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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
兄妹愛

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第75話 共闘4

「怪我は……無いな。痛い所はないか?」

「大丈夫だよ。心配し過ぎ」

「そうか、それなら良かった」


 安否の確認終えて周囲の状況を確認し直す。

 胴体を中心に体の大半が千切れたシオン。その近くを漂う人型の炎。遠くには焦げた人型の何かが倒れている。

 きりるんは紡祇を守る様に周囲をウロチョロしている。


 初めて見るのが二つ……いや、一つか。初見と見紛うあの焦げた人型の何かは恐らく獣人のローナーだ。顔の形が明らかに狼の形状をしている。

 問題はこの炎の精霊みたいな見た目をしている奴だ。


「紡祇、あの炎の精霊みたいなのは何だ」

「ボクが創った炎の精霊さんだよ。獣人さんを倒してもらう為に『奇跡』を使ったんだけど……ちょっと焼き過ぎちゃったみたい」


 丸焦げじゃねぇか。


「やり過ぎだろ……」

「うぇるだんってやつだね」

「そうそう、丁度良い焼き加減……んな訳ねぇだろ」

「…………てへ」


 可愛らしく誤魔化そうとしている紡祇に呆れて溜息を吐く。

 相手が違えば灰になってる所だ。

 とか気にしてる場合じゃなかったな。『奇跡』を使って創ったか……見た所、意識が朦朧としてる訳でも、体調が悪そうな訳でも無い。普段通りの紡祇だ。

 しかし『奇跡』使用による魂の消耗は外見だけじゃあ判断しにくい。見るからに格が高そうで、且つ『最強の獣人』と言われている獣人を丸焦げにする能力持ちを生み出したんだ。魂がかなり消耗していても不思議じゃない。


「『奇跡』を使った時に眩暈とかしなかったか?」

「んー。眩暈とか眠気はあったけど、それくらいかな」


 この顔は半分本当って所か。

 スカした態度を取ってるが紡祇には体調不良で都合が悪い時は誤魔化す癖がある。大抵は本当よりも軽い症状だと言って嘘吐くから、今回の場合は眩暈や眠気では済まされない何かがあったんだろうな。

 例えば……五感の一時的な消失、意識の断裂、ここ辺りか。

 俺がシオンに乗せられて『奇跡』を過剰使用した時になった状態とほぼ同じ症状だろう。


 そこまでの症状になったと仮定するなら、紡祇にこれ以上『奇跡』を使わせるのは危険だ。俺の時みたく同じ体を共有している魂に乗っ取られる可能性がある。


「そうか……一応、何かあったら危険だから『奇跡』はしばらく使わないでくれよ」

「むぅ……分かったよ……」


 ふくれっ面をして渋々了承する紡祇。

 何かしたいと思うのは嬉しいが何かあってからでは遅いからな。

 一度頭を撫でて、シオンと炎の精霊の方を向く。


「なぁ、本当にあの炎の精霊はお前が創ったんだよな」

「そうだよっ! シオンちゃんに協力してもらったけど、ちゃんとボクが創ったんだよ!」


 炎の精霊が紡祇の生成物なら当然紡祇が操れる存在のはずだ。なのに何故__

 アレはシオンの傍から離れようとしないんだ?


「紡祇、後ろに下がってろ」

「えっ、ボクも何か」

「下がっててくれ。死んだ後じゃ遅いんだ。きりるん、護衛頼めるか?」

「バウっ!」

「うぅ……」


 不満そうにきりるんと一緒に俺の後ろに下がる。

 さてと……獣人の方は紡祇のお陰で片付いているが、次はシオンか。

 当然と言えば当然だがな。

 あの王様の話を聞いた後だから多少脳内の整理が着いたが、どうやらシオンと獣人ローナーはグルでは無い。むしろ敵対関係。

 ローナーが登場した事自体は偶然で、この絶好の機会を逃すまいとシオンが俺を(そそのか)してレオンが乗っ取れる程度まで使用コストの高い『奇跡』の使い方をさせた。

 シオンの計画ではこの時点で俺がレオンに完全に乗っ取れて、紡祇も殺して『奇跡』を奪い返して終わり。人間兵器とか言われてる程強いレオンが復活すれば戦力面の問題は全て解決する腹積もりだったんだろう。


 だが、そうは行かなかった。

 レオンの魂は何故か1割しか残っておらず、俺も何故か魂の耐久力が高く人間兵器の1割程度なら抑えきれる器だった。

 レオン復活時点で王手の条件が根っこからひっくり返されてしまった。そこにフルベットして失敗してしまった以上、ここから巻き返す為にはどうするか。

 俺なら……相手の知らない情報を使ってイチかバチかの賭けに出る。

 例えばそうだな……まだ明かしてない情報があるとするなら……

 紡祇の『奇跡』、きりるんの能力、これは大体知っている。炎の精霊の能力も見た目通りだろう。

 ならシオンは?

 シオンの能力は?

 紡祇の『奇跡』で創ったシオンのスライムで出来た身体はどんな能力がある?

 スライムをモチーフにした能力と言えば__


「バウっっ!!」


 背後から聞こえるきりるんの鳴き声でハッと視界が晴れる。

 そのまま背後に居る紡祇ときりるんの方を見るとそこには水色の液体に口を塞がれて、両腕両脚を拘束された紡祇の姿があった。


「んんーーっ!!」


 抉れた地面から生えた水色の液体は全身に絡みついて紡祇を絞め殺そうとしている。

 あそこにはシオンの身体の一部が残っていた筈だ。それが動き出したってのかっ!!


「『離れろ』っ!!!」


 『奇跡』を使って剥がそうと試みるが何も効果が無い。

 コイツっ!! 自分は「今の僕の体は紡祇君の意思が最優先になってる」とかほざいていた癖にアレも嘘だったのかっ!

 痛みを直接与えて拘束を解こうかとも考えたが、スライムが紡祇に密着し過ぎていてこのまま攻撃してしまうと紡祇にもダメージが行きかねない。そもそも体がスライムで出来ている以上、シオンを単純な物理攻撃では殺せない。あの威力の蹴りでシオンを胴体から抉ったとしても殺す事は不可能だったんだ!


「信_君、そこを退きなさい!」


 どこからともなく聞こえるノイズ混じりの声に、驚きつつも安心感を覚えてサッと逃げる。

 そうして逃げた瞬間、全てを飲み込む黒が空中に出現しスライムだけを飲み込んで消える。

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