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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第67話:自分で決めたもの

 俺は【暁光(ドーン・)翔歩(ステップ)】で横へ飛ぶ。


 同時に、白い弾丸が俺のいた場所を貫いた。


 ブランシェリアの狙撃。


 狙撃手の位置は見えている。


 だが、彼女はこちらの移動先を予測して撃っている。


 こちらの能力が読まれている。


 レオヴァルトの時と似ている。


 いや、それより厄介だ。


 彼女一人が読んでいるのではない。


 オーレリアが全体を指揮し、ヴィオレリアが認識を狂わせ、ブランシェリアが射線を通してくる。


 連携が正確すぎる。


 まるで、一つの頭で六つの身体を動かしているみたいだった。


 俺はもう一度、空間を斬る。


 狙いはヴィオレリア。


 だが、斬撃は途中でずれる。


 ヴィオレリアがくすりと笑った。


 ヴィオレリア「ダメですよ。その力、綺麗ですけれど、波形が素直すぎます」


 愛斗「ネリュア!」


 ネリュアが杖を振る。


 緑の光が、紫の干渉へぶつかる。


 ネリュア「流れが、ねじれておる……! 完全には読めぬ!」


 それでも、彼女は必死に干渉の流れを探る。


 精霊術の淡い光が、ヴィオレリアの紫の紋様を一瞬だけ乱した。


 その隙に、俺は床へ斬撃を通す。


 キュプリアの罠の核が一つ砕けた。


 銅色の光が弾ける。


 キュプリア「へえ。そこを斬るんだ」


 その声には、驚きよりも興味があった。


 彼女はすぐに指先を床へ滑らせる。


 また別の罠が広がっていく。


 アズが、その光を見た。


 アズ「……そこ、だめ」


 小さな身体が、床を滑るように走る。


 アズは銅色の紋様の中心へ向かい、小剣を突き立てた。


 罠の核が割れる。


 キュプリアの眉がわずかに動いた。


 キュプリア「小さいのに、面倒ね」


 アズは怯えたように肩を震わせる。


 けれど、引かなかった。


 瑠香が【光衝弾】を放つ。


 ただ撃つのではない。


 光を広げ、視界を奪い、狙撃の軸をずらす。


 ブランシェリアの白い弾が、その光に一瞬だけ惑わされる。


 その弾道が、わずかに逸れた。


 俺は瑠香の隣へ着地する。


 瑠香「何してるのよ!」


 愛斗「お前を守ってる」


 瑠香は一瞬、言葉に詰まった。


 頬が赤くなる。


 だが、すぐに表情を引き締める。


 瑠香「じゃあ、ちゃんと守ってよ!」


 愛斗「ああ」


 オニキリアの影が、瑠香の背後で揺れた。


 俺が剣を振るうより早く、シルヴェリアの銃声が響く。


 銀色の弾丸が影を貫く。


 オニキリアは影の中へ消えたが、完全には避けきれなかったらしい。黒い髪の一部が床へ落ちる。


 シルヴェリアは、銃口を下げない。


 けれど、その手が震えていた。


 家族を撃った。


 その事実が、彼女の中に重く落ちているのが分かった。


 シルヴェリア「わたくしは……」


 カルミリアが叫ぶ。


 カルミリア「何を迷っている! お前は最初からそうだった! 自分だけ外へ出て、自分だけ自由になって、自分だけ選んだ!」


 シルヴェリアの銀色の瞳が、大きく揺れる。


 シルヴェリア「自由……?」


 カルミリアは炎の刃を構え、シルヴェリアへ突っ込む。


 カルミリア「お前だけが外に出た! お前だけが自由だった! お前だけが、私達を捨てた!」


 その言葉に、シルヴェリアが一歩後退した。


 命令系統が混乱している。


 感情の処理が追いついていない。


 彼女は、家族を相手に攻撃できない。


 守ることはできる。


 俺たちを庇うことはできる。


 けれど、自分の姉妹を壊すことだけは、身体が拒んでいるみたいだった。


 愛斗「シルヴェリア!」


 何を言えばいいのか分からなかった。


 命令じゃ駄目だ。


 俺が「戦え」と言えば、彼女は従ってしまうかもしれない。


 でも、それでは意味がない。


 これは彼女が選ばなければならないことだ。


 彼女の家族に刃を向けるのか。


 俺たちを守るのか。


 その両方を、どう抱えるのか。


 シルヴェリアは俺を見る。


 淡い銀色の瞳に、迷いが満ちている。


 やがて、彼女はゆっくりと言った。


 シルヴェリア「わたくしは……愛斗たちを、守ります」


 それは命令ではなかった。


 任務ログの読み上げでもなかった。


 彼女の意思だった。


 シルヴェリアの右腕が変形する。


 刃から、銃へ。


 銀色の銃口が、カルミリアへ向く。


 撃つ。


 だが、弾丸は肩を掠めるだけだった。


 急所を外している。


 無力化するための射撃。


 壊すためではなく、止めるための攻撃。


 カルミリアは止まらない。


 炎の刃がシルヴェリアへ迫る。


 俺は彼女の前へ出る。


 オーレリアの槍が横から飛んでくる。


 ブランシェリアの弾が首筋を掠める。


 ヴィオレリアの干渉で足元が歪む。


 全てを避けきれない。


 それでも、俺はシルヴェリアの前に立った。


 愛斗「今は関係ない!」


 俺はオーレリアの槍を剣で弾く。


 肩の傷が痛む。


 血が流れる。


 それでも声を出す。


 愛斗「過去に何があったのかは知らない! でも、お前は今、自分で決めたんだろ!」


 シルヴェリアが息を呑む。


 人間なら、そう見えた。


 機械なら、ただ処理が停止しただけなのかもしれない。


 でも、俺には息を呑んだように見えた。


 シルヴェリア「自分で……決めた」


 愛斗「ああ!」


 瑠香の光弾が、ブランシェリアの射線をずらす。


 アズが、キュプリアの罠の核を断つ。


 ネリュアが、ヴィオレリアの干渉をわずかに押し返す。


 俺はカルミリアの炎の刃を受け流す。


 その隙に、シルヴェリアが銃を構え直した。


 今度の弾丸は、カルミリアの脚部駆動部を撃ち抜いた。

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