第16話「魔女と冒険者」その二
丘の上の家。
そこには二人の影が来ていた。
「よっ! 久しぶりだな! 師匠!」
「……久しぶり……師匠……」
「……あぁ、久しぶり、アルベール、ヨマリ」
「おう!」
「……うん」
「ここで話すわけには行かないし、入って」
リーネがそう言い、二人を招きリビングに案内する。
「どうぞですわ」
シレーナが二人の前に紅茶を出す。
「おう! ありがとな」
「……ありがと……」
「それにしても、久しぶりだね、二人とも。卒業した後も、元気にしてるかい?」
「おうよ! おかげさまでな」
この二人は兄妹で、どちらも人族。そして、リーネの元を卒業した弟子でもある。
兄の方は青髪の少年で、名を【メルヴェイユ・アルベール】。
【クラス】は『騎士』で、無属性の『強化魔法』を使う。
そして、妹の方は黒に赤のグラデーションの髪の少女で、名を【メルヴェイユ・ヨマリ】という。
【クラス】は『双剣使い』で、無属性のとても珍しい『死』や『呪』に関する魔法を使う。
【オリハルコン級】の冒険者パーティー【蒼紅の双星】として活躍している。
ヨマリは紅の双剣。アルベールは蒼く輝く剣を使う。
「しかし、青兄にヨマは、なんで急に来たんだ? 連絡ぐらいよこしてもよかったんじゃないか?」
フィアがそう言う。
「いや~、それがな」
「忙しかったの?」
「いや~、そうじゃなくて」
「青兄が……忘れてただけ……」
「っておい!」
「……」
「仲良しなんですね」
サントリナがそう言う。
「ここに来たのは、挨拶かな?」
リーネはアルベールの後ろにある袋を見ながら言う。
「やっぱりお見通しか」
そう言い、アルベールは後ろの袋を取り出し、中身を出した。
それは紅に輝く鱗と、何かの肉や爪などであった。
「これ、やるよ! 土産に捕ってきた」
アルベールがそう言う。
「おい、これ、何の鱗だ」
「固い、ですわ」
「確かに」
「お肉~」
みんな各々の感想を述べるが、リーネは――
「……紅龍、か」
「お! わかるか?」
弟子たちの声が止まる。
「こ、紅龍って!? あのドラゴン?」
「……それ以外の紅龍は……知らない……」
ヨマリが答える。
「しかし、紅龍の素材は中型のドラゴンとはいえ高級品だ。売れば高値で取引される。良いのかい?」
「あぁ!そのために捕ってきたからな!」
「それだけのために?」
「あぁ」
「ふふっ、青兄らしいですわね」
「だね~」
「でも、ドラゴンの肉なんて、高級すぎて食べられないかも……」
「……」
みんな黙る。
しばらくして。
「なら……いま、食べると良い……高級……なら……祭りや歓迎の場で食べたら……抵抗も……なくなるかも……」
「お! 良い案だな!」
「では、そうしよう」
「じゃあ、今日は紅龍の肉で歓迎会だね」
リーネが微笑む。
「歓迎会!」
フィアが嬉しそうに声を上げる。
「アルベールとヨマリが来てくれたんだから、ちょうどいいね」
「そうですわね」
シレーナも頷く。
「せっかくだし、みんなで食べよう!」
ラファールも嬉しそうに笑う。
「おう! そうしてくれ!」
アルベールが笑う。
「……ヨマも……楽しみ……」
ヨマリも小さく頷く。
「じゃあ、さっそく準備しようか」
リーネが立ち上がる。
「私も手伝う!」
フィアが続く。
「私もです」
サントリナも立ち上がる。
「では、私もお手伝いしますわ」
「私も~!」
四人の弟子たちも、それぞれ準備を始める。
アルベールとヨマリは、その様子を眺めていた。
「へぇ……師匠、ずいぶん賑やかになったな」
「……うん……昔より……少ないけど……」
「昔は俺たちの他にも10人以上もいたからな」
「そうですね」
ヨマリが小さく笑う。
「二人とも、昔のことを覚えているんだね」
リーネが言う。
「そりゃ覚えてるさ!」
アルベールが笑う。
「師匠との修行は、忘れようと思っても忘れられないからな!」
「……厳しかった……」
ヨマリが呟く。
「えっ、そうだった?」
リーネが首をかしげる。
「そうだよ!」
「……そう……」
兄妹が同時に頷く。
「ふふっ」
サントリナが笑う。
「師匠は、あまり自覚がないみたいですね」
「そうかもね」
リーネは苦笑する。
「二人とも、立派な冒険者になったんだね」
「まあな!」
アルベールが胸を張る。
「今じゃ、オリハルコン級だからな!」
「すごい……」
フィアが目を輝かせる。
「オリハルコン級って、すごく強い冒険者なんだよね?」
「そうですわね。冒険者の中でも、かなり高いランクですわ」
シレーナが答える。
「冒険者ギルドのランクは」
【ブロンズ級】
【シルバー級】
【ゴールド級】
【ミスリル級】
【オリハルコン級】
【アダマンタイト級】
「の、六種類があり、アダマンタイト級は世界に4人しかいませんわ」
「へぇ~!」
ラファールも興味津々に二人を見る。
「じゃあ、二人とも強いんだ!」
「まあ、俺は強いぞ!」
アルベールが笑う。
「……ヨマも……強い……」
ヨマリが静かに言う。
「もちろん、ヨマリもだよ」
リーネが笑う。
「それにしても、紅龍を二人で倒したのかい?」
「あぁ!」
アルベールが頷く。
「今回はちょっと大きな依頼があってな。それが終わったから、帰りにここへ寄ったんだ」
「なるほどね」
「それで……師匠に会いたくなった……」
ヨマリがぽつりと言う。
「ヨマリ……」
アルベールが妹を見る。
「……何?」
「いや、別に」
「ふふっ」
リーネが微笑む。
「二人とも、来てくれて嬉しいよ」
「……うん」
「おう!」
そのとき。
「お肉、切れたよ~!」
フィアの声が響く。
「こっちも準備できました!」
サントリナが続く。
「では、焼き始めましょうか」
シレーナも準備を整える。
「わ~い! 紅龍のお肉~!」
ラファールが嬉しそうに跳ねる。
「じゃあ、みんなで食べようか」
リーネが言う。
「今日は特別な歓迎会だね」
丘の上の家に、久しぶりに帰ってきた元弟子たち。
そして、新しい弟子たち。
二つの師弟の時間が、同じ食卓で交わろうとしていた。




