みんな揃って
「さて、全員無事に奴(猫塚)から切り抜けた。あとは楽勝。さ、みんな昇降口をめざそう!」
おー! と威勢よく拳を突き上げ
いざ進まんとした東尾
「おい、なにが全員だ竜。俺を忘れるなってんでしょーが!!ひでぇっての!!」
――…の肩をガシッと掴んで抗議するのは
西崎その人だった。
「なんだ、もう来てたの。猫塚くんはどうなったの?まさか怒らせたんじゃないだろうね
ぼくはいやだよ、せっかく突破口が開けたんだ
あぁ君は良い犠牲だった、必要だったんだ、ぼくら4人が生きて帰るにはね
ありがとう、ありがとう、君のことは忘れない…西崎虎太…」
「西崎さん…(乱暴極まりない人だったけれど)」
「おい、勝手に殺すな。こっちをみろ 犬てめぇはぶっころす」
「俺の扱い…」
「まーまぁまぁまあ、取り敢えずこれでみんな喧嘩に巻き込まれず無事だったわけだよ?
…犬田くんには申し訳ないけれど、ここで騒動起こすわけにはいかない。
わかってくれるね?」
ポンと肩に置かれた東尾の手が
犬田を眼鏡越しにみつめる瞳が
「そんな、当然だ… もとはといえばぼくのせいで皆を巻き込――」
「シッ――。 それ以上は、言わなくていい。
みんな一緒なんだ。みんなきみを助けたくてここまできた。
これはぼくらの意思、総意だよ。
だからみんなで帰る。そうだよね?」
紡ぎ出される優しいことばが
「ありがとう、えっと、東尾くん…」
「竜で、いいよ」
犬田を心から安堵させていた。
「すとーーーッぷ!!! なにいい話風に話まとめてんですかーー ばかかてめぇ!?
いいかばか犬けんちゃん、お前はこいつに良いように丸めこまれてるんだわかればか」
「チッ…」
「そんなバカバカ言わないでください。
それに俺は復讐とか望んでない。
ただ、家に帰れればいい(東尾くんから舌打ちが聞こえたのは気のせいだよな)」
「おぉい、おまえそれでくやしくねぇーんですか!?」
「なぁ。犬田がこう言うんだ。
気持ちは分かるが、本人が望んでない以上
俺等がぶん殴ったところでどうしようもないだろ。
狡猾そうな男だ。それで更生するとも思えないしな。
こいつと俺等と学校違うこと、忘れたか? いつも傍にいられるわけじゃない」
「あ、ありがとう、南原(今すげぇ喋ったぞこいつ)…お前の言う通りだ。
…ということで西崎さん、気持ちはうれしいですけど、ぼくは大丈夫です」
「……………」
「わかってあげなよ、っていうかもう意地になってるでしょ西崎。
ねね、黙ってないで北見くんも何とか言ってあげてよ(ただでさえ影が薄いんだってばキミ)」
東尾の一言で
4人の視線が一気に北見に注がれる。
今まで怖いくらいに黙っていた北見は
ゆっくりと顔を上げると、犬田を見つめてこう言った。
「………犬田くん、俺たちの学校においでよ」