第2話「魔女と弟子」その二
ここは、とある国のとある丘の上の家。
そこには『紐操りの魔女【リーネ・フィーネル】』と弟子たちが暮らしていました。
バシィッ! バシィッ!
と、ぶつかり合う音が響く。
「ふむ……もう少し早くしてもいいかな」
リーネ・フィーネルは、今日も弟子たちを稽古していた。
白いローブの長い袖に隠してある紐をほどき、何本ものムチのように変え、弟子に猛烈な攻撃を浴びせる。
弟子の少女は木剣で対応する。
「っ! くぅ!!」
バシィッン!!
「わぁっ!? ッ!」
木剣が弾かれ、紐が刃のようになって弟子の首元に刺さる。
「参りました」
「あぁ、良い動きだったよ。君はもう少し動きに無駄を作りすぎないように。そうすれば、スタミナも持つだろう」
「師匠が強すぎるんだよ!」
「はは」
彼女は『リガトゥーラ・フィア』。
赤いリボンに白髪の、人族の元気で少し男っぽい口調の少女だ。
【クラス】は『騎士』で、『騎士』は無属性魔法の派生型「強化魔法」が得意。
「そろそろ休憩にしようか」
フィーネルは紐を袖にしまいながら言う。
「はい!」
「良い返事……そういえば、みんなは?」
「皆さんは森に魔物を狩りに行くとか」
フィアが羨ましそうに語る。
「君も行きたかったのかな? フィア」
「い、いえ! この時間に稽古をつけてほしいって、言ったのは、私なんだから!!」
「そうかい。行きたいように見えたが」
「ぐぬぬ、どうして師匠はなんでも見透かしてくるんですか!」
「そうだね、勘、かな?」
「なんですかそれ~」
フィアが背中をポカポカしてくる。
「あはは、君はかわいいな~」
「師匠~~!」
そんな声が外にも聞こえていた。
「師匠たち、楽しそ~~」
「えぇ、ほんとね~」
「そうは聞こえませんよ……」
複数の影が巨大な獣を持っている。
「まぁいいか、師匠~~! 戻りました~~!!」
そう、少女は叫ぶ。
「おや、戻ってきたみたいだ」
そう言い、フィアとフィーネルは外に出る。
「おぉ、大物だね、シレーナ、ラファール、サントリナ」
「はい! 大物でした!」
杖を持った紫髪の彼女は『アルトラ・サントリナ』。
とても責任感の強いエルフ族の女の子で、【クラス】は『魔女』。
無属性魔法の派生型の防御系が得意。
「戻りましたわ」
白い服と長い黒髪の少女は『マリーナ・シレーナ』。
お上品で礼儀正しい人族の女の子。
【クラス】は、とても珍しい『魔法騎士』。
これは二つの才能がある、ということ。
得意属性は六つあるうちの一つ、雷属性が得意。
「褒めて褒めて~~!」
この空を飛んでいる薄い緑色の髪の少女は『フェーダー・ラファール』。
獣人系のハーピー族の女の子で、【クラス】は『騎士』の派生型『武闘家』である。
「これは、ジャイアントボアか」
フィアが3人の仕留めた獲物を見ながら言う。
ジャイアントボア……高ランクの冒険者でも手こずる魔物のはず……。
いやはや、すごいね。
「このままだと、家に入らないし、解体するか」
「まぁ♪ 解体ショーですの?」
「わ~~い! すごく見たい!!」
「師匠、私も見てみたいです」
「私もだ」
4人の目が輝く。
「わかってるよ」
そう言うと、私はジャイアントボアの前にしゃがみ込む。
「それじゃあ、始めようか」
「はい!」
「楽しみですわ♪」
「わ~~い!」
弟子たちは私の周りに集まる。
「まずは、このままだと大きすぎるから、解体しやすいようにする」
そう言って、私は袖から一本の紐を取り出す。
「師匠、それ一本でやるんですか?」
フィアが不思議そうに聞いてくる。
「うん」
私は紐をジャイアントボアの身体に巻きつける。
そして――
シュルッ!
紐が一気に動き、ジャイアントボアの身体を持ち上げた。
「わぁ!?」
「まぁ……」
「すごいですわ!」
「紐って便利だね~!」
「そうかな?」
私は紐を操りながら、ジャイアントボアをゆっくりと地面に寝かせる。
「まずは皮を剥いで……」
紐の先端を細くすると、まるで刃物のように変化させる。
「こうする」
スッ……。
「おぉ……」
弟子たちが真剣な顔で見つめる。
「師匠、紐でそんなことまでできるんですね」
「長く使っていると、いろいろできるようになるよ」
「私も紐を使ってみたいな!」
「フィアは騎士なんだから、まずは自分の魔法をしっかり使えるようにならないとね」
「うぅ……」
フィアが少し落ち込む。
「でも、フィアも前よりずっと強くなっているよ」
「本当か!?」
「うん」
「やった!」
フィアが嬉しそうに笑う。
「師匠、私たちももっと頑張ります!」
サントリナが真剣な表情で言う。
「そうだね。みんな、それぞれ自分の得意なことがあるんだから、それを伸ばしていけばいい」
私はそう言いながら、解体を続ける。
しばらくして――。
「よし、これで終わり」
「おぉ~~!」
「すごいですわ……」
「こんなにきれいになるんだ~」
「師匠、やっぱりすごいです!」
弟子たちがそれぞれ声を上げる。
「これだけあれば、しばらく食料にも困らないね」
「今日はお肉か!?」
フィアが目を輝かせる。
「もちろん」
「やったぁ!」
「ふふ、フィアは食べることが好きだね」
「だって、おいしいからな!」
「それもそうだね」
私は笑いながら、解体した肉を見つめる。
こうして今日も、丘の上の家には弟子たちの声が響いていた。
一人で暮らしていた頃には、考えもしなかった毎日。
「師匠、今日のお肉は私が焼きます!」
サントリナが手を上げる。
「じゃあ、お願いしようかな」
「任せてください!」
弟子たちと過ごす、にぎやかな日常。
それもまた、私にとって大切な時間だった。




