【12】恋は10段で仕掛けられる。〜シャンパンタワー決行〜
そして――『シャンパンタワー計画』は着々と進んで行った。
グラスは倒す前提で、アンジュの安全面を考えて割れない樹脂製に。
クープ型のシャンパングラスの見た目は、バカラのシャンパンフルートにも劣らない精巧な作りだ。
タワーは10段。
グラスは220個。
必要なシャンパンボトルは約39本。
そのシャンパンは香り重視で、ドイツ産のスパークリングワイン、『ポンパドール ストロベリー』に決まった。
甘党のアンジュに合わせ、ストロベリーの甘い香りが特徴で甘口だ。
アンジュはまさに苺を思わせるピンク色のドレス。
ロクシーは一見白のドレス――だが、動きやすいように、ドレスの中はパンツ仕様になっている。
妖精王はそのままに。
ルシアンとルチアーノ、アーチーボルトとリオもタキシードだ。
そうして、『シャンパンタワー計画』実行日がやって来た。
その日は朝から快晴。
アンジュが目覚めて、シャワーを浴び、ダイニングに行くと、アーチーボルトがもう起きていて、キッチンで朝食作りをしていた。
アンジュの「おはよう!アーチーボルト!」という鈴の音のような声に、なぜかアーチーボルトがその場で飛び上がる。
そして必死に、作り笑いを浮かべる。
「お、おはよう!アンジュ!
早いな!」
アンジュがにこりと微笑む。
「うむ!
午後からのパーティが楽しみで!」
フライパンを持つ手が震えるアーチーボルト。
だが、必死に堪える。
――午前中を過ぎれば、わしとリオは自由の身じゃ!
そう心に言い聞かせながら。
「そ、そうか!
わしもじゃ!
この別荘にはUMA仲間達と会議を開くホールがあってな!
そこをパーティ会場にするんじゃよ!」
「ほう!
素晴らしいな!
私も飾り付けを手伝おうか?」
――キターーー!!
ロクシーの言う通りじゃ!
『アンジュちゃんは絶対に手伝うって言うよ?』
ゴホンと咳払いをするアーチーボルト。
「いやいや……実は!
よ、妖精王とォ……アアアンジュちゃんとルシアンと、ロクシーをっ、驚かせようと……なっ!
昨日の夜こっそり業者を呼んでっ!
わしとリオとルチアーノで監督して、飾り付けは済んでおるッ……!
心配は、いらんよぉおおお!!」
――ふう……!!
言えたーーー!!
カクカク喋りどころか、不審者寄りのアーチーボルト喋りにも、アンジュは気づかず、嬉しそうに言った。
「そうか!
ありがとう、アーチーボルト!」
そこにルシアンがやって来た。
「おはようございます、アンジュさま」
胸に手を当て、一礼するルシアンに、アンジュがアーチーボルトから聞いた話を楽しそうに話し出す。
その二人を物陰から見ているリオの手には、無線が握られている。
その無線はロクシーが事前にルチアーノとの連絡用に、イレイナに空間と回線をまじないで作り出したものをロクシーが応用したもので、ルシアンにも、万が一にも――妖精王にも聞かれる心配はない。
「こちら、リオ。
ダイニングは順調!
どうぞ」
無線の向こうからは――
ロクシーの鋭い声がする。
「こちら、ロクシー。
私もダイニングに向かう。
リオはこの通信後、ダイニングへ。
どうぞ」
リオの無線を握る手に力が籠る。
「こちら、リオ!
りょ、了解です!
ではこれで、通信を終了します!」
そしてリオは無線を観葉植物の影に隠し、ダイニングへと向かった。
朝食は全員が集まり、和やかに時間は過ぎた。
妖精王は今日は一人で飄々と庭を散歩したり、プールサイドに配置されている草木や花々を物珍しそうに見ている。
ルシアンは一安心していた。
――妖精王ならば、自然と戯れるのも理のことわり。
理にかなっている、と。
そしてルチアーノがルシアンを迎えに来て、ルシアンは着替えに寝室に向かった。
ルシアンはルチアーノが選んだ、真っ白なタキシードを着た。
ルチアーノはご機嫌でウキウキと語り出す。
「ロクシー先生からの情報によると、アンジュちゃんのドレスはピンク❤️
ならば、お前は白一択だーーー!!ってな♪」
「そうなのか?」
至極真面目に問うルシアンにも、ルチアーノはご機嫌で答える。
「そうなの♪
ピンクと白は恋のルールカラー❤️
ハイッ!
お似合い♪」
ルシアンはふと、無表情が崩れそうになる。
――アンジュさまはピンクのドレスをお召しなのか、と。
そして、午後1時。
パーティの始まりの時間。
ルチアーノが口早に言い出した。
「ロクシー先生に呼ばれた!
先に行っててくれ!
アーチーボルトのおっさんとリオはもう会場入りしているはずだ!
じゃあな!」
それだけ言うと、ダッシュで廊下を駆けて行く。
ルシアンは別荘の離れにあるホールへと、一人で向かった。
そうして扉の前に――
光を見る。
淡いピンク色のドレス姿のアンジュが、一人で扉の前に立っていた。
冬の終わりを告げる日差しの中、そよ風を受けるアンジュは美しくも神聖で――
ルシアンは何も言えなくなる。
するとアンジュがルシアンに向かって、にこりと微笑んだ。
ルシアンの眼と脳を直撃。
だが、ルシアンは何とか踏ん張る。
――妖精王がいるパーティ!
大天使の私が、妖精王を見張る!
それこそが使命……!!
そうしてルシアンは、アンジュに静かに告げた。
「アンジュさま、扉をお開けします」
「だが……」
アンジュが小首を傾げて言った。
「この扉は、開かぬのだ」
ルシアンが即座に戦士の眼になり、重厚なドアノブに手を掛ける。
万が一、妖精王が仕掛けを施していないか、恩寵で確認しつつ――
しかし、呆気なく扉は開いた。
しかも、まじないも何も施されてはいない。
「アンジュさま、どうぞ。
少し重かったのではないでしょうか?」
「そうか?
ルシアンよ!
礼を言うぞ!」
そして、二人が会場に入った途端――
なぜかジャパンの平成の曲が始まり、
ミラーボールが天井から輝き、くるくると回り出し、“それ”にはスポットライトが当てられていた。
そう――10段のシャンパンタワー。
その高さ、約190センチ。
台座を含めると、身長190センチ近いルシアンでさえ見上げる程の高さだった。
真っ白な薔薇で埋め尽くされた会場に、そびえ立つシャンパンタワーは光り輝き、甘い香りを放ち、ルシアンの隣にはアンジュがいる。
ルシアンはシャンパンタワーではなく、アンジュに一瞬見惚れ、直ぐに跪いた。
アンジュは不思議そうに言う。
「ルシアンよ……何をしておる???」
しかしルシアンは、アンジュを直視出来ない。
この美しくも、どこかおかしな世界でも、アンジュが美し過ぎて。
返事すら出来ない。
胸の鼓動がうるさくて。
その瞬間だった。
シャンパンタワーの裏側で、妖精王が言った。
「今だ☆」
ルチアーノが答える。
「……任せろ!!」
そうして、言うだけの平成チャラ男妖精王と、昭和ロマンの地獄の王が踏ん張って、奇跡は起こった。
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