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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
兄妹愛

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第73話 共闘2



 斯くして、王都の聖騎士団臨時団員として迎え入れられる事になった。と言う事で今から戦闘に行こう! とはならず。


『教えてくれるのは良いんだが、コレどうにかしない限りは何も出来ねぇよ?』

「そうですね。まずはその状態を解決するのが先ですね」


 『奇跡』を応用して言葉を伝えてはいるものの、現在俺の体はレオンの所為で動けなくなってしまっている。

 この状態でどうやって戦えというのだろうか。

 一国の王様が何も考えずに「共に戦ってください」なんて言う訳が無い。なんらかの魔法や過去の事例からの対処法があるのだろう。

 もしくは、この王様も『奇跡』を持っていてその能力で解決したりしてくれたりとかな。


「あまり時間は無いので貴方のセンス次第になってしまいますが……上手くやれますか?」

『上手く出来なかったらどうする?』

「その時は貴方を何処かに隠しましょうか」

『やっぱそーなるよな』

「雑談は置いておいて早速説明を」


 王様の『奇跡』で解決を期待してみたがどうにかするのは結局俺自身らしい。


「まず貴方の体の状況ですが、簡単に言うと貴方とレオンの力が拮抗している状態になっています。この状態を解除、つまり貴方の力が勝てる状況にするには、『奇跡』の使用を辞めて、目を閉じて、頭を休めて、魂と精神を回復させれば治ります」

『だが、そんな悠長にしている時間は無いから応急処置的な手段にすると』

「かなり荒技ですがやれますか?」


 まさかやれないとは言えないだろ。


『勿論やるさ。どうすれば良い?』

「やり方自体は簡単ですよ。その『奇跡』でレオンが嫌がる事をさせれば良い」

『はぁ……?』


 何をふざけた事を言ってるんだ。

 一般人なら嫌がらせ程度で気が逸れて幾分か隙が出るだろうが、相手は人間兵器とまで言われた異世界の最高戦力。その程度で身体の主導権を取り戻せるなんてそう単純な話ではないだろ。


「言いたい事は分かります。その程度で解決出来るのであればこうはなってないと。ですがこれが最短でどうにかする手段なのですよ」

『仕組みを教えて貰おうか』

「彼が嫌がる事を『奇跡』でその身体に強制させて、それを彼に『奇跡』を使わせて阻止させる」

『それじゃあ何も変わらないだろ』

「通常であればそうですね。ですが今の彼は違う。今のレオンは力の加減が一切効かない状態。『奇跡』で彼の信念を強制的に曲げさせる命令をするだけで彼は全力で『奇跡』を使って抵抗する」


 なるほど。言いたい事が分かってきた。

 だが、それをした際に反発したレオンの意識に負けて飲み込まれてしまえば、その場で全員皆殺しコースと。最悪、怒り狂ったレオンが周辺丸ごと破壊する可能性まである。


『要はアレか。俺はコスパ良く簡単な『命令』をするだけで、相手はコスパの悪い使い方で『命令』を上書きさせる。それを繰り返して魂のスタミナ勝負で勝って体の主導権を完全に取り戻せと』

「その通り。出来ますか?」


 胡散臭い微笑みから表情一つ変えない彼から心配の意思は見えない。

 これで俺が断ったとしても幾らか策があるんだろう。もしくは、高校生のガキである俺に不要な心配をさせない為に余裕な態度を示しているだけか。


『出来る出来ないの問題じゃないんだろ。やってやるよ』

「流石、レオンを抑え込んでいる器ですね」

『雑な(おだ)ては要らん』


 奴の声は気にせず早速やるか。

 レオンが嫌がる事か……そう難しい事じゃないな。

 状況を考えてみろ。レオンは異世界で王都の精鋭22名を妹と一緒に戦った人間だぞ。当時どういった状況だったか詳細は知る由もないが、少なくともレオンが妹であるシオンを大切に扱っているのは違いない。

 シオンが年齢の割に幼い雰囲気があるのも『大切』が過剰になった結果なのだろうか。

 ともかく、レオンのウィークポイントはシオンだ。

 そこを強制的に襲わせる。

 シオンの現在位置は分からないが……シオンを狙えという指示さえしてしまえば問題は無いか。

 目的は整理出来た。後は行動あるのみ。


『ちゃんと言う事聞いてくれよ。『厄災の魔女を……殺せ』』


 『奇跡』を使った瞬間、世界が、視界が、傾き、身体が、鈍く、

 朦朧(もうろう)と、


「オオオオオオオオーーーーー」


 とおくで、おおかみの、なきごえが、


『信世さん! ご主人が呼んでるのだっ!』


 ことばが、あたまのなかに、

 紡祇が呼んでいる?

 シオンが外に連れ出したのか。

 シオン(厄災の魔女)が近くに居るのか。


「…………最高のタイミングですね」


 身体が動く。遠吠えの聞こえる方向へ。脚が動く。

 『奇跡』の効果だ。

 俺の意思ではない。レオンの意思でもない。『奇跡』の力だ。


『『跳んで行け』』


 再び視界が傾く。そんな気がした。

 実際の視点は真っ直ぐのままに俺の身体は指示通り地面を蹴って屋根まで跳んで行く。

 声がした方向は巨大なドームの近く。分かりやすくて結構だ。


「やめろ」

『人間兵器さん起きたか』


 シオンを探して自律人形が如く機械的に動く俺の身体がピタリと止まる。それに合わせて身体の感覚が多少戻って来る。レオンが『奇跡』を使ったのだろう。王様が言っていた通り魂が半端な分『奇跡』の力加減が下手な様だ。

 ようやく聞こえたレオンの声。今までは独り言に近い言葉ばかりだったのが、今回は明確に俺に向けて言っている。

 彼の意思が把握出来たなら後は力押しするだけだ。


『止めさせたいなら対抗してみろよ。でなきゃ『アンタの妹を殺す』ぜ』

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