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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第60話:家族の眠るドームへ

 俺たちは廃棄場を進み始めた。


 シルヴェリアは先頭に立とうとしたが、足元がわずかに揺れた。


 俺はまた支えようとする。


 シルヴェリア「問題ありません」


 愛斗「問題ある時ほどそう言うのは、人間も機械も同じなのか?」


 シルヴェリア「表現を修正します。問題はありますが、歩行は可能です」


 愛斗「よし、正直でよろしい」


 シルヴェリア「評価を確認しました」


 瑠香「なんでちょっと嬉しそうなの」


 シルヴェリア「嬉しい、とは現在照合中です」


 瑠香「……調子狂うなぁ」


 俺たちはドームへ向かって歩き出した。


 廃棄処分場の奥。


 錆びた鉄の山と、壊れた機械の谷を抜けて。


 途中、何度か処理機体が現れた。


 廃棄場の管理機械が、シルヴェリアの再起動を検知したのかもしれない。


 最初は三体。


 次に五体。


 その次は、もっと多かった。


 黄色い光が、影の中でいくつも揺れる。


 十。


 二十。


 それ以上。


 処理機体たちは、こちらを囲むように迫ってきた。


 俺は剣を構える。


 瑠香が【(フォトン・)衝弾(ブラスト)】を放つ準備をする。


 アズが小剣を逆手に持つ。


 ネリュアは消耗しているが、それでも流れを読もうとしていた。


 シルヴェリアは一歩前に出る。


 白金の髪が揺れる。


 黒い服の裾が、砂を払う。


 彼女の両腕から、銀色の装甲が展開した。


 腕から銃。


 指先から細い刃。


 脚部から小さな杭。


 背中側の装甲の隙間から、薄い翼のような放熱板。


 少女の身体が、戦うための形へ変わっていく。


 シルヴェリア「敵性反応、多数。戦闘機能、限定解除。連続稼働は推奨されません」


 愛斗「推奨されないなら無茶するな」


 シルヴェリア「愛斗の防衛を優先します」


 瑠香「私たちもいるんだけど!」


 シルヴェリア「瑠香、ネリュア、アズの防衛も優先します」


 瑠香「順番が気になる!」


 愛斗「そこ気にするのかよ」


 処理機体が一斉に動いた。


 そこから先は、戦いというより、処理に近かった。


 いや、処理という言葉は嫌だった。


 それでも、シルヴェリアの戦い方は、そう表現するしかないほど正確だった。


 銃弾がセンサーを撃ち抜く。


 刃が関節を断つ。


 ワイヤーが敵の腕を絡め取る。


 脚部の杭が地面へ打ち込まれ、彼女の身体をありえない角度で急停止させる。


 そこから再加速。


 別の敵の背後へ回り込む。


 無駄がない。


 迷いがない。


 敵を壊すためだけの動き。


 その美しさが、少し怖かった。


 だが、シルヴェリアは完全ではなかった。


 損傷が残っている。


 連続戦闘で、何度か動きが止まった。


 右脚が遅れる。


 左腕の刃が戻らない。


 照準が一瞬ぶれる。


 そのたびに、俺たちが隙を埋めた。


 瑠香の【光衝弾】がセンサーを焼く。


 アズが足元へ潜り、処理機体の関節を断つ。


 ネリュアが最低限の力で流れを読み、敵の進路を教える。


 俺が空間の継ぎ目を斬る。


 シルヴェリア一人なら、圧倒できたかもしれない。


 けれど今の彼女は壊れている。


 俺たちがいなければ、どこかで止まったかもしれない。


 そして、俺たちだけでも押し潰されていたかもしれない。


 だから、これは彼女だけの戦闘ではなかった。


 俺たち全員の戦いだった。


 処理機体の最後の一体が、背後からシルヴェリアへ迫る。


 シルヴェリアの左腕はまだ戻っていない。


 反応が遅れる。


 その瞬間、アズが飛び込んだ。


 アズ「……後ろ」


 小剣が、処理機体の膝裏にあたる部分を断つ。


 機体が崩れる。


 そこへ瑠香の光弾が撃ち込まれ、センサーが焼き切れた。


 俺が最後に胸部を斬る。


 処理機体は、音を立てて崩れ落ちた。


 砂煙が、ゆっくり晴れる。


 廃棄場に、静けさが戻った。


 完全な静けさではない。


 遠くでまだ、機械の低い音がしている。


 だが、少なくとも目の前の敵はすべて止まっていた。


 俺は大きく息を吐く。


 瑠香も膝に手をついた。


 アズは小剣を下ろし、少しだけ肩で息をしている。


 ネリュアは杖にもたれかかっていた。


 そしてシルヴェリアは、少し離れた場所で立ち尽くしている。


 彼女は倒れた処理機体を見ていなかった。


 視線は、その先。


 廃棄場の端にある、小さなドームへ向けられている。


 錆びた鉄の半球。


 赤い空を背負って、そこだけが妙に静かだった。


 シルヴェリアは、ゆっくり振り返る。


 シルヴェリア「あそこに、わたくしの家族がいます」


 その言葉に、俺たちは息を呑んだ。


 家族。


 暗殺兵器が口にするには、あまりにも柔らかい言葉。


 けれど、シルヴェリアの声は真剣だった。


 たぶん彼女自身も、その言葉の重さを完全には理解していない。


 でも、そこへ向かいたいという気持ちだけは確かなのだろう。


 俺はドームを見る。


 嫌な予感は消えない。


 むしろ強くなっている。


 最終処理。


 R.I.A.シリーズの再起動。


 未完了の任務。


 その先にあるものが、温かい再会だけで終わるとは思えない。


 それでも、行くしかなかった。

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