第18話「魔女と冒険者」その四
丘の上の家にて。
「しっかし、変わってねぇな~」
「……うん……昔のまま……」
アルベールとヨマリが家や家の周辺を見ながらそう言う。
「まぁ、改装をしている暇はないからね」
「でも、こんなに広い土地なのに大きくしないのか?」
フィアが聞いてきた。
「そうだね。でも、大きければ良い、ということじゃないよ」
「そうなのか?」
「うん。もちろん、大きい家も良いが、それでは掃除が大変だし、人手もいる。小さいと掃除は楽だからね」
「掃除って」
「師匠らしいですわね♪」
「はい!」
「そうかい?」
「そうだよ~♪ 師匠はすごいから!」
「ラファール、答えになってないですよ」
「そう~?」
「やっぱり、ここは良いな! 賑やかで、とても明るい」
「……はい……」
「いいなぁ、私も、冒険者になってみたいな!」
フィアがそう言う。
「えぇ、そしていつか、師匠を超えてみせます」
「ふふっ、フィア、シレーナ、楽しみにしてるよ」
「私も超える~~」
「私もいつか師匠を超える『魔女』になります!」
「もちろん、ラファールとサントリナも、待っているよ」
「だったら、空いた時間にここに来て、修行を手伝ってやるよ!」
「私も……お手伝い……」
「良いの!?」
フィアたちは目を輝かせる。
「あぁ! もちろんだ」
「……徹底的に痛めつけてあげる……」
「ヨマが、いつにもまして怪しい顔を」
「紅拝賀できて嬉しいんだろう! ははは!」
「て、手加減して、ね?」
「さぁ? ……どうでしょうか……」
「ふふっ」
リーネはその様子を見てにこにこしていた。
「そういえば、師匠」
アルベールがリーネを見る。
「どうしたの?」
「今の弟子たちって、どんな修行をしてるんだ?」
「それぞれに合った修行をしているよ」
リーネが四人を見る。
「フィアは剣術と身体強化。サントリナは防御魔法。シレーナは雷魔法と魔法騎士としての戦い方。ラファールは飛行と近接戦闘だね」
「へぇ……」
アルベールは四人を見る。
「ちゃんと一人一人違うんだな」
「はい!」
フィアが元気よく答える。
「師匠は、私たちに合った修行を考えてくれるんだよ!」
「なるほどな」
アルベールが笑う。
「俺たちの頃とは、少し違うみたいだな」
「……うん……」
ヨマリも頷く。
「昔は……みんなで同じ修行をすることも……多かった……」
「そうだったね」
リーネが少し懐かしそうにする。
「弟子が多かったから、一人一人を見るのも大変だったんだよ」
「十人以上いたんだもんな」
アルベールが笑う。
「そりゃ大変だ」
「でも、師匠はちゃんと見てくれてた……」
ヨマリが呟く。
「……そうだった?」
「……うん」
ヨマリは頷く。
「私たちの苦手なところも……得意なところも……ちゃんと見てた……」
「師匠は昔から師匠だったってことだな」
アルベールが笑う。
「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいね」
リーネも微笑む。
「それにしても、二人が手伝ってくれるなら心強いね」
「おう! 任せろ!」
アルベールが胸を張る。
「俺は剣術を教えられるし、強化魔法も使えるからな!」
「私は……双剣と……」
ヨマリが少し考える。
「死と呪の魔法……」
「……え?」
サントリナが少し驚く。
「死や呪いに関する魔法を使うんですか?」
「……うん」
ヨマリが頷く。
「珍しい魔法だから……使える人は……ほとんどいない……」
「すごいですわ……」
シレーナが興味深そうにヨマリを見る。
「今度、見せてもらってもいいですか?」
「……もちろん……」
「やった!」
フィアも嬉しそうに声を上げる。
「私も見たい!」
「私も~!」
ラファールも手を上げる。
「なら、明日からでも一緒に修行、もとい魔物討伐するか!」
「明日から!?」
フィアの目が輝く。
「うん。ちょうどいいんじゃないかな」
リーネが頷く。
「卒業した弟子と、今の弟子が一緒に修行するのも、きっと良い経験になるよ」
「やった!」
フィアが飛び跳ねる。
「よろしくお願いします!」
サントリナも頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくですわ」
シレーナが微笑む。
「私もよろしく~!」
ラファールが笑う。
「……よろしく……」
ヨマリも小さく笑った。
「じゃあ、今日はもう遅いし、明日からだな!」
アルベールが言う。
「そうだね。今日はゆっくり休もうか」
「……うん……」
こうして、元弟子のアルベールとヨマリは、しばらく丘の上の家に滞在することになった。
現在の弟子たちにとっては、二人の冒険者から学べる貴重な時間。
そしてアルベールとヨマリにとっても、久しぶりに師匠と弟子たちと過ごす時間だった。
丘の上の家は、今日も賑やかな声に包まれていた。




