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39 UDON


 トントントン、と包丁を走らせる。

 雪ネギを刻むと、独特の青々しい香りが厨房に広がった。


「あとは、肉を軽く炒めておいて、と。お出汁もよさそうだね」


 ぐらぐらと煮立った鍋を覗いて私はうんと頷いた。


「おーい、シロや。コネコネできたかね?」


 居間に戻って、びっくら仰天。

 小麦粉であちこち白くなっているではないか。

 まるで家の中に雪が降ったみたいだ。


「タクナー! 見て見てほらー!」


 顔まで真っ白にしたシロがニッコニコでやってきた。

 その手には蛇みたいな白いものが握られている。


「これ、僕のうどんね!」


「いやいや、面白いけど、これは食っても美味しくならねえべ? 薄く延ばして細く切っといで」


「ちっ、めんどくせーな」


 シロはこたつ机の天板に蛇を寝かせると、叩いて潰して薄く延ばしてから包丁でぶちのめした。

 蛇、可哀想すぎない?


 現在、うどん作りの真っ最中。

 例のごとくレイエルもいるが、こちらはプロ顔負けの手際で麺を打っていた。


「まあ、こんなところだろう」


「レイエルにも長所があったんだね」


「馬鹿にするな。俺は長所の塊みたいなものだ。うどん作りなんて造作もない」


 ちょっと褒めただけなのに、レイエルは口元をニマニマさせている。

 ギルくらいポーカーフェイスなら少しは格好よく見えたかもしれない。

 残念な奴め。


「しかし、小麦粉と塩と水を混ぜただけだろう? このうどんとやら、本当においしいのか?」


「食えばわかるって」


 お湯が沸いたので、さっそく茹でてみる。

 私も元の世界で食べて以来10数年ぶりなので、茹で加減には自信がない。

 まあ、こんなもんだろとテキトーに湯を切って、スープを注いだお椀の中に麺をどぽんと投入する。

 肉を入れて、ネギを盛り、七味の代わりに塩胡椒を振ったら完成だ。


「ほい! アチアチ肉うどん、一丁上がり!」


「ふぉぉぉー!」


 湯気をもうもうと噴き上げるうどんを見下ろして、シロは尻尾をブンブン振り回している。


「のびるまえに食っちまいなよ」


「は? 言われなくても食うし! バカじゃないの!」


 シロは教えたばかりの箸をえっちらおっちら操って、


「あぢっ! でも、めっちゃうめえ!」


 と顔をほころばせている。

 その様子を物欲しそうな面持ちで眺めていたレイエルがこっちにやってくる。


「おい、タクナ。俺のはまだなのか?」


「今、茹でてるとこ。もう少し待ってな」


 子供みたいなリアクションをするレイエルがちょっと可愛い。

 などと思っているうちに、麺が茹で上がった。

 半分は私のお椀に盛って、もう半分はレイエルの分だ。

 具材とスープを入れれば完成である。


「いただきます」


「いただくぞ。匂いはうまそうだな、おお」


 レイエルはお上品にスープから味わっている。

 私は遠慮なく麺からいく。

 じれったい思いでフーフーしてから、一気にズルズルとすすり上げる。


「はふっ、はふっぁ……!」


 熱い。

 でも、はふはふ、……うまい!

 魚のお出汁がよく効いている。

 素人の手作りゆえに弾力もコシもあったもんじゃないが、それでも、うまいもんはうまい。

 久しぶりに食べたこの感じ、たまらん。


 うどんをズルズルさせる私に白い目を向けていたレイエルも、食べていくうちに気づいたらしい。

 すするのが一番おいしい食べ方である、と。


「なんだこれ、ほほう、うまいな」


 結局、レイエルはそのくらいしか感想を言わず、夢中になって口を動かし続けた。

 そして、お椀に口をつけてスープを一気飲みする私の真似をして、ごくごくと喉を鳴らし、


「ぶはー」


 と至福の吐息を漏らした。


「うどんはすげえだろ?」


「ああ、すげえ。こいつはうまいな。体も温まる。長いこと生きているが、初めての味だ」


 そうだろうとも。


「シロはどうだい? ……って、あんた何してるの?」


「お椀なめてる」


 よっぽどおいしかったらしい。

 シロはスープの残りをペロペロしている。

 お行儀悪すぎだろ。

 まあ、人目がなければ私もやっているかもしれないが。


「また作ろうね、うどん」


「賛成! レイエルも手伝えよ! おっさんなんだから!」


「ああ、こんなにうまいなら、作る手間なんて微々たるものだな。……おいシロ。おっさんなのは関係ないだろ」


 さーて、さてさて、腹も膨れたことですし。

 私は大冒険に出発するといたしますか。


ここまで、読んでくださった皆様、ありがとうございます!

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