第20話「魔女と魔物討伐」その二
とある国の丘の近くの森。
フィアたちが武器を構える。
ついに、魔物が現れた。
「……黒い体毛……巨大な身体……」
「Bランク! ジャイアントコングか!」
アルベールが叫ぶ。
「……間違いない……」
ヨマリも二本の剣を構える。
ジャイアントコングは、巨大な身体を揺らしながら、こちらを睨みつけている。
「グルオオオオオッ!!」
「うわぁ~~! 大きい~~!」
ラファールが驚く。
「落ち着いて。まずは相手の動きを見ますわ」
シレーナが言う。
「そうだな!」
フィアが木剣を構える。
「では、私から行きますわ!」
シレーナが前に出る。
「待て。全員で一斉に攻撃する必要はない」
アルベールが止める。
「Bランクの魔物は、力任せに攻撃すると危険だ。まずは相手の動きを見るんだ」
「…………わかりましたわ」
ヨマリが一歩前に出る。
「私が……行く……」
「ヨマ!」
アルベールが声をかける。
「無理はするなよ」
「……分かってる……」
ヨマリは一気に走り出した。
「グオッ!」
ジャイアントコングが腕を振り下ろす。
ドンッ!
地面が大きく揺れる。
「……遅い……」
ヨマリは横へ跳び、攻撃をかわす。
そのまま二本の剣を振るう。
ヨマリの双剣が赤黒いオーラで包まれた気がした。
「はっ!」
ザシュッ!
黒い体毛が切り裂かれる。
「グオオオッ!」
ジャイアントコングが怒り、ヨマリへ向かって腕を振り回す。
「危ない!」
フィアが叫ぶ。
「大丈夫……」
ヨマリは攻撃をかわし、距離を取る。
「今のが、隙だ!」
アルベールが走り出す。
「はあああっ!」
強化魔法によって身体能力を高め、ジャイアントコングの懐へ飛び込む。
「せいっ!」
アルベールの剣がジャイアントコングの脚を打つ。
「グオッ!?」
ジャイアントコングの身体がぐらつく。
「今だ!」
アルベールが叫ぶ。
「はい!」
シレーナが木剣を構える。
「雷よ、剣を包め!」
バチィッ!
雷を帯びた剣がジャイアントコングへ命中する。
「グオオオオッ!!」
ジャイアントコングが叫ぶ。
「私も行くぞ!」
フィアが駆け出す。
「はあああっ!」
木剣を振り上げ、そのまま全力で振り下ろす。
ドンッ!
「グオッ!」
ジャイアントコングの肩へ直撃する。
「やった!」
フィアが喜ぶ。
「まだです!」
サントリナが叫ぶ。
ジャイアントコングがフィアへ向かって腕を振り下ろす。
「危ない!」
サントリナが防御魔法を展開する。
「守りの魔法!」
ドンッ!
透明な壁が攻撃を受け止める。
「くっ……!」
サントリナの身体が少し後ろへ押される。
「サントリナ!」
「大丈夫ですよ!」
「なら、俺たちも行くぞ!」
アルベールが叫ぶ。
「……うん……」
ヨマリも再び走り出す。
双剣が、また赤黒いオーラで包まれる。
「グルルル……!」
ジャイアントコングが腕を振り回す。
フィアたちはそれぞれ距離を取りながら、攻撃を繰り返していく。
「フィア、無理に力を入れすぎない!」
リーネが少し離れた場所から声をかける。
「分かった!」
フィアは木剣を握る力を少し緩める。
そして――。
「はあっ!」
先ほどよりも速い、強化された一撃が、ジャイアントコングへと叩き込まれた。
「グオオオオッ!!」
大きな身体が、よろめいた。
「今なら……!」
ラファールが空へ飛び上がる。
「私も行くよ~~!」
上空から一気に急降下し、ジャイアントコングへ向かって攻撃する。
「グオッ!?」
ジャイアントコングが上を向く。
「隙ができた……」
ヨマリが呟く。
「これで……終わり……」
二本の剣を構え、地面を蹴った。
「……死魔法……呪死ノ双剣……」
「グオッ!?」
ジャイアントコングは腕を使い、ガードする。
「むだ……ッ!!」
ヨマリは落下の勢いに乗って腕を切り裂く。
「グルオォォォォ!!??」
「やった!」
フィアが叫ぶ。
「いえ、まだですわ」
シレーナがそう言う。
「さっきの攻撃は浅かったように見えました。なのに、とても苦しんでいるように見えます」
サントリナがそう言う。
「確かに~」
「教えてあげようか?」
「って、わぁ!? 師匠!? 急に出てこないでよ!」
「あはは、すまないね」
「それで、師匠、どうしてなんです?」
「前に、言ってただろう? 『死と呪の魔法』を使う、と」
「はい」
「ヨマリはね、無属性の派生属性『死属性』を使うんだ」
「属性にも派生があるのですね」
「そうさ。で、その死属性は滅多に強力だが、使用者の強さによって、強力になる」
「そうなのか」
「あぁ、そうだぜ。ヨマはな、その死属性を自分の武器に付与して戦い、敵の寿命や精神力を吸ったり、呪いを敵に付与して戦うんだ」
「……そゆこと……」
「グ、グルオォ……」
ドスン。
「あ、倒れた」
ヨマリが近づき、双剣でチョンチョン。
「……死んだ……」
「そうやって確認するんだ」
「ごめん、師匠……弟子4人じゃなくて、私が倒しちゃった……」
「いや、構わないよ。言っただろう? 見ることも修行だと」
リーネはヨマリの頭を、紐で撫でる。
「そういえば、師匠はなんでいつも紐を使ってるんだ? 手を使ってるとこ見たことないな」
「そういえば、そうですわね」
「きになるぅ」
「はい!」
「なんだ、お前ら知らないのか」
アルベールがそう言う。
「……師匠……そのローブ、特注品……長袖に……アイテムボックスを、付与して……るの」
「え!?」
「だから、腕はアイテムボックスの中だ」
「「「「え~~!?」」」」
みんな驚く。
「あはは、紐はそこから魔法で操り出してるんだよ。言ってなかったかな」
「聞いたことない!」
「初耳~~」
「はい、初めて知りました」
「えぇ」
「じゃあ、師匠……なんで白いローブと帽子なのか、わかる?」
「なぜでしょう」
シレーナがそう言う。
「白は戦場では狙われるからね。それに知能のない者は、真っ先に狙うだろう。そうすれば、弟子を逃がせる時間を稼げる」
「なるほどな」
「髪と瞳も白いのも何かの魔法~~?」
「いや、そんな魔法はないよ。これは生まれつきだ」
「「「「そうなんだ」」」」
「じゃ、もう少し探検するか」
アルベールがそう言い、みんなは先に進み、リーネは後ろから着いていく。




