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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
兄妹愛

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第74話 共闘3

 重ねて『奇跡』を使用する。

 再び意識が飛びそうになったが即座に意識が戻る。

 手探りではあるものの、このやり方は確かに効果があるみたいだ。

 この調子で二度三度と重ねて『シオンを殺せ』と唱える。

 声になっていない『奇跡』の声で。

 ()()()()()()()()()()発動している『奇跡』の声で。


 そうして5回繰り返した所で、体の全ての感覚が一気に鮮明になる感覚がした。

 自由に動く様になった視界で手足がしっかり意思通り動いているのを確認する。


「……あっさり取り戻せたな」


 いくら弱体化しているとは言え人間兵器を相手に体を取り戻せるとは思えなかった。

 何か仕掛けてあるのかと勘繰ったりもしたが確認する手段も無く。とにもかくにも、きりるんからの念話みたいな連絡が来た以上早く紡祇の元に行かないといけない。


 そのついでに、さっき一瞬疑問に思った事を実践しようか。


(跳べ)


 『奇跡』の発動と共に跳ねる自分の体。

 跳躍力は大した事無いがそれで良い。

 ()()()()()()に発動出来る事実さえ確認出来ればそれで良い。

 考えてみれば最初から違和感はあった。

 どうやってレオンは声を発さずに『奇跡』を発動していたのか。

 どうしてレオン憑依状態で俺は『奇跡』を使えたのか。


 レオンが『言霊の奇跡』を使わなかったのは『模倣の奇跡』を代わりに使っていたからと言えば納得だが、俺の『言霊の奇跡』が声を使わずに発動したのは可笑(おか)しな話だ。

 翔流に無害な命令を込めた『奇跡』でテレパシーみたく会話していた時点から違和感はあった。あの時は獣人ローナーとの戦闘やレオン憑依の解除方法を考える事で夢中になってそこまで頭が回らなかったが、レオンの戦い方や俺の『奇跡』の使い方は明らかに今までの『言霊の奇跡』の使い方とは違うやり方だった。

 この『奇跡』は声をトリガーにして発動する能力だったはず。なのに声を出すイメージで強く念じるだけで発動してしまった。

 根本から能力の発動条件が違うんだ。


「言霊と言いながら実際は言葉を使う必要が無い……という訳ではないか」


 言葉自体は大事な要素の一つなのだろう。ただし、その発した或いは思い浮かべた言葉の意味は然して重要ではない。

 最も重要で必要な要素は、その言葉に与えた意味だ。

 特に何も意識せずに使えば『奇跡』は言葉通りの効果になる。しかし、この言葉に別の意味を意識して与えたらどうなる? 例えば「凍れ」を「燃えろ」と言ったつもりで言ったら。

 それの実例が翔流への『奇跡』を使った会話だ。

 あの時に命令していた言葉は全て『言葉が伝われ』と考えて言っていた。『奇跡』は発した言葉ではなく考えていた言葉の意味で発動していた。

 そしてもう一つ。『言霊の奇跡』は声に出さなくても発動する事。

 口を動かして言葉を発した方が意味を込めやすくて発動がしやすいのはあるが、しっかり集中して言葉を思い浮かべて対象を捉えていれば、声に出さずとも発動出来るみたいだ。


 それが他人でなくとも。自分に言い聞かせれれば俺自身に使える。


「能力の整理が大体出来たな……」


 王様から教えて貰うはずが自分だけである程度の理解が進んでしまった。

 周辺を見てみるが王様が後を追って来る気配は無い。彼の『奇跡』は機動力がある類の物ではないらしい。


「さてと……そろそろ行こうか」


 軽く体をほぐして再びきりるんの鳴き声とテレパシーが聞こえた方向を見る。

 戦闘準備は整った。後はシオンを殺して王様に成果を報告して(こび)売るだけだ。

 __跳べ。

 『奇跡』に言葉と意味を持たせて紡祇の元へ跳んで行く。


 あちらこちらにある屋根や街頭を伝って目的地の近くまで到着する。

 この場所は見覚えがある。高頻度で大きなイベントが開催されていて、ドームの中や外で色々やってる場所だ。

 出入口付近には人型の焦げた何かと、車サイズの狼と、人型の炎が立っていた。そして、その直ぐ傍で小さな少女が銀髪少女の胸倉を掴んでいるのを見付ける。


 あの二人組は間違いなくシオンと紡祇。

 シオンが紡祇の胸倉を掴んでいる。


 その事実だけで俺がシオンを攻撃する理由は十分だった。


「クソ野郎がっ『殺せ』!!!」


 言葉に従って俺の身体は大きく跳躍(ちょうやく)し、シオン目掛けて落ちて行く。

 __痛み散らせ。

 電柱よりも高い位置からの自由落下による跳び蹴り。ミサイルの如くシオンの胴体と共に地面が大きく抉る。

 落下時のダメージを軽減するべく着陸前に『奇跡』で「痛みの分散」を自身に付与していたから俺だけは無傷だ。むしろ、痛みが俺以外に分散したお陰で地面を想定以上に破壊してしまった。

 紡祇の胸倉を掴んでいたシオンは胴体に大きな穴が空き、意識を失ったかの様にその場に倒れる。


「紡祇大丈夫か!?」

「信世っ!」


 多少地面にめり込んだ脚を素早く抜き取って紡祇の元に駆け寄る。

 抱き着こうと飛び込んでくる紡祇を両手でキャッチして直ぐに降ろして紡祇の全身をしっかりと確認して怪我が無いか確認する。

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