第4話「魔女と弟子」その四
「さて、そろそろ朝食にしよう」
「は~い!」
「お! いいね」
「はい、師匠♪ 遅くなると思い、先に私が作っておきましたわ」
「そうかい、シレーナ、ありがと」
そう言い、リーネはシレーナを撫でる。
「えへへ~」
「あぁー! ずるい~! 私も~~!」
ラファールが飛び付いてくる。
「はいはい、わかっているよ」
「………」
フィアが物欲しそうに見ている。
「フィア、君も撫でられたいかい?」
「え!? い、いや、私は……」
リーネはフィアの頭にポンと手を置き、
「我慢しなくていい、君は私の弟子なのだから」
ナデリナデリ。
「はい!」
「ふふっ、まだまだ、子供だね……」
「あ、そういえば、サントリナは?」
フィアが疑問に思う。
「わかんな~い」
「いつも一人でどこかに行くので心配ですわ」
「安心して、あの子の場所は私が知ってる……少し出掛けるよ」
そう言い、リーネは出る。
「「「は~い」」」
弟子たちの返事が聞こえてきた。
リーネは家の裏の、岩がごつごつしている場所に来た。
「……さて、ここだろう? サントリナ」
そう呼び掛ける。
しばらくして、
「師匠?」
声がした。
リーネはそこに向かう。
「やはりここか、サントリナ」
そこには、杖を前に構え、魔法陣を構築しているサントリナの姿があった。
「また、防御魔法の訓練かい?」
「はい! 皆さんの迷惑にならないよう、離れで」
「別に迷惑じゃないけどね。そして、君は少し....固いな」
「?……防御魔法は固ければ良いのでは?」
「そうじゃない、魔力の流れだよ。それが固いと言っている」
「で、ではどうすれば!」
「まずは、その魔法を一度解除してごらん」
「はい」
サントリナは魔法陣を消す。
「では、もう一度作ってみて」
「はい!」
サントリナは再び杖を構える。
「今度は、魔力を一気に流さないで。ゆっくりと流してみるんだ」
「ゆっくり……」
「そう。防御魔法は、ただ硬くするだけじゃない。相手の攻撃を受け流すことも大切なんだ」
「受け流す……」
サントリナは集中する。
「そう、そのまま……」
魔法陣が少しずつ形を変えていく。
「どうでしょうか?」
「うん。さっきよりずっと良くなったよ」
「本当ですか!?」
サントリナの顔が明るくなる。
「ただ、まだ少し力が入りすぎているね」
「むぅ……」
「そんなに焦らなくても大丈夫。君は真面目だから、何でも完璧にしようとしすぎるんだよ」
「……そう、でしょうか?」
「そうだよ」
リーネは微笑む。
「魔法も同じ。失敗してもいい。何度も試して、自分に合ったやり方を見つければいいんだから」
「……はい!」
サントリナは杖を握り直す。
「もう一度、やってみます!」
「うん。頑張って」
サントリナは深呼吸をする。
「……ゆっくり……」
先ほどまでのように、一気に魔力を流さない。
少しずつ。
魔力を流し、魔法陣を形作っていく。
「そうそう。その調子だよ」
「……!」
魔法陣が淡く光る。
「では、攻撃してみるよ」
「はい!」
リーネが紐を袖から取り出す。
「いくよ」
シュッ!
紐がサントリナへ向かって飛んでいく。
「っ!」
サントリナは反射的に魔力を強くする。
「――違うよ」
「え?」
「力を入れすぎないで。そのまま受け流して」
「……はい!」
サントリナはもう一度集中する。
シュッ!
紐が魔法陣に触れる。
「……っ!」
魔法陣がわずかに揺れ、紐の軌道が横へと逸れた。
「……できた」
「うん。今のは良かったよ」
「本当ですか!?」
サントリナの表情が明るくなる。
「まだ完璧じゃないけどね」
「はい!」
「うん」
「今度は、焦らずに続けてみます!」
「それでいいよ」
リーネは微笑んだ。
「さあ、そろそろ朝食が冷めちゃうかな」
「……あっ!」
サントリナが慌てて立ち上がる。
「皆さんを待たせてしまいます!」
「ふふっ。そこも少しずつ直していこうね」
「はい!」
そうして、二人で家に戻った。
家の扉を開けると、
「あ♪ 帰ってきましたわ」
「もうおそ~い!」
「おや、先に食べててもよかったのに」
「師匠とサントリナが戻ってなかったからな、待っていたよ」
「み、皆さん、すみません!」
「なぜ謝る?」
「え」
「サントリナは、少し責任感が強すぎるのよ~。友達や師匠を待つことなんて、苦でもないですわ」
「そ~だよ~~。早く座って~~!」
「……はい!」
「さて、朝はパンか」
「はい、少なくなっていましたから」
「おや、では、街に買いに行かないとね」
リーネがそう言うと、みんなの目が輝く。
「「「「街!!」」」」
「おや、どうしたんだい?」
「師匠! 私も街に連れてってくれ!」
「私もですわ」
「ずる~い! 私も~~」
「よ、よろしければ、私も」
「ふふっ、かわいい弟子たちだね。じゃあ、みんなで行こう」
「「「「は~い!」」」」
こうして、お出かけの約束ができた。




