第6話「魔女と街」その一
街の中へ入ると、たくさんの人が行き交っていた。
「わぁ~! 人がいっぱいだな!」
フィアが周囲を見回す。
「街に来るのも久しぶりですわね」
「そうですね」
「私は、こういう場所好きだよ~」
ラファールが楽しそうに飛び回る。
「こらこら、飛びすぎないようにね」
「は~い!」
「まずはパンを買おうか」
リーネがそう言うと、皆で店へ向かう。
パンを買い、必要な食材もいくつか購入する。
「これで、しばらくは大丈夫ですね」
サントリナが荷物を持ちながら言う。
「うん。ありがとう、サントリナ」
「いえ、これも修行ですから」
「本当に真面目だねぇ」
リーネは苦笑する。
「それにしても、せっかく街に来たんですし、少し見て回りませんか?」
シレーナが周囲を見ながら言う。
「そうだな。師匠と一緒に街を歩くなんて、あんまりないしな!」
「私も賛成~!」
「じゃあ、少しだけね」
皆で歩いていると、遠くに大きな建物が見えてきた。
「あれは……」
シレーナが目を向ける。
「冒険者ギルドだね」
リーネが答える。
「冒険者ギルド!」
フィアの目が輝いた。
「……少し、寄ってもいいかな」
リーネがそう言う。
「もちろんですわ!」
「私も見てみたいです!」
「私も~!」
「じゃあ、少しだけ寄ってみようか」
「やった!」
フィアが嬉しそうに声を上げる。
皆で冒険者ギルドへ向かう。
扉を開けると、そこにはたくさんの冒険者たちがいた。
「おぉ……」
フィアが周囲を見回す。
「結構、人が多いですね」
「そうだね。依頼を受けたり、報告したりする人が集まる場所だからね」
「師匠は、ここに来たことがあるんですか?」
サントリナが尋ねる。
「昔は何度かね。魔物の素材を売ったり、依頼を受けたりしていたよ」
「師匠も依頼を受けていたんですか!?」
フィアが驚く。
「もちろん。私だって昔はいろいろとやっていたからね」
「なんだか意外ですわ」
「そうかな?」
「はい。師匠はずっと丘の上で暮らしている印象がありますので」
「まぁ、それは否定できないね」
リーネが苦笑する。
「それより、あっちを見てみようよ~」
ラファールが掲示板を指差す。
そこにはたくさんの紙が貼られていた。
「魔物討伐、薬草採取、護衛……いろいろありますね」
シレーナが一枚ずつ確認する。
「これが冒険者の仕事なんですね」
「そうだね。簡単なものから危険なものまで、いろいろあるよ」
「私、討伐依頼をやってみたいな!」
フィアが目を輝かせる。
「フィアはすぐに戦いたがるね」
「だって、修行にもなるだろ?」
「まぁ、そうだけどね」
リーネは笑う。
「ですが、今は師匠と一緒ですし、今日は受けないんですよね?」
サントリナが確認する。
「うん。今日は買い物が目的だからね」
「そうか……」
少し残念そうにするフィア。
「でも、修行はできたでしょう?」
「……あぁ!」
フィアが笑顔になる。
「さっきのグランドモールだな!」
「そうだね。みんなの連携も見られたし、十分な修行になったと思うよ」
「ありがとうございます♪」
シレーナが嬉しそうに微笑む。
「そういえば、ここには卒業した師匠の弟子たちや修行中の師匠の弟子たちもいるんですよね」
「そうだね」
「では、もしかしたら私たちと同じような人もいるのでしょうか?」
「さぁ、どうだろう」
リーネが答える。
「冒険者の中には、戦いや魔法の修行をしながら仕事をしている人もいるからね」
「なるほど……」
サントリナが掲示板を見る。
「私たちも、こういうところで修行することがあるのでしょうか?」
「必要ならね」
リーネは弟子たちを見る。
「修行の方法は、人によって違うからね。ずっと私のそばで修行する必要はないよ」
「じゃあ、私もいつか冒険者の仕事をしてみたい!」
フィアが言う。
「その時は、ちゃんと自分の力を考えて依頼を選ぶんだよ」
「わかってるって!」
「本当かなぁ……」
リーネが苦笑する。
「ふふっ」
シレーナが笑う。
「フィアらしいですわ」
「私も冒険者やってみたい~!」
「ラファールは飛んでいなくならないようにね」
「大丈夫だよ~!」
「それが一番心配なんだけどなぁ……」
リーネはそう言いながら、ギルドの中を見回す。
「いない、か?」
そう言いながら、カウンターのほうへ歩く。
「師匠?」
フィアが気づくが、リーネはそのままカウンターの受付まで来た。
「いらっしゃいませ! あ! 紐操りの魔女様! どのようなご用件で」
「あぁ、ここに修行させている子たちや、卒業した子たちはいるかな?」
リーネはそう、受付嬢に聞く。
「弟子の皆さんは今、依頼で出払っておりまして」
「そうかい。元気にしてるなら、それで」
そう言いながら、リーネは去ろうとする。
「あの、伝言がありましたら、お伝えしますが」
「いや、いいよ。あの子たちの道はあの子たちの道だ。それに、卒業した子たちの道に、私が口を出すわけにはいかないよ」
「それに、私の元を離れて外で修行したいと言った子たちもそうだ。自分で決めた道なのだから、私があれこれ干渉するつもりはない」
「そうですか、わかりました」
「でも、その道を踏み外し、迷っているのならば、私は遠慮なく介入する」
リーネは小さくそう言った。
「?……今、何か」
「いや、なんでも」
そう言いながら、弟子たちの元へ向かう。
「もう! 師匠~! どこ行ってたの~~!」
ラファールの頬が膨れている。
「あぁ、すまないね。少し、弟子の子たちが気になってね」
「そうなんですね。私も師匠の他の弟子たちに会ってみたいです」
「そうだね。いつか会わせよう」
「それは楽しみですわ」
「あぁ!」
「それじゃあ、そろそろ出発しよう」
「あの」
フィアがリーネを引き止める。
「もう少し街を見に行きたいんだ。いいか?」
「あぁ、もちろん……皆もいいかな」
「はい!」
「もちろんですわ」
「お~~!」
「それじゃあ、街を探検しよう」
そう言いながら、ギルドを出る。
誰かとすれ違う。
「……? ……今の師匠?」
その声はリーネに届かなかった。
その影はリーネたちを見る。
「やっぱり、師匠だ」




