I.A.たちへ流れている。


 旧命令系統。


 さっき表示された言葉が頭をよぎる。


 愛斗「アズ、壊せるか!」


 アズは頷く。


 小剣を構えて、台座へ走った。


 シルヴェリアも、その流れに気づいたのだろう。


 銃口を制御装置へ向ける。


 だが、その瞬間、オーレリアが初めて声を荒げた。


 オーレリア「待ちなさい!」


 シルヴェリアの指が、引き金にかかる。


 けれど、撃てなかった。


 彼女の瞳が大きく揺れる。


 何かを思い出しかけたのかもしれない。


 あるいは、そこを壊せば姉妹たちを止めるだけでは済まないと、直感したのかもしれない。


 シルヴェリア「……ここは」


 愛斗「シルヴェリア!」


 その一瞬の迷い。


 カルミリアが、逃さなかった。


 赤い影が踏み込む。


 炎の刃が、シルヴェリアの腹部を貫いた。


 金属が金属を裂く音がした。


 黒い服の腹部が裂ける。


 赤い血ではない。


 銀色の液体と、細い光の粒が滲み出す。


 シルヴェリアの身体が、びくりと震えた。


 カルミリアが笑う。


 カルミリア「やっぱり、お前は甘いな」


 愛斗「シルヴェリア!」


 俺は飛び込んだ。


 剣を振る。


 カルミリアの腕を斬り飛ばすまではできなかった。


 だが、炎の刃の根元を弾き、シルヴェリアから引き剥がす。


 瑠香の【光衝弾】がカルミリアを押し返した。


 シルヴェリアが倒れる。


 俺は彼女を抱き止めた。


 冷たい。


 けれど、胸の奥の光は消えていない。


 シルヴェリアの銀色の瞳が、俺を見る。


 シルヴェリア「……愛斗」


 その声に答えようとした瞬間。


 背後から、赤い光が走った。


 カルミリアの切り離された刃が、ワイヤーに引かれるように飛んできた。


 狙いはシルヴェリア。


 俺は考えるより先に、彼女を押し出した。


 自分の身体を、盾にする。


 刃が、俺の肩を裂いた。


 さっき傷ついた場所の近くを、さらに深く。


 痛みが爆ぜた。


 視界が揺れる。


 膝が落ちる。


 瑠香の叫びが聞こえた。


 シルヴェリアの目が、大きく見開かれる。


 俺は無理やり笑った。


 愛斗「……お前は、守られたんだ」


 シルヴェリアの瞳が揺れる。


 淡い銀色の瞳から、透明な液体が一筋、こぼれた。


 涙。


 そう呼んでいいのかは分からない。


 彼女の体内から流れた冷却液かもしれない。


 損傷による漏出液かもしれない。


 でも、その時の俺には。


 それは、涙に見えた。

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