第60話 兄妹愛3 おさらいキャラクター紹介3
「先手は譲ってやるよ」
『奇跡』の声で誰かが喋っている。
ここは何処だ?
体は動かせない。夢を見ている様な浮遊感がある。
今の視界で得られる情報では、この場所は草木一つ生えていない土だけの平坦な地面だとしか分からない。荒れ果てた結果の荒れ方ではない。何か大きな物体が地面の表面に沿って真っ直に抉った様な、人為的に地面を均した様な、そんな平坦さ。
その全てが淡くモザイクが掛かった様な曖昧な形と色をしている。
目の前には2メートルを超える獣人らしき男が立っている。その獣人さえも少しモザイクが掛かって見える。
「最初と同じ事を言うのだな」
「負けると分かった上で挑んで来るんだ。それなりの誠意は見せるべきだろう?」
「ククッ……我が師らしいな」
夢にも思えない妙にリアルな視界と声に、知る筈の無い既視感を覚える。
「最後の戦いだ。悔いの無い様、全力で行こう」
「掛かって来いよ害獣」
獣人の男が構える。そう認識した時には彼の拳が眼前まで迫っていた。
顔へと拳が届く前に俺が見ている視界の主が彼の左側へと移動して右腕を使って、彼の右腕を掴み取り握りつぶす。
(は?)
握力のみで人体が四散する様を見て思考が止まる。
思考は止まるが動きは止まらない。獣人が腕の痛みに気付く前に視界の主が左腕で顔を掴んで投げ飛ばした……その筈なのに獣人の体はそのまま地面へと落ちてしまう。
「『奇跡』使った上でこのザマか」
落ちた獣人の体に顔は付いていない。
投げる勢いが強過ぎて飛ばされる前に顔だけが千切れてしまったらしい。
「起きろ。聖女の『奇跡』でまだ動けるだろ」
その言葉と共に獣人の体が自分の脚で立ち上がる。
四散した右腕と千切れた頭は人とは思えない速度で再生する。
「流石は我が師だ。一人では勝ち目は無いか」
そこでようやく遠くに立っている人間に気付く。
人間……そう言って良いのか分からないが、人の形をした黒い塊が複数個立っているのは分かる。
その人間達の内、何体かがこちらに凄まじい勢いで飛んで寄って来る。その途中で極彩色の大きな光が彼等を遮る。
「こっちは任せて!! お兄ちゃんはその害獣をお願い!」
ふと視界の主が背後を見る。
朧気な地面の上に美少女が立っていた。
ふわふわの銀色の髪を携えた色白の少女、その姿を俺は何処かで見た事がある。
夏休みの初日、モールで待ち合わせしていたあの子に似ている。
偽物の親友に似ている。
偽物の親友と一緒にモールに行って、でもそれは偽物じゃなくて、親友の家に行って異世界人に乗っ取られて。
あぁ、思い出した。今は買い物帰りだった。
買い物帰りにマンションの前で異世界人と遭遇して。その異世界人の見た目がなんだっけ……そう、この目の前の獣人に似ている。
似ていると言うより全く同じ。服装が違うだけの同一人物。
その大男と俺は戦おうとして、『奇跡』を使って、意識が無くなって
「信世!? 大丈夫か!!」
翔流の声が聞こえる。
視界が歪んで、現実味のある夢が崩れて、感覚が戻って来る。
ゆっくりと瞼を開けて周囲を見渡す。
状況はあまり変わっていない。棒立ちで立つ俺と、向かい合う様に獣人の男が立っていて、翔流が俺の肩を掴んで心配そうに見ていて、シオンが微笑んでいる。
『あぁ、大丈夫だ。少し気分が悪くなってた』
自分の声がやけに響く。喋っている筈なのに喉から声を出している感覚が無い。
「『奇跡』が残っている」
誰かが言う。
その声は先程の夢で聞いた視界の主と同じ声で。『奇跡』を使った時に重なって聞こえる声と同じで。
その声は俺の口から発されていた。
おさらいキャラ紹介3人目。侵略異世界人☆シオンちゃん
名前:シオン
性別:女(現在の体はスライム)
身長:130㎝
能力:不明
・本人曰く一応魔法は使えるが、動力になる魔力自体が存在しないので魂を削って魔力に変換しないと使用出来ない。その魂の使用コストも非常に高く、頑張って削っても精々日常にちょっと便利な魔法が使える程度らしい
詳細
・異世界人。男の娘とかではない。女性である
・スライムの体で髪色は青い。
・見た目は身長と髪色以外は元のシオンの姿にかなり近い。
・重度のブラコン
・元の世界では魔法使いだった。補助魔法や回復魔法に限れば兄を確実に超えれる能力を持っている。
・また、記憶力がかなり高く、模倣するだけなら常人よりもかなり優れている。おかげで兄が写して持って帰った魔導書の写本を読んだだけで、記載されていた全ての魔法を使える様になる。特に補助魔法と回復魔法の理解が非常に速くかなり改良して使っていた
・兄関連以外は興味が無い。元の世界の童話や小説で出てきたキャラクターを元に人格形成している
・過去に家族関連で何かがあった。特に父親関連は話そうとしない




