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38 スタメン発表2


「いやァ、光栄ってもんだぜ! 今話題のお前さんに選んでもらえるなんてなァ!」


「本当ですね。でも、よかったんです? 僕らには迷宮主に挑めるほどの実力はありませんよ」


 グラーシュとランズは嬉しさ半分、恐縮半分といった反応だった。


「オレは中三級でランズは下一級だ。自慢じゃねえが、たいした役には立てねえぞ?」


「いいのよ。どうせ補助役なんだし、あたしたちは閃光玉投げたりポーション投げたり油売ったりしてりゃいいのよ。ちぇ。なんであたしがサポーターなのよ。テンション下がるわね……」


 主役を奪われたユミエが投げやりになっている。

 私としては高みの見物ができるポジションだから不満はない。


『ねえ、ランズ』


 私は気になっていることを尋ねることにした。


『セリーの説明に「門番型の迷宮主」ってあったでしょ? あれ、どういう意味?』


 迷宮主くらいは知っている。

 その名のとおり、ダンジョンの主。

 いわば、ボス魔物だ。

 門番型というのは分類だろうけど、ほかにもタイプがあるのだろうか。


 ランズはズレてもいない丸眼鏡を正した。


「迷宮主はいくつかの型に分類できるんですよ。代表的なのが、国王型ですね。まるで玉座に座るかのようにダンジョンの最奥に構えているんです。それに対して門番型はダンジョンの入り口付近に待ち構えています」


 ほかにも徘徊型の迷宮主などがいますね、とランズは付け加えた。


「国王型はダンジョンの核――つまり、コアを守っていると言われています。その理屈で言うと、門番型はダンジョンそのものを守護しているわけですね」


『一番厄介なのはどのタイプなの?』


「間違いなく門番型でしょうね。ダンジョンはコアを失うと衰退してしまうので、宝物や魔石の類も採れなくなってしまいます。ですから、普通はコアのある最奥部まで行くことはないんです。国王型と戦うようなことにはならないわけですね。徘徊型もよほど運が悪くない限り、鉢合わせすることはないでしょう。しかし、門番型は違います」


『ダンジョンに入るためには戦わざるを得ないわけか』


「そういうわけです」


 倒さなければ先へは進めないボスキャラか。

 いかにもダンジョンって感じだ。


「ボス部屋ってのはよォ、いったん入っちまうと入口が閉ざされちまうんだよなァ。狩るか狩られるか。どっちかがくたばるまで進むも退くもままならねえ」


 グラーシュは腕をさすっている。

 トラウマでも思い出しているみたいだ。


「それもよォ、厄介なことに迷宮主ってのはある程度時間がたつと、どこからともなく湧いてきやがるんだ」


 いわゆる、リスポーンである。


「そうすると、ダンジョンの奥に入った冒険者が帰り道でまた対峙することになっちまう」


『そっか。それを避けるために、冒険者が一斉に押し入るんだ』


「その通りです。大勢でサッと行ってサッと帰る。これが門番型迷宮主を頂くダンジョンの攻略法です。タクナさんは飲み込みが早いですね」


 ランズが感心したところで、『流麗なる黄薔薇(リューナローゼ)』の面々がやってきた。

 リーダーのロズフィールは両手に花状態でムカムカするような笑みを浮かべている。


「やあ、ユミエ。キミは今日も美しいねえ。どうだい? ボクのコレクションに加わるつもりになったかい?」


 コレクションとは、おそらくパーティーメンバーのことだろう。

 ハーレムと呼んだほうがいいかもしれないが。


「30かそこらの青ガキの分際で、このあたしに気安く声かけてんじゃないわよ」


 ユミエは素っ気ない。

 ロズフィールは、私の目には20歳前後に見える。

 ユミエは200歳くらいだけど、見た目年齢はどっこいどっこいだ。

 エルフ族同士だと、30でもケツの青いガキという価値観らしい。


 ロズフィールはムッとしたようだった。

 両手の花を振り払ってユミエに近づくと、シャープな顎をクイッと持ち上げた。

 顎クイだ、顎クイ。

 少女漫画で見る奴だ、ひゃー。


「惜しいねえ。キミほどの容姿ならボクのパーティーに入る資格があるというのに」


「はん。金を積まれても願い下げだわ。あんたみたいな雑魚に用はないってのよ」


「その高飛車なところもたまらないねえ。力尽くでねじ伏せて屈服させたくなるよ」


「できもしないこと、ほざいてんじゃないわよ」


 よく言ったユミエ。

 ちょっと顔がいいからって上から目線で絡んでくるカス男には唇の代わりに拳で返事してやればいいのだ。

 ボッコボコだ、シュッシュ。


 ユミエは手を払いのけると、私の腕に絡みついてきた。


「こんな雑魚ほっといて行くわよ、タクナ」


「待ちたまえよ」


 ロズフィールは、今度は私に詰め寄ってきた。

 おっ、顎クイか?

 顎クイなのか!?


 ちょっとウキウキして待っていたのに、何もされなかった。

 ロズフィールはニタァとした顔で指を3本立てると、


「3度だ」


『何が?』


「わからないか? キミは今の一瞬で3度命を落とした。まあ、ボクが剣を抜いていたらの話だが」


『ああそう』


 龍級冒険者になれば、そういうこともできるのかもしれない。

 でもな、カッコつけているところ悪いが、あんたが剣を抜こうが屁をここうが私が死ぬことはありえないのだよ。

 なんせ、本体はこたつの中でグースーからのピーだからね。


「まあ、せいぜいこき使ってあげるよ」


 ロズフィールは私の鎧に黄薔薇を挿すと、肩で風を切って去っていった。


『鼻持ちならない奴だったね』


「エルフはモテるもの。たまに、ああいう勘違い野郎が生まれちゃうのよ。キモいわよねー」


『まったくだ』


 出発は明後日の八の刻です、とセリーがアナウンスしたところで、その場はお開きとなった。


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