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【完結】大天使の初恋を、妖精王が台無しにする物語。 〜永遠の恋人は、まだ恋人未満〜  作者: 久茉莉himari


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12/15

【12】恋は10段で仕掛けられる。〜シャンパンタワー決行〜

そして――『シャンパンタワー計画』は着々と進んで行った。


グラスは倒す前提で、アンジュの安全面を考えて割れない樹脂製に。


クープ型のシャンパングラスの見た目は、バカラのシャンパンフルートにも劣らない精巧な作りだ。


タワーは10段。


グラスは220個。


必要なシャンパンボトルは約39本。


そのシャンパンは香り重視で、ドイツ産のスパークリングワイン、『ポンパドール ストロベリー』に決まった。


甘党のアンジュに合わせ、ストロベリーの甘い香りが特徴で甘口だ。


アンジュはまさに苺を思わせるピンク色のドレス。


ロクシーは一見白のドレス――だが、動きやすいように、ドレスの中はパンツ仕様になっている。


妖精王はそのままに。


ルシアンとルチアーノ、アーチーボルトとリオもタキシードだ。


そうして、『シャンパンタワー計画』実行日がやって来た。




その日は朝から快晴。


アンジュが目覚めて、シャワーを浴び、ダイニングに行くと、アーチーボルトがもう起きていて、キッチンで朝食作りをしていた。


アンジュの「おはよう!アーチーボルト!」という鈴の音のような声に、なぜかアーチーボルトがその場で飛び上がる。


そして必死に、作り笑いを浮かべる。


「お、おはよう!アンジュ!

早いな!」


アンジュがにこりと微笑む。


「うむ!

午後からのパーティが楽しみで!」


フライパンを持つ手が震えるアーチーボルト。


だが、必死に堪える。


――午前中を過ぎれば、わしとリオは自由の身じゃ!


そう心に言い聞かせながら。


「そ、そうか!

わしもじゃ!

この別荘にはUMA仲間達と会議を開くホールがあってな!

そこをパーティ会場にするんじゃよ!」


「ほう!

素晴らしいな!

私も飾り付けを手伝おうか?」


――キターーー!!

ロクシーの言う通りじゃ!

『アンジュちゃんは絶対に手伝うって言うよ?』


ゴホンと咳払いをするアーチーボルト。


「いやいや……実は!

よ、妖精王とォ……アアアンジュちゃんとルシアンと、ロクシーをっ、驚かせようと……なっ!

昨日の夜こっそり業者を呼んでっ!

わしとリオとルチアーノで監督して、飾り付けは済んでおるッ……!

心配は、いらんよぉおおお!!」


――ふう……!!

言えたーーー!!


カクカク喋りどころか、不審者寄りのアーチーボルト喋りにも、アンジュは気づかず、嬉しそうに言った。


「そうか!

ありがとう、アーチーボルト!」


そこにルシアンがやって来た。


「おはようございます、アンジュさま」


胸に手を当て、一礼するルシアンに、アンジュがアーチーボルトから聞いた話を楽しそうに話し出す。


その二人を物陰から見ているリオの手には、無線が握られている。


その無線はロクシーが事前にルチアーノとの連絡用に、イレイナに空間と回線をまじないで作り出したものをロクシーが応用したもので、ルシアンにも、万が一にも――妖精王にも聞かれる心配はない。


「こちら、リオ。

ダイニングは順調!

どうぞ」


無線の向こうからは――

ロクシーの鋭い声がする。


「こちら、ロクシー。

私もダイニングに向かう。

リオはこの通信後、ダイニングへ。

どうぞ」


リオの無線を握る手に力が籠る。


「こちら、リオ!

りょ、了解です!

ではこれで、通信を終了します!」


そしてリオは無線を観葉植物の影に隠し、ダイニングへと向かった。




朝食は全員が集まり、和やかに時間は過ぎた。


妖精王は今日は一人で飄々と庭を散歩したり、プールサイドに配置されている草木や花々を物珍しそうに見ている。


ルシアンは一安心していた。


――妖精王ならば、自然と戯れるのも理のことわり。

理にかなっている、と。


そしてルチアーノがルシアンを迎えに来て、ルシアンは着替えに寝室に向かった。




ルシアンはルチアーノが選んだ、真っ白なタキシードを着た。


ルチアーノはご機嫌でウキウキと語り出す。


「ロクシー先生からの情報によると、アンジュちゃんのドレスはピンク❤️

ならば、お前は白一択だーーー!!ってな♪」


「そうなのか?」


至極真面目に問うルシアンにも、ルチアーノはご機嫌で答える。


「そうなの♪

ピンクと白は恋のルールカラー❤️

ハイッ!

お似合い♪」


ルシアンはふと、無表情が崩れそうになる。


――アンジュさまはピンクのドレスをお召しなのか、と。




そして、午後1時。


パーティの始まりの時間。


ルチアーノが口早に言い出した。


「ロクシー先生に呼ばれた!

先に行っててくれ!

アーチーボルトのおっさんとリオはもう会場入りしているはずだ!

じゃあな!」


それだけ言うと、ダッシュで廊下を駆けて行く。


ルシアンは別荘の離れにあるホールへと、一人で向かった。


そうして扉の前に――

光を見る。


淡いピンク色のドレス姿のアンジュが、一人で扉の前に立っていた。


冬の終わりを告げる日差しの中、そよ風を受けるアンジュは美しくも神聖で――

ルシアンは何も言えなくなる。


するとアンジュがルシアンに向かって、にこりと微笑んだ。


ルシアンの眼と脳を直撃。


だが、ルシアンは何とか踏ん張る。


――妖精王がいるパーティ!

大天使の私が、妖精王を見張る!

それこそが使命……!!


そうしてルシアンは、アンジュに静かに告げた。


「アンジュさま、扉をお開けします」


「だが……」


アンジュが小首を傾げて言った。


「この扉は、開かぬのだ」


ルシアンが即座に戦士の眼になり、重厚なドアノブに手を掛ける。


万が一、妖精王が仕掛けを施していないか、恩寵で確認しつつ――


しかし、呆気なく扉は開いた。


しかも、まじないも何も施されてはいない。


「アンジュさま、どうぞ。

少し重かったのではないでしょうか?」


「そうか?

ルシアンよ!

礼を言うぞ!」


そして、二人が会場に入った途端――

なぜかジャパンの平成の曲が始まり、

ミラーボールが天井から輝き、くるくると回り出し、“それ”にはスポットライトが当てられていた。


そう――10段のシャンパンタワー。


その高さ、約190センチ。


台座を含めると、身長190センチ近いルシアンでさえ見上げる程の高さだった。


真っ白な薔薇で埋め尽くされた会場に、そびえ立つシャンパンタワーは光り輝き、甘い香りを放ち、ルシアンの隣にはアンジュがいる。


ルシアンはシャンパンタワーではなく、アンジュに一瞬見惚れ、直ぐに跪いた。


アンジュは不思議そうに言う。


「ルシアンよ……何をしておる???」


しかしルシアンは、アンジュを直視出来ない。


この美しくも、どこかおかしな世界でも、アンジュが美し過ぎて。


返事すら出来ない。


胸の鼓動がうるさくて。


その瞬間だった。


シャンパンタワーの裏側で、妖精王が言った。


「今だ☆」


ルチアーノが答える。


「……任せろ!!」


そうして、言うだけの平成チャラ男妖精王と、昭和ロマンの地獄の王が踏ん張って、奇跡は起こった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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