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ただの高校生だった俺は、異世界召喚で空間を斬る最強になったのに、帰ってみたら幼馴染が王家の姫になっていた  作者: NOVENG MUSiQ
第3章 赤い空の機械世界と銀色の心臓

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第46話:非常備蓄庫への道

 俺たちは、食糧庫へ向かった。


 第三管理区の南端。


 エルネストが示した地図では、そこに非常備蓄庫と書かれていた。


 食料がある。


 水があるかもしれない。


 そう聞けば、少しは足取りが軽くなってもよさそうなものだが、現実はそんなに優しくない。


 道中、何度も瓦礫の下を潜った。


 崩れかけた壁を避けた。


 半分埋まった道路を越えた。


 折れた鉄骨の間をすり抜けた。


 赤黒い空の下で、紫がかった光が廃墟の影を長く伸ばしている。


 見渡す限り、壊れた建物ばかりだった。


 それでも、第七管理区より人間の残り香がある気がした。


 道端に転がった玩具のような部品。


 文字の消えかけた看板。


 窓辺に置きっぱなしになった、植木鉢らしき割れ物。


 そこに植物はない。


 土だけが乾いて、ひび割れていた。


 ネリュアの足取りはまだ重い。


 さっき食べた分で少しは顔色が戻ったが、それでも本調子には遠い。歩くたびに、彼女の肩がわずかに上下している。


 アズも時折、息を切らしていた。


 瑠香は一見元気そうにしているが、口数はいつもより少ない。


 俺も、頭の奥が鈍かった。


 腹に食べ物は入った。


 けれど足りない。


 全然足りない。


 身体がまだ、足りないと訴えている。


 もっと休みたい。


 横になりたい。


 できれば風呂に入りたい。


 風呂。


 こんな世界で風呂を思い浮かべるあたり、人間の欲望はなかなか図太い。世界が滅びかけていても、体は温かい湯を求めるらしい。


 だが、今は風呂より食料だ。


 食料がなければ、いつか行き止まる。


 だから進むしかない。


 地図に示された場所は、遠目には建物に見えなかった。


 地下に埋め込まれた、堅牢な保管施設だった。


 地上に出ているのは、厚い金属の扉と、その周囲を囲む低い壁だけ。建物というより、地面に沈んだ金庫に近い。


 扉は黒ずんだ銀色をしている。


 腐ってはいない。


 だが、表面には赤茶色の錆が浮き、いくつもの傷が残っていた。


 誰かがこじ開けようとした跡。


 何かが爪を立てた跡。


 それとも、長い時間がつけた傷か。


 周囲の地面には、何かが這ったような跡があった。


 砂が細く削られ、同じ幅の線が何本も扉の前へ向かっている。


 アズがそれを見て、小さく呟いた。


 アズ「……機械」


 ネリュアが頷く。


 ネリュア「そうじゃな。あやつらの痕跡じゃ」


 俺は剣の柄に手をかける。


 愛斗「ここが食糧庫か」


 エルネストの地図では、ここは防衛機動体の配置区域と表示されていた。


 防衛。


 食糧庫を守る機械。


 人を守るために作られたはずの機械。


 それが、今は人が近づくことを許さない。


 ずいぶん皮肉な話だ。


 皮肉というのは、たいてい腹が減っている時に見ると腹立たしい。


 そう思った瞬間だった。


 扉の表面に、青白い光が走った。


 縦に一本。


 横に二本。


 幾何学模様みたいな線が浮かび上がり、金属の壁が左右へ滑る。


 奥から、影が現れた。


 それは、二メートルを超える防衛用ガードロボだった。


 人型に近い。


 だが、人間ではない。


 厚い装甲。


 複雑な関節。


 丸みを帯びた頭部。


 胸部には青いセンサーが三つ並んでいる。


 片腕には棒状の武器。


 その先端には、薄い刃が展開されていた。


 もう片方の腕には、盾のような装甲板。


 まるで、騎士を機械で再現したような姿だった。


 ガードロボは無言で進む。


 重い足音はしない。


 足の裏にある駆動装置が、地面を滑るように移動している。


 音がないのに重い。


 それが余計に気味悪かった。


 愛斗「来るぞ」


 俺は剣を抜く。


 瑠香が右手を上げる。


 アズが小剣を握り直す。


 ネリュアは杖を構えたが、その手には力が入りきっていなかった。


 ガードロボの頭部が、わずかに傾く。


 青いセンサーが俺たちを順番に捉えた。


 ガードロボ「未登録個体、確認。非常備蓄庫への接近を確認。防衛行動を開始します」


 愛斗「交渉の余地は?」


 ガードロボ「防衛行動を開始します」


 瑠香「ないみたいだね」


 愛斗「だろうな」


 ガードロボが刃を振り上げた。


 次の瞬間、滑るように距離を詰めてくる。


 速い。


 人間の踏み込みとは違う。


 腰の沈みも、肩の揺れも、呼吸もない。


 予備動作が薄すぎる。


 俺は横へ飛んだ。


 刃が地面を削る。


 火花が散り、石片が弾けた。


 その威力を見て、背筋が冷える。


 まともに食らえば、骨どころか身体ごと持っていかれる。


 俺は距離を取る。


 愛斗「ネリュア、見えるか?」


 ネリュアは目を細める。


 精霊術の淡い緑光が、彼女の瞳に宿った。


 ネリュア「構造は複雑じゃ……。命の流れではない。じゃが、理の流れはある」


 愛斗「弱点は?」


 ネリュア「関節の接合部。装甲の重なり。視覚センサーの隙間。それと背面に、熱を逃がす器官に似たものがある」


 愛斗「冷却装置か」


 ネリュア「おそらくの」


 それだけ分かれば十分だった。


 いや、十分ではない。


 十分ではないが、手がかりはある。

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