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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第65話:六姉妹の断罪

 オーレリアの言葉が、ドームの中に落ちた。


 オーレリア「お前のせいで、私達は捨てられた」


 冷たい声だった。


 怒鳴ってはいない。


 責め立ててもいない。


 ただ事実を告げるように、淡々と。


 だからこそ、その言葉は鋭かった。


 シルヴェリアは、その場から動けなくなっていた。


 淡い銀色の瞳が揺れている。


 彼女の前には、目覚めた六人の姉妹たちが立っていた。



 R-01、オーレリア。


 金色の髪を持つ指揮官機。


 濡れた髪が肩に貼りついているにもかかわらず、彼女の立ち姿には一切の乱れがなかった。まるで目覚めた瞬間から、この場の全てを掌握しているようだった。



 R-03、キュプリア。


 銅色に近い茶色の髪を指で払いながら、皮肉げに口元を歪めている。視線はシルヴェリアではなく、床や壁や端末へ向いていた。戦場の構造そのものを読んでいる目だった。



 R-04、ブランシェリア。


 白い髪の少女は、カプセルの縁に静かに手をかけている。口数はない。ただ、細い瞳だけが冷たくこちらを見ていた。その視線は、まるで遠くの標的をすでに照準に捉えているみたいだった。



 R-05、オニキリア。


 黒い髪の少女は、いつの間にかカプセルの影から姿を消していた。さっきまでそこにいたはずなのに、もういない。黒い影だけが、床の上を静かに滑った気がした。



 R-06、カルミリア。


 赤い髪の少女は、怒りを隠そうともしなかった。燃えるような瞳が、シルヴェリアだけを見ている。今にも飛びかかりそうな姿勢で、歯を食いしばっていた。



 R-07、ヴィオレリア。


 紫の髪の少女だけは、薄く微笑んでいるように見えた。けれど、その笑みには温度がない。彼女の周囲では、端末の光が小さく乱れ、空気そのものがわずかに歪んでいた。



 六人の視線が、シルヴェリアへ向いている。


 再会の視線ではない。


 家族を見つけた安堵でもない。


 憎しみ。


 疑念。


 失望。


 それに近いものが、冷たい刃のようにシルヴェリアへ突き刺さっていた。


 キュプリアが鼻で笑う。


 キュプリア「お前が失敗したから、私達は眠らされた。よく戻って来られたわね、R-02」


 ブランシェリア「R.I.A.シリーズは、終わった」


 オニキリア「処分対象」


 影の中から、短い声だけが響く。


 カルミリアは一歩踏み出した。


 カルミリア「廃棄されたのは、お前のせいだ」


 ヴィオレリアが、楽しそうとも悲しそうともつかない声で続ける。


 ヴィオレリア「私達は、もうない。記録上も、存在上も。ねえ、R-02。あなたはそれでも、まだ自分だけ戻ってきたの?」


 シルヴェリアが、小さく首を振る。


 シルヴェリア「……違う」


 その声は弱かった。


 いつもの機械的な丁寧さが崩れている。


 まるで、言葉の組み立て方を忘れたみたいだった。


 オーレリアの金色の瞳が、冷たく光る。


 オーレリア「どこが違うと言う?」


 シルヴェリア「わたくしは……何も覚えていません」


 オーレリア「記憶がない。便利な言葉ね」


 シルヴェリアの指先が震えた。


 彼女は本当に覚えていない。


 それは俺たちも知っている。


 任務ログは破損していて、彼女の記憶には大きな空白がある。


 けれど、目覚めた姉妹たちにとって、それは言い訳にしか聞こえないのだろう。


 カルミリアが、赤い髪を振り乱して飛び出した。


 カルミリア「そんな言い訳で、許されると思っているのか!」


 彼女の腕から、赤い装甲が展開する。


 続けて、炎を帯びた刃が現れた。


 熱が空気を歪ませる。


 シルヴェリアへ向かって、カルミリアが一直線に迫る。


 速い。


 俺は即座に動こうとした。


 だが、その前にオーレリアが片腕を持ち上げる。


 彼女の右腕から、金色の槍が展開した。


 シルヴェリアの刃よりずっと大きく、重く、堂々としている。


 その槍の先端が、天井へ向けられた。


 次の瞬間、ドームの天井に埋め込まれた光点が一斉に輝く。


 オーレリア「外部個体、排除」


 無数の光の針が、天井から降り注いだ。


 愛斗「散れ!」


 俺は剣を振るう。


【光断一閃】で空間の継ぎ目を斬り、光の針の軌道をずらす。


 何本かは弾けた。


 何本かは床へ突き刺さる。


 金属の床に穴が開き、火花が散った。


 瑠香が咄嗟にアズの腕を引く。


 アズは小さく身体を沈め、飛んできた光針を紙一重で避けた。


 ネリュアは杖を振り、緑の薄い膜で数本の針を逸らす。


 だが、彼女の顔色は悪い。


 まだ消耗から戻っていない。


 ここで長く戦うのは危険だ。


 愛斗「シルヴェリア! まず下がれ!」


 シルヴェリアは動かない。


 カルミリアの炎の刃が、もう彼女の目前まで迫っている。


 シルヴェリア「……わたくしは」


 声が出ていない。


 思考が止まっている。


 その瞬間、床に銅色の光が走った。


 幾何学模様。


 罠だ。


 キュプリアが、いつの間にか床に指を触れていた。


 キュプリア「遅いのよ。解析完了」


 光の紋様が、俺の足元からシルヴェリアの周囲へ広がる。


 床がわずかに沈む。


 空間の流れがねじれる。


 このままでは、シルヴェリアの足元が拘束される。


 俺は剣を床へ向ける。


 愛斗「【光断一閃】!」


 斬撃が床の継ぎ目を裂く。


 キュプリアの罠の核が砕け、銅色の光が散った。


 だが、その一瞬を狙って、ドームの入口側から白い光が飛び込んでくる。


 ブランシェリアだ。


 いつの間にか、彼女はカプセルから離れ、射線を確保していた。


 ほとんど動いた気配がなかった。


 白銀の弾が、シルヴェリアの横を掠める。


 数センチずれていれば、頭部を撃ち抜いていた。


 瑠香「狙撃手! あの白い子、遠くから撃ってる!」


 アズが素早く視線を走らせる。


 アズ「……あそこ」


 けれど、敵はそれだけではない。


 シルヴェリアの背後の影が、濃くなった。


 黒い影が、床から立ち上がるみたいに形を取る。


 オニキリア。


 彼女はほとんど音を立てず、シルヴェリアの背中へ刃を伸ばしていた。


 俺は空間を斬る。


 刃の軌道をずらす。


 だが、オニキリアは衝突する前に、もう別の影へ溶け込んでいた。


 そこにいたはずなのに、いない。


 最も暗殺に近い機体。


 そう感じた。

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