第3話「魔女と弟子」その三
翌朝。
丘の上の家。
「ふぁ~……眠い」
フィアが大きなあくびをしながら、外に出てきた。
「おはよう、フィア」
「おはようございます、師匠」
そこには、すでにリーネが立っていた。
「今日は早いね」
「うん。昨日、師匠にもっと強くなりたいって言っただろ?」
「そうだったね」
「だから、今日はいつもより早く起きて、修行しようと思ったんだ!」
フィアは木剣を握りしめる。
「今日は何をするんだ?」
「そうだね……今日は、強化魔法の基礎をもう一度やろうか」
「基礎……?」
「うん。強くなるためには、基礎が一番大切だからね」
「わかった!」
フィアは元気よく返事をした。
「それじゃあ、始めようか」
「おう!」
朝の丘に、二人の声が響き始めた。
「んあ~~」
ラファールが目をこすりながら、眠そうにやってきた。
「おはよう♪ ラファール♪」
「あれ? シレーナだけ~? みんなは?」
「師匠はフィアの修行に付き合っているはずですわ♪ サントリナはどこかは知りませんが」
「そ~なんだ、私も行く……」
「ふふっ、まずは顔を洗ってらっしゃい♪」
「は~い……」
ラファールはあくびをして、顔を洗いに行った。
道場にて。
「そうそう、集中して、練り上げるんだ」
「はい!」
フィアは木剣を持ち、集中する。
「落ち着いてね。どんな戦いでも、落ち着いて集中することが肝心だ。それと、緊急時に突然集中するのは難しい。だったら、どうする?」
「……戦っているときの集中力を、強化魔法に使います」
「そう。完璧だね」
「じゃあ、次は実際に動いてみようか」
「はい!」
フィアは木剣を構える。
「まずは身体全体に強化魔法を行き渡らせるんだ」
「こうか?」
フィアの身体に、淡い光がまとわりつく。
「うん。でも、少し力みすぎているね」
「え?」
「強化魔法は、ただ力を込めればいいわけじゃないよ。身体の動きに合わせて、必要な場所に必要なだけ力を使うんだ」
「必要な場所に……」
フィアはもう一度、集中する。
「そう。まずは足」
フィアの足に力が集まる。
「次に腕」
今度は腕へと力が移っていく。
「そして、身体全体」
「……!」
フィアはゆっくりと木剣を振る。
ブンッ!
「どうだ?」
「さっきより自然になったね」
「本当か!?」
「うん。でも、まだまだだよ」
「えぇ!?」
「強化魔法は、身体を強くするだけじゃない。自分の身体をどれだけ理解しているかも大切なんだ」
「身体を理解する……」
フィアは自分の手や足を見つめる。
「難しいな……」
「だから、何度も繰り返すんだよ」
「……わかった!」
フィアは木剣を握り直す。
「もう一回お願いします!」
「もちろん」
朝の丘に、木剣を振る音が何度も響いていた。
「はぁ……はぁ……どうだ!」
ブンッ!!
と、衝撃波が飛ぶ。
「うん、良い感じだね……身体は、どうだい?」
「はい、少し軽いような、重いような……そんな感じだ」
「まだ、身体が慣れていないんだ。だが、続けることは良いことだ。自然と身体が覚え、スタミナもつく」
「はい!!」
「お~~、頑張ったね~」
「うふふっ」
後ろから声がする。
「おわぁ!? お前ら!? いたのか!」
振り向くと、ラファールとシレーナが座っていた。
どうやら邪魔しないよう、座って見ていたようだ。
「気づかなかったのかい?」
「めんぼくない……」
フィアはしょんぼりする。
「はははっ、それだけ集中していたのだろう。気を病むことはない……今後も、頑張れ。いつでも見ている」
「ッ……はい!!」




