第488話 二次会ってことでいいですか?
「どうなるもんかと思ってたけど、案外うまくいったんじゃない? 誰も犠牲者出なかったんだし。」
ジュリアが魔王討伐部隊のメンバーに労いの声をかける。なんでこうなったのかと言うと、街に帰るなり休む間もなくすぐさまジュリアに連行される様な形になった。
なんでも全員無事生還の祈願もかねて、験担ぎに打ち上げ宴会の準備をして待ち構えていたようだ。
場所は例の披露宴会場をそのまま延長レンタルする形で維持していたのだという。塔を出た直後に傷はある程度治療してもらっていたから良かったが、疲れてるのになにするんだよ、全くもう……。これだから、陽キャは……。
「犠牲者は出なかったけど、色々大変だったんだぞ? 俺なんて入って速攻で異空間に拉致されたし、戻ってきたら複製人間軍団が待ち構えていて、生きた心地なんてしなかったぞ。」
俺たちは魔王討伐から無事帰還した。鬼が立ち去った後、すぐさま崩れゆくハリスの塔から脱出したのだ。しかし、脱出したのは良かったが、外に出てから姿が見えなくなっている連中がいることに気付いた。
処刑隊とかヴァルの部下達、ドラゴンズ・ヘヴンのメンバーなんかはいつの間にかいなくなっていた。ミヤコもいない。アイツらというかエピオンに付いていったようだ。
「カレルが生き返ったとか言ってなかったっけ? 幻でも見たんじゃないの?」
「あのなあ、俺以外に目撃者はいるんだから嘘なわけないだろ! 他のみんなも見間違えた扱いにするんか、お前は!」
ミヤコもそうだが、タニシも戻ってこなかった。犬の魔王タンブル達と行動を共にしていたのだが、最終決戦の時に姿を見せていなかったので、無事なのかは不明のままだ。犬の魔王がそう簡単にやられるとは思えないので、多分無事だと思う。
「幻かどうかはともかくあたしがいれば楽勝だったろうにねぇ?」
「何でだよ? カレルは少なくとも前より強くなってたから無理じゃないか? カレルを舐めんなよ? アイツは流派梁山泊の技を体得してたんだ。」
「関係ないよ。アイツは女には甘いからね。あたしが天敵だったことを知らないだろ? 会ったら多分、コテンパンにして締め上げてやったのに! 残念だわぁ!」
なんてことを言い出すんだコイツは……。ファルと同様、ジュリアもカレルと一緒に組むことが多かったそうなので、顔馴染みであったらしい。しかし、コイツの尻に敷かれていたとは思わなかった。
確かにカレルは紳士的だし顔も良かった上に女性にも優しかったようなので、好き放題されるがままだっただったのだろうか? なんか弱みでも握られていたんだろうか?
「でも、大切な披露宴が台無しにされてしまって大変でしたね。大切な思い出が魔王に邪魔される形になりましたから。」
「いいのよ、そういうことは気にしなくたっていいから! こうやってもっかい仕切り直しで開催できたんだし。無事全員生還のおめでたさも加わって大団円よ!」
エルがジュリアに心配の声をかけるが、当の本人は気にしていないようだった。まとめて祝えるからめでたさが増すとはどういう理論なのか? そんな考えができるなんて、コイツは陽キャの鑑みたいな存在だな。とことん前向きすぎて、俺には眩しすぎて直視できない! 目がつぶれるぅ!
「しかし、会いたかったなぁ、グレートさんと言う方に。聞いたところによると立派な武人のようだし。」
「ああ、アイツは神出鬼没なのさ。どこからやって来て、いつの間にかどこかへと帰っていく。所在不明の謎の存在なんだよ。」
色んな方面から興味を持たれているグレートだが、ジュリアの旦那であるガンツもグレートが気になっていたようだ。その一方で、敵対勢力と同様にグレートもいつの間にかいなくなっていた。 来たときだって何の前触れもなく突然乱入してきたくらいなので去り際も同じく急に消えてしまうようだ。学院に現れた時も同じ傾向だったらしい。
あと一人不明なヤツもいる。あのハゲ、パッチラーノもいつの間にか消えていた。アイツは決戦に入った時には既にいなくなっていたのだ。アイツは何だったんだろう? 「次は聖都で会おう」とか言ってたけど本当にそうなるんだろうか?
「それはそうと……君たちも早いうちに式を挙げてしまった方がいいんじゃないかい?」
「ブッ!?」
「うっ!?」
「そうよ! あんた達もいつ、何があるかわかんないんだから、さっさと済ましちゃいなさいよ! うちら夫婦ですら、不測の事態で中断されちゃったんだからさぁ。あんた達なんて特に訳ありなんだから、早いうちに決めないと絶対後悔するよ?」
「はは……ご忠告ありがとうございます……。」
「余計なお世話だっつーの!」
いきなり何を言い出すのかと思いきや、俺らに挙式の催促をしてくるとは! 全く油断も隙もない! 俺らは事情が色々ありすぎて表向きに堂々と出来ないという問題がある。そう易々と一般人みたいにやるわけにはいかないのだ。出来ればしたいけども……、
「ヤダヤダ! ぜーったい、ヤダぁ!!!」
なにやらキンキンした声で拒否の意を示しているヤツがいた。振り向いて見てみたら、やっぱりプリメーラだった。その対面にはサヨちゃんがいた。これは絶対に何らかのトラブルの前触れに違いない! とうとうプリメーラもサヨちゃんに目を付けられてしまったようだ。南無……。




