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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第47話:防衛機動体

 ガードロボが再び接近する。


 その動きは速く、正確で、無駄がない。


 まるで生きているかのようだった。


 けれど、生き物ではない。


 魔獣とは違う。


 魔獣は本能で動く。


 怒りで乱れる。


 痛みで怯む。


 恐怖で逃げる。


 このガードロボには、それがない。


 完璧に計算され、決められた行動を最適に実行する。


 その完璧さが、厄介だった。


 そして同時に、隙でもあった。


 俺は足を止める。


 ガードロボの刃が横から迫る。


 避ける。


 剣を振るう。


 狙いは腕の関節。


 剣先が装甲の隙間をかすめた。


 当たった。


 そう思った。


 だが、手応えはなかった。


 硬い。


 硬すぎる。


 刃は弾かれ、火花だけが散った。


 俺はすぐに後退する。


 愛斗「硬いな……!」


 瑠香が【(フォトン・)衝弾(ブラスト)】を放つ。


 光弾がガードロボの胸部へ直撃した。


 眩い光が弾ける。


 だが、ガードロボはわずかに姿勢を揺らしただけだった。


 瑠香「うそ、効いてないの!?」


 愛斗「効いてないわけじゃない。効きが悪いだけだ」


 瑠香「それ、ほぼ同じじゃない?」


 正直、ほぼ同じだった。


 ガードロボの胸部装甲は厚い。


 正面から壊すのは難しい。


 なら、背面の冷却装置か、関節か、センサー。


 薄いところを狙うしかない。


 俺は息を整える。


 ガードロボの動きを見る。


 右腕の刃。


 左腕の盾。


 脚部の滑走。


 胴体の回転。


 首の追尾。


 全部が滑らかだ。


 だが、胴体が回る瞬間だけ、背面の装甲がわずかに開く。


 熱を逃がしている。


 そこだ。


 愛斗「背中、狙う」


 瑠香「どうやって?」


 愛斗「強引に」


 瑠香「またそれ!?」


 俺は踏み込んだ。


 ガードロボが刃を振る。


 その軌道を読み、紙一重で潜る。


 盾が迫る。


 俺は【暁光(ドーン・)翔歩(ステップ)】で短く横へずれる。


 地下ほどではないが、この周辺にもまだ妙な干渉がある。


 長距離は無理だ。


 けれど、半歩分の隙間を盗むくらいならできる。


 視界がずれる。


 身体が滑る。


 ガードロボの側面へ出た。


 そのまま背後へ回り込む。


 ガードロボの背中に、格子状の冷却口が見えた。


 俺は剣を構える。


 愛斗「【光断(レイディアント・)一閃(セヴァー)】!」


 空間そのものを裂く感覚。


 刃が距離を無視して走る。


 だが、斬撃は冷却口の奥で鈍く弾かれた。


 完全には通らない。


 この機械の周囲にも、何らかの防御処理がある。


 それでも、無傷ではなかった。


 冷却口の一部が裂け、内部から白い蒸気が吹き出す。


 ガードロボの動きが、ほんの少しだけ鈍った。


 愛斗「効いた!」


 瑠香「ほんの少しじゃん!」


 愛斗「ほんの少しが命綱なんだよ!」


 ガードロボが振り返る。


 その刃が俺の頭上を薙いだ。


 俺は地面を転がる。


 砂と金属粉が口に入った。


 まずい。


 比喩ではなく本当にまずい。


 アズが動いた。


 アズ「……足、切る」


 彼女は小さく言い、ガードロボの足元へ駆け寄る。


 危ない。


 そう叫ぶ前に、アズはもう踏み込んでいた。


 ガードロボの脚部。


 滑走装置の付け根。


 装甲の合わせ目。


 彼女はそこを見ている。


 アズは小剣を低く構え、足元へ潜るように入った。


 ガードロボの刃が振り下ろされる。


 アズはぎりぎりで避ける。


 しかし完全には避けきれず、マントの端が切り裂かれた。


 アズの肩がびくりと震える。


 恐怖が、一瞬だけ彼女の動きを止めた。


 それでも。


 彼女は逃げなかった。


 小剣を脚部の隙間へ差し込み、ねじるように引いた。


 鈍い音。


 金属の内部で、何かが切れる感触。


 ガードロボの左脚が、不自然に揺れた。


 アズ「……ここ、止まる」


 彼女の言葉通り、ガードロボの滑走が乱れる。


 完全には止まらない。


 だが、踏み込みが鈍った。


 それだけで十分だった。


 ネリュアが浅く息を吐く。


 ネリュア「……妾は、これ以上は大きく動かせぬ。お主らに任せる」


 愛斗「ああ。休んでろ」


 ネリュアの顔色は悪い。


 感知だけでも相当な負担だったのだろう。


 彼女は杖を支えにしながら、壁際へ下がった。


 ガードロボが再び動く。


 左脚を引きずるようにしながらも、上半身はまだ十分に動く。


 右腕の刃が迫る。


 左腕の盾が視界を塞ぐ。


 壊れかけているのに、まだ強い。


 いや、壊れかけているからこそ、動きが荒くなっている。


 今までのような規則性が少し崩れた。


 読みづらい。


 機械は完璧な時より、異常を抱えた時の方が厄介なのかもしれない。


 瑠香が小さく呟く。


 瑠香「センサーなら……」


 彼女は右手をかざす。


 今度の【光衝弾】は大きくない。


 小さい。


 強すぎる光ではなく、細く絞った光。


 それがガードロボの頭部へ飛んだ。


 光がセンサーに当たり、白く弾ける。


 焼けた匂いがした。


 ガードロボの頭部が、ぎこちなく揺れる。


 視覚が乱れた。


 愛斗「瑠香、上出来!」


 瑠香「あとでちゃんと褒めてよ!」


 愛斗「今褒めただろ!」


 瑠香「足りない!」


 足りないらしい。


 要求が高い。


 でも、その要求に答えられる程度には生き残らなければならない。


 アズが再び動く。


 アズ「……肩」


 今度は腕の駆動部を狙うつもりだ。


 ガードロボの肩。


 装甲の重なり。


 刃を振るうために必ず動く部分。


 そこを止めれば、攻撃力を奪える。


 だが、近づくには危険すぎる。


 ガードロボの刃が、アズの目の前を通過した。


 空気が裂ける。


 アズの足が止まる。


 恐怖。


 当然だ。


 当たれば死ぬ。


 それを理解できないほど、彼女は鈍くない。


 むしろ理解できるからこそ、怖い。


 俺は叫ぶ。


 愛斗「アズ、無理するな!」


 アズは一瞬だけ、こちらを見た。


 震えている。


 泣きそうな顔をしている。


 それでも、彼女は小さく首を振った。


 アズ「……今、切らないと」


 彼女は再び踏み込んだ。


 小さな身体が、巨大なロボの懐へ飛び込む。


 アズはガードロボの盾を足場にし、肩の装甲へしがみついた。


 刃が迫る。


 俺が走る。


 瑠香の光がセンサーを焼く。


 その一瞬。


 アズの小剣が、肩の隙間へ突き立った。


 鈍い音がした。


 続けて、金属の内部で何かが千切れる。


 ガードロボの右腕が、途中で止まった。


 巨大な刃が、アズのすぐ横で震えている。


 数センチ。


 本当に数センチの差だった。


 俺はその隙に突撃する。


 このロボットは、生き物じゃない。


 だから、急所がない。


 心臓もない。


 肺もない。


 痛みに怯むこともない。


 殺す、というより、止める。


 機能を終わらせる。


 そのために必要な場所を斬る。


 俺は装甲の継ぎ目を見る。


 胸部の厚い板。


 その重なり。


 センサーの下。


 冷却口から漏れた蒸気で、内部の流れがわずかに見える。


 ここだ。


 俺は剣を振り上げる。


 愛斗「【光断一閃】!」


 今度は正面からではない。


 アズが止めた肩。


 瑠香が焼いたセンサー。


 ネリュアが見つけた冷却の乱れ。


 全部がつくった一瞬の隙間。


 そこへ斬撃を通す。


 刃が、装甲の継ぎ目へ入った。


 硬い。


 重い。


 けれど、通る。


 俺は歯を食いしばり、剣を押し込む。


 金属が裂ける音がした。


 ガードロボの胸部に亀裂が走る。


 内部の青い光が激しく明滅する。


 ガードロボが、悲鳴のような電子音を上げた。


 生き物ではない。


 分かっている。


 それでも、その音は悲鳴に聞こえた。


 俺は最後まで剣を振り抜く。


 青い光が消えた。


 ガードロボの巨体が、ゆっくり傾く。


 倒れる。


 地面が震えた。


 砂と錆びた粉が舞い上がる。


 アズが肩から転がり落ちた。


 俺はすぐに駆け寄る。


 愛斗「アズ!」


 アズ「……大丈夫」


 彼女は小さく答えた。


 マントの端は切れている。


 膝に擦り傷がある。


 けれど、大きな怪我はない。


 俺は大きく息を吐いた。


 瑠香も、胸に手を当てている。


 瑠香「心臓に悪すぎ……」


 愛斗「同感だ」


 ネリュアが壁にもたれながら近づいてくる。


 ネリュア「よくやったな」


 アズは、倒れたガードロボを見ていた。


 その表情は硬い。


 けれど、瞳に怯えだけがあるわけではなかった。


 怖かった。


 それでも動いた。


 その事実が、彼女の中に残っている。


 俺はアズの頭を軽く撫でた。


 アズは少し驚いた顔をする。


 けれどすぐ、頬を薄く染めた。


 アズ「……ごめん。ちょっと、いつもより怖かった」


 愛斗「仕方ない。あいつは化け物みたいだった」


 アズ「……でも、機械」


 愛斗「機械でも、怖いものは怖いだろ」


 アズはこくりと頷いた。


 俺は倒れたガードロボの残骸を見る。


 センサーが焼け、脚部が壊れ、胸部の装甲に深い裂け目が入っている。


 勝った。


 けれど、楽な勝ち方ではなかった。


 相手が人間じゃない。


 魔獣でもない。


 痛みも、恐怖も、迷いもない。


 だからこそ、こちらも機械のように考えなければならなかった。


 弱点を見抜き、動きを計算し、隙をつくる。


 それを四人で繋いで、ようやく止めた。


 俺は食糧庫の入り口を見る。


 厚い扉は、ガードロボが出てきた時のまま開いている。


 暗い内部から、冷えた空気が流れてきた。


 食料の匂いはしない。


 けれど、そこに何かがあるのは確かだった。


 愛斗「入ろう」


 瑠香「お願いだから、もう一体いるとかやめてね」


 愛斗「それは俺に言われても困る」


 瑠香「じゃあ世界に言っといて」


 愛斗「世界、聞いてるか? やめろ」


 返事はない。


 当然だ。


 この世界は、こちらの都合にはだいたい無言だ。


 俺たちは警戒しながら、食糧庫の中へ入った。

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