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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第54話:拾ってはいけない銀色

 銀色の女。


 その言葉が頭をよぎる。


 拾うな。


 近づくな。


 そう言われていた。


 だったら、すぐに離れるべきだ。


 分かっている。


 分かっているのに。


 俺の視線が、廃棄物の山の向こうで止まった。


 最初は、光だと思った。


 白い月の光が、金属片に反射しただけだと。


 けれど違った。


 それは髪だった。


 白金色の髪。


 砂と油で汚れているのに、それでも月明かりを受けて、淡く光っている。


 廃棄された機械の隙間。


 折れた金属板と、壊れた端末の山の中。


 そこに、少女の腕が見えた。


 細い腕。


 白い肌。


 人間のものにしか見えない。


 けれど、肩の付け根が裂けていた。


 その傷口から覗いているのは、血ではない。


 銀色の骨格。


 細い配線。


 淡く明滅する、小さな光。


 人間ではない。


 でも、人間にしか見えない。


 俺は息を呑んだ。


 瑠香も気づく。


 瑠香「……女の子?」


 アズが小剣を握り直す。


 アズ「……ちがう。けど、女の子」


 ネリュアが、薄く目を開く。


 その瞳に、驚きと警戒が混じった。


 ネリュア「命の匂いが、薄い。じゃが……完全に無いわけではない」


 俺は一歩、近づいた。


 瑠香が俺の腕を掴む。


 瑠香「待って。エルネストさん、言ってたよね」


 分かっている。


 銀色の女を見ても、拾うな。


 その言葉は覚えている。


 忘れたわけじゃない。


 けれど目の前にいるのは、女というより少女だった。


 廃棄物の山に半分埋もれ、片腕を投げ出し、眠るように目を閉じている。


 このまま放っておけば、二度と起きないかもしれない。


 いや、そもそも起きるものなのかも分からない。


 ロボットなのか。


 アンドロイドなのか。


 人間に似せて作られた何かなのか。


 分からない。


 分からないが、見捨てていい理由にはならなかった。


 愛斗「……確認するだけだ」


 瑠香「それ、絶対確認だけで終わらないやつ」


 愛斗「分かってる」


 瑠香「分かってるなら止まってよ」


 愛斗「止まれたら、たぶんここまで来てない」


 瑠香は唇を噛んだ。


 怒りたい。


 止めたい。


 でも、俺が止まらないことを知っている。


 そんな顔だった。


 俺はゆっくり、少女へ近づく。


 金属の破片を踏まないように。


 崩れそうな廃材に触れないように。


 一歩ずつ。


 近づくほどに、その姿がはっきり見えた。


 白金色の長い髪。


 黒いゴシック調の服。


 人形みたいに整った顔。


 閉じられた瞼。


 白い肌。


 そして、肩口から覗く機械の骨格。


 人間ではない。


 でも、壊れた機械だとも思えない。


 俺は膝をついた。


 少女の顔の前で、息を確認する。


 当然、人間のような呼吸はない。


 けれど、胸の奥で小さな光が点滅している。


 まだ、何かが動いている。


 まだ、完全には終わっていない。


 俺は小さく呟いた。


 愛斗「……生きてるのか?」


 答えはない。


 少女は目を閉じたまま動かない。


 ただ、胸の奥の小さな光だけが、弱く、弱く瞬いていた。


 背後で、遠くから金属を引きずる音がした。


 運転補助ロボットが、まだ探している。


 このままここにいるのは危険だ。


 けれど、この少女を置いていくこともできない。


 エルネストの警告が、頭の中で繰り返される。


 銀色の女を見ても、拾うな。


 拾うな。


 拾うな。


 俺は少女の細い腕を見た。


 白く、冷たく、傷ついた腕。


 そして、自分でも嫌になるくらいはっきりと理解した。


 たぶん俺は、こういう時に拾わない選択ができない。


 愛斗「……瑠香、手を貸してくれ」


 瑠香は、深く息を吐いた。


 呆れたように。


 怒ったように。


 それでも、彼女はすぐに俺の隣へ来た。


 瑠香「ほんと、愛斗ってさ」


 愛斗「悪い」


 瑠香「まだ何も言ってない」


 愛斗「だいたい分かる」


 瑠香「じゃあ、あとでちゃんと怒られて」


 愛斗「ああ」


 瑠香は少女の傷口を見て、顔をしかめる。


 アズもそっと近づいてきた。


 ネリュアは少し離れた場所で杖を握り、周囲を警戒している。


 俺たちは、廃棄物の山の中から白金髪の少女を引き出した。


 軽い。


 不自然なほど軽い。


 人間に似ているのに、人間の重さではない。


 けれど、腕の冷たさだけは妙に現実的だった。


 少女の胸の奥で、小さな光がまた一度、瞬いた。


 俺は彼女を抱え上げる。


 赤い空の下。


 二つの月の光が、その白金の髪を淡く照らした。


 銀色の女を見ても、拾うな。


 エルネストの言葉は、正しかったのかもしれない。


 けれど俺は、もう拾ってしまった。


 その時、少女の首元に刻まれた小さな文字が、月明かりに浮かび上がった。


 R.I.A. SERIES / R-02


 その先の名前は、汚れと傷でまだ読めなかった。

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