第13話「魔女と修行」その三
丘の上の家。
「はぁ……はぁ……!」
フィアが木剣を握りながら、何度も素振りを続けている。
「フィア、少し休もうか」
リーネが声をかける。
「まだ大丈夫!」
「でも、動きが少し遅くなっているよ」
「え?」
フィアが木剣を見る。
「最初より、振るのが遅くなってる?」
「うん。疲れてくると、また力が入りすぎているね」
「そっか……」
フィアは木剣を下ろす。
「強く振ろうとすると、力が入りすぎちゃうんだね」
「そうだね。だから、疲れているときほど気をつける必要があるよ」
「分かった!」
フィアは深呼吸する。
そして、もう一度構え直した。
「今度は、力を抜いて……」
ヒュッ!
木剣が空気を切る。
「うん。その調子」
「よし!」
フィアは嬉しそうに笑った。
その近くでは、サントリナが防御魔法の修行を続けている。
「……」
薄い魔力の壁が、サントリナの前に浮かんでいる。
「サントリナ、少しだけ魔力を右に流してみて」
「右に……ですか?」
「うん」
サントリナが集中する。
すると、魔力の壁がゆっくりと右へ揺れる。
「そうそう」
「こう……でしょうか?」
「うん。防御魔法は、ただ受け止めるだけじゃないからね」
「攻撃を受け流す……」
「そう。相手の力を、そのまま受け止めないことも大切だよ」
「分かりました」
サントリナはもう一度、魔力を流す。
今度は先ほどよりも自然に壁が揺らいだ。
「上手くできました!」
「うん。前よりも魔力の流れが良くなっているよ」
サントリナは嬉しそうに微笑んだ。
その一方。
「もう一度、いきますわ!」
シレーナが両手を前へ伸ばす。
バチッ!
雷が走る。
「おお~!」
ラファールが空から声を上げる。
「今の、さっきより大きかったよ!」
「そうですわね」
シレーナは少し嬉しそうにする。
「ですが……」
「どうしたの?」
リーネが尋ねる。
「少しだけ、魔力を使いすぎた気がしますわ」
「その感覚は大事だよ」
「そうなのですか?」
「自分がどれくらい魔力を使ったのか分かるようになると、無理をしなくても済むからね」
「なるほど……」
シレーナは自分の手を見る。
「では、次は少ない魔力で試してみますわ」
「うん。やってみよう」
シレーナはゆっくりと魔力を集める。
そして――
バチッ。
小さな雷が、先ほどよりも安定して走った。
「できましたわ!」
「うん。今のほうがいいね」
「ありがとうございます!」
シレーナが笑う。
そのとき。
「ねえ、リーネ~!」
ラファールが上空から呼びかける。
「どうしたの?」
「向こうに何かあるよ~!」
「何か?」
リーネが空を見上げる。
ラファールは遠くを指さしている。
「森の近くに、大きな鳥が飛んでる!」
「大きな鳥?」
「うん! でも、私たちのところには来ないみたい!」
「それなら、様子を見るだけにしておこうか」
「分かった~!」
ラファールはその場で旋回する。
「……あっ」
しかし、先ほどと同じように少しだけ体が傾いた。
「ラファール、無理に近づかなくていいよ!」
「大丈夫!」
ラファールは翼を動かす。
「ゆっくり……」
少しずつ高度を下げる。
そして、今度は安定した動きで地面へ戻ってきた。
「どう?」
「うん。今度は落ち着いていたね」
「やった!」
ラファールが嬉しそうに笑う。
「さっきより上手にできたよ!」
「ちゃんと自分で考えて動けたからね」
「えへへ♪」
フィア、サントリナ、シレーナもラファールのところへ集まる。
「ラファール、すごいね!」
「フィアもすごかったよ!」
「サントリナの魔法も!」
「シレーナの雷も綺麗でした!」
四人はお互いの修行を褒め合う。
その様子を見ながら、リーネは微笑んだ。
「みんな、それぞれ違うことをしているけど……」
「?」
四人がリーネを見る。
「こうやって、お互いのことを見ているのも修行の一つかもしれないね」
「お互いを見るのも?」
「うん。自分では気づけないことを、誰かが気づいてくれることもあるからね」
「なるほど!」
フィアが頷く。
「じゃあ、これからもみんなで修行しよう!」
「はい!」
「うん!」
「もちろんですわ!」
「私も~!」
丘の上の家に、四人の声が響く。
今日もまた、弟子たちは少しずつ成長していた。




